「想像力」が大切!来場者管理・備品管理のポイントとは?【成功するイベント・セミナーの作り方 第7回】

「想像力」が大切!来場者管理・備品管理のポイントとは?【成功するイベント・セミナーの作り方 第7回】

イベント専門のコンサルティング会社ホットスケープの代表 前野さんに聞く「【初心者必読】成功するイベント・セミナーの作り方」
第7回目テーマは「運営を成功に導く来場者管理と備品管理」です。

前回の第6回では、運営力を高めるヒントと運営マニュアルの大切さをお伝えしましたが、今回はイベント運営で必ず取り組むことになる来場者管理と、案外抜けがちな備品管理がテーマ。運営に関するより具体的な知恵やアドバイスが欲しいという方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

目次

来場者管理のポイントと、事務局の役割とは

――そもそも来場者管理というのは何を指すのでしょうか?当日の受付のことですか?
来場者管理と聞いてまず思いつくのが受付かもしれませんね。もちろん、当日の受付などといったお客様対応も来場者管理に含まれますが、それだけではありません。
まずは来場者を分類してみましょう。セミナーなどの社外向けの大きなイベントの場合、一般の来場者と講師などの登壇者に分けることができます。そして、それぞれの事務局を立てるのが一般的です。
――事務局が担う役割とはどんなものですか?
一番わかりやすい当日の受付作業のほか、前日までの来場者対応も事務局の役割です。登壇者事務局と一般来場者事務局に分けて、やるべきことやそのポイントを見ていきましょう。
登壇者事務局
講師や司会者は外部の人間とはいえ、一緒にそのイベントを作るという意味ではホスト側にいるという独特な立場の方々です。開催する会社と来場するお客様の両方に気を遣う大変な立場ともいえますね。そのため、気持ち良く動け最大限のパフォーマンスを発揮できるよう細やかな配慮が必要となります。
まず、事前にお伝えする情報。間違いや不足がないことは当然ですが、あいまいな点をなるべく残さないよう気をつけましょう。
○当日どこから入場するのか
イベントの種類、ステージ演出の方法、イベント会場などに大きく左右されます。一般来場者と同じ入口から入るのか、通用口や関係者入口などを使ってもらうのか。VIP対応が必要な登壇者の場合は、車寄せや最寄り駅までお迎えに行くということもあります。
○受付はどのようにおこなうか
人数が多ければ登壇者用の受付を設ける、あまり多くなければ関係者入口などで待ち合わせをして到着を確認するなど、最適な手段を取ってください。
○当日の環境
セミナーといえばPCを使ったプレゼンテーション。事前のデータのやりとりはどのようにおこなうとスムーズなのか、きちんと考えておきましょう。
また、当日のPCのスペックなども考慮して、プレゼンテーションに使えるソフトや形式をお伝えするのもお忘れなく。リハーサルに、いつどれだけの時間をさけるのかという点も早めに知らせてあげるとよいでしょう。
このような事前の情報提供以外にも、気を遣うべき大きなポイントがあります。
○控室はどこにどのように用意するか
これも登壇者の人数やその属性によります。落ち着ける個室が必要な講師もいれば、運営陣と頻繁にコミュニケーションを取る必要のある司会者もいます。役割にあった控室を用意しましょう。
会場によっては、パーテーションや可動式の壁で仕切れる部屋があることも。たくさんの登壇者に待機してもらう場合は、空間を仕切ったりテーブルに間隔を開けるなど、パーソナルスペースの確保にも気を配りましょう。
以上のような点を事前に検討し、決まり次第早めに登壇者に連絡を入れるとよいですね。
また、人気の高い講師はゲストとして登壇することが多く、現場のこともよく知っています。呼ばれ慣れている方には特に、失礼のない丁寧な対応を心掛けましょう。
一般来場者事務局
一般来場者事務局において重要なのは攻めの姿勢。守るだけでなく攻める、これを合言葉に以下のポイントを見てみてください。
○当日の受付の負担をぐっと減らせるツールを導入する
来場者をとにかく対応するという受け身の姿勢ではなく、積極的にITツールを使い省力化を図りましょう。
WEBサイトの機能などを使って必要な情報は事前に集め、当日来場者にしてもらう作業を0に近づける努力を。これが受付の時間短縮につながります。最近ではすっかりおなじみになったQRコードも、手間と時間をぐっと減らせる便利なツールです。
○個人情報の取り扱いは慎重に確実に
さまざまなITツールでたくさんの情報を素早く扱えるようになった分、管理のコストも高まっています。個人情報流出などに敏感な時代、来場者からもらった情報の管理は厳重におこないましょう。
当日は受付の手元やPC周りが来場者に丸見えにならないよう、高さを調整したり仕切りを作ったりするなど、デジタル上だけでなくアナログな対策もお忘れなく。
○来場者のステータスをできる限り挙げ、受付での対応を考えておく
たくさんの方が来場するということは、たくさんのイレギュラーが発生するということでもあります。当日の受付にどんな状況の方がやって来るのか、可能な限りいろいろなパターンを想定し準備しましょう。
ここでポイントになるのは「意地悪な思考」です。とにかく意地悪く「こんなパターンだってあり得るかもしれない」ともしものパターンを挙げていってください。
例えば「部長の代理で来たのだが、その部長宛ての招待状を忘れてしまったし自分の名刺も切らしてしまっている」というイレギュラー、それを想定しているかしていないかで対応にかかる時間は大きく異なりますよね。想定外を減らすためには想定を広く持っておくこと。そしてそのために必要なのが意地悪な思考なのです。
ポイント
  • 登壇者も一般来場者も広くとらえれば同じお客様。
  • あらゆる状況を想定し先回りして対策を打っておくことで、イベントへの信頼度や満足度を上げることができる。

