人事なら押さえておきたい研修の種類と効果的な研修方法について

人事なら押さえておきたい研修の種類と効果的な研修方法について

新入社員研修や管理職研修など、企業ではさまざまな研修がおこなわれます。社員育成が目的なのはわかっていても、研修を企画・実施する側としては、どのような内容にすればよいのか頭を悩ませるケースがあるかもしれません。基本的に研修は、受講させたい層とマッチした形態・内容にする必要があります。

そこで今回は、この研修の中身を充実させたいときに参考となる、研修の種類やメリット・デメリットについて解説します。

目次
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企業研修とは

研修でよく使用される「貸し会議室・ホテル・セミナーハウス」の3つについて、それぞれの特徴をみていきましょう。

実施する目的
企業が成長するか伸び悩むかは、「人」が大きく関係してきます。個々の社員が、自分の仕事に対して向上心を持ち、必要なスキルを身につけることは、会社の繁栄のためにはとても重要だといえるでしょう。このことから、研修をおこなって社員の育成を手掛ける企業が多いのもうなずけます。ですが、個人のスキルアップに関してのみいえば、研修が必要なものばかりではなく、日常の職場における指導やアドバイス、自己啓発のたぐいでもカバーできることがあります。
では、なぜ研修が必要なのか。それは研修によって、個人のスキルアップはもちろん、それぞれのポジションに応じて求められる能力や組織・事業への理解を深めることで、より企業人としての活躍を期待できるようになるからです。会社をよりよい方向に変化させたり、新たなる価値を創造できる人材を育むことが大きな目的なのです。
通常の会議と研修の違いとは?
会議と研修は一見似たようにも思えますが、目的が明らかに違っています。会議はあるテーマについて、解決策や今後の施策を検討・決定するための場です。一方研修は、ビジネスや業務に必要な知識全般について学ぶのが目的で、その多くは新入社員や管理職などを対象におこなわれるのが通常です。

研修の種類

研修の種類は、OJT(社内研修)とOff-JT(社外研修)の2つに分けられます。

OJT(社内育成)
OJT(On the Job Training)とは社内教育のことを指し、どこの企業でも日常的におこなわれているものです。
【メリット】
・不明点や疑問点など、直接指導してもらえる
・実践しながら学べるので効率がよい
・指導者と部下のコミュニケーションがとれる
【デメリット】
・1つの業務に焦点を当てた学習になりがちで体系的に理解するのが難しい
・指導者の力量によって習得内容や習得率に差がでてしまう
OJTの一番のメリットは、普段の業務の中で実践的に学べるということです。ほとんどの場合少人数あるいは個別指導なので、本人の理解力や技量にあわせて教えてもらうことができ、内容を吸収しやすいです。
一方デメリットはというと、教えられたことを論理的に関連付けて、仕事の全容を理解するのが難しいという点です。また指導者といっても社内の人間なので、指導のプロではありませんし、企業によっては担当者がころころと変わってしまうことがあります。
指導者や時期によって内容にバラツキがでるOJTになってしまうと、社員によってスキルの差が生じたり、思うような育成成果を出せない可能性もあるので注意しておきたいところです。
Off JT(社外研修)
Off-JT(Off the Job Training)とは、より専門的な知識を身につけたり、社員に学習の機会を提供するため、会社とは違った環境で専門の技術者や講師を呼んでおこなう研修のことをいいます。
【メリット】
・一斉研修なので指導者によるムラがない
・専門の講師から技術や知識について体系的に学べる
・社外なので研修に集中できる
・受講者同士のコミュニケーションをきっかけに、社内での新たな人脈を構築できる
【デメリット】
・すぐに実務で実践できる内容とは限らない
・講師の選定や日程などで、調整が必要になる
・経費がかかる
Off-JTは、ひとりの講師から一斉に指導を受けるスクール形式の研修が一般的です。そのため、OJTのように指導者の違いによっておこる「教え方のムラ」がなく、皆が等しく必要な知識を習得することができる環境になります。さらに指導するのは専門の講師なので、社内実務だけではわからない知識を学ぶこともでき、業務や一般的なビジネスについて体系的に理解しやすくなります。
また、個人でスキルアップを図りたい、自己啓発にチャレンジしたいと思っていても、仕事が忙しくてなかなか時間がとれない人もいるのではないでしょうか。その点Off-JTであれば、自分で講座を探して受講手続きをしたり、改めて時間を確保するなどの手間をかけることなく、さまざまな知識を効率よく習得できます。
ただ、Off-JTではビジネスについての基本的な知識や最新理論のほか、幅広い内容を学習できる一方、それが自分の業務にすぐ役立つ内容とは限りません。Off-JTでインプットされたことを実務で活かせるかどうかについては、業務内容や個人の理解度によっても違ってきます。
そしてOff-JTを計画する側のデメリットとしては、調整の手間や経費がかかることが挙げられます。社外研修なので、会場代や講師を呼ぶ費用などのコストがかかります。これを単なる経費ととるか、必要な投資ととるかは企業の考え方にもよりますが、まとまった金額が必要となることは確かです。