備品管理において気をつけるべきこと

――人の管理に続いて、ものの管理についてお聞きしたいところなのですが…一見難しくはなさそうな備品の管理にも注意すべきことってあるのでしょうか?
小さな漏れやミスが意外と多いのが備品管理。それを少しでも減らすためのチェックポイントをご紹介します。
○「何を用意するのか」の羅列でなく、「何を誰がどのように用意するのか」というところまで
備品管理において何が必要となるのか、何を準備するべきなのかということを考えるのは当然なのですが、リストアップの際は「誰がどのような手段で」用意するのかという分担まで書き込みましょう。
例えば、
文房具一式:Aさん
→会社の備品持ち出し+足りない分は購入
マイク:会場
→会場が貸し出してくれるそうだが、事前に申告は必要ないか。当日会場にセッティングされているのか、備品貸し出し事務所などに取りに行かなければならないのか
→会場への確認担当:Bさん
というように、誰が手配するのかというところを書き出してみると、準備段階や当日に自分たちでおこなわなければならない作業が見えてくることもあります。
備品リストを作るときはものの名前だけで終わらせず、誰がどのように用意するのか、外部手配の場合は納品方法の確認も忘れずにおこなってください。
○「一式」というワードは使わない
実は先ほどの例ではわざと「文房具一式」という書き方をしましたが、この表現はNGです。「ん?その書き方は曖昧すぎるのでは…?」と疑問に思った方はお見事です。
「文房具一式」では何をいくつ用意すればよいのかが不明確ですよね。黒いボールペンが20本、ハサミが10個、ホチキスが5個というように、必要なものをひとつひとつ挙げてください。
○それを使うために必要なものも忘れずに
文房具の例を続けて考えてみると、ホチキスを使うためにはホチキスの針が必要となりますよね。
ホワイトボードを使うのならホワイトボード用のペンとイレイサー、電子機器を使うのなら充電器や予備のバッテリー・電池など、付随して用意すべきものまで書き出しましょう。
○備品を箱に詰めるときは使用場所ごとに
文房具は文房具でまとめて一箱、ネームプレートにもう一箱…というように分けて詰めてしまいがちですが、それだと当日少し不便や面倒を感じるかもしれません。備品は使う場所ごとに分けて箱詰めしてみてください。
受付で使う文房具と受付スタッフ用ネームプレート、セミナールーム内で使う文房具と誘導スタッフ用ネームプレートなど、使用する場所ごとに備品を分けましょう。準備も片付けもスムーズになりますし、当日の「あれ、どこに入れたっけ?」も防げます。
○当日の買い出しに頼りすぎない
「何か忘れていたり足りなくなったりしたときは近くのコンビニで」という考えは危険です。近くのコンビニでその日品切れが発生している、お昼時など決まった時間はひどく混雑する、当日の人員に余裕がなく買い出しに人手をさくのが難しい…というようなことはめったに起こらないことではありません。備品の準備は抜かりなく、当日全く買い出しに行かなくても大丈夫!と言い切れるくらい入念におこないましょう。
ポイント
  • 必要なものをリストアップするときは、具体的に何がいくついるのか、それを誰がどのように用意・手配するか、それを使うために必要になるものは何か、と細かく書き出していく。
  • 「当日近くのコンビニで」という甘えは禁物。

今回は来場者管理と備品管理という運営の大きな要素2つを取り上げ、実践的なポイントをお伝えしましたが、どちらもさまざまな状況を想定してものや策を準備するという「想像力」が重要になってきます。
普段から気の利く人は特に向いているといえますが、そうでない人も自信を失う必要はありません。経験者からアドバイスをもらったり、イベントの数をこなしたりしていくうちに、イベント運営における「想像力」は少しずつ向上していくそうです。

次回の第8回では「機材関連で知っておくべきこと」をご紹介します。
音響や映像などは専門のスタッフや会社にお任せすることが多いかもしれませんが、イベント運営者が把握すべきことや持つべき視点もたくさんあるのです。どうぞお楽しみに!

取材協力:前野 伸幸(まえの のぶゆき)
株式会社ホットスケープ 代表取締役。
27年前の独立起業当初より、多くの大手企業からのミーティング・インセンティブ・各種セミナー・イベントを直接受注。企画・進行・運営をワンストップで数多く手掛けている。
その一方で、イベント施設・会議施設のコンサルタント・運営でも多くの実績を残す。「虎ノ門ヒルズフォーラム」のコンサルタントを自らが担当し、さらに「六本木アカデミーヒルズ」も加えた両施設の運営・管理業務も受託。また宮崎の「フェニックス・シーガイア・リゾート」のコンベンションセンターのリニューアルにて、マーケティングリサーチから発注先選定・機材選定や営業戦略策定まで広域にわたるコンサルティングを担当。
施設を貸し出す側と施設を利用する側の双方の立場で経験を積み、そのノウハウを活かして活躍中。
http://www.hotscape.co.jp/

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