階層別にみた研修の種類

研修は、対象者や目的によって内容は異なります。ここでは企業で一般的におこなわれる階層別研修について、どのようなことを学ぶのか順にみていきましょう。

新入社員研修
新入社員研修は、どこの企業でも必ず取り入れる研修の1つです。入社したばかりでビジネスの基本もまだよくわからない社員を対象としているため、事業内容やビジネスマナーについてなど、社会人として必要な知識を学びます。とくに新卒の社員は、こうした研修をしっかりと受けてから実務にのぞむことで、スムーズなスタートを切ることができます。
管理職研修
管理職のおもな役割は、組織をマネジメントして業務を円滑に進めることです。与えられた仕事をがむしゃらにこなすのではなく、現場の仕事もしながら部下をまとめる力が必要となります。ほかにも企業の資産管理や情報管理など、多くのことをマネジメントする能力が求められるため、管理職はとても重要なポジションといえるでしょう。
管理職研修では、部下の業務管理に必要なチームマネジメントやコミュニケーションの方法、リスクマネジメントやコンプライアンスに関する知識など、企業の戦略や組織運営にかかわる多くのことを学びます。
幹部研修
幹部にもなると、経営者により近い立場で組織を動かさねばなりません。社員としての視点だけでなく、経営者としての視点も持ち、会社の利益追求はもちろんのこと、あらゆることに関して臨機応変に対応できる力、物事をよく観察して判断・決断する実行力、組織を率いるリーダーシップなどが必要となってきます。
そのため幹部研修では、管理職研修の内容からさらに進んだ、次世代のリーダー育成法やビジネスコミュニケーション、経営や法律の知識、各種マネジメントなど、経営補佐として必要な知識と、人的魅力を磨くための講義などがおこなわれます。

研修後のアンケートで次へ活かそう

業務に必要なスキルを身につける、また円滑なコミュニケーションを図れるよう、社員育成のための研修は必須となります。しかし、研修はそれなりに時間も費用もかかるため「どれほどの効果があったのだろうか」と、気になる人事担当者もいるのではないでしょうか。

研修はただすればいいわけではなく、おこなった内容が定着し、業務に活かされなければ意味がありません。そのために実施してほしいのが、「研修後のアンケート調査」です。

アンケートの必要性
なぜアンケートをとる必要があるのか?
それは受講者の満足度や理解度などを把握して、次の研修に役立てるためです。おこなった研修について、主催者側がきちんとPDCAサイクルを回さなければ、何度研修をしても成果が得られないこともあります。
では、具体的にどのようなアンケートを作成すればよいのでしょうか。その方法と例について、次でみていきます。
アンケート作成の方法
アンケートは、「研修はわかりやすかったか」「得た知識は定着したか」などを調査しますが、具体的にどのような質問をすれば的確に把握できるのか、内容に悩むこともあるでしょう。
そこでおすすめするのが、研修効果を測定するための「カークパトリックモデル」と呼ばれる手法です。アメリカの経営学者であるドナルド・ L・カークパトリック氏が提唱する方法で、レベル1~レベル4の4段階に分けて研修の効果を測ることができます。
【レベル1】Reaction(リアクション):受講者の反応を評価
研修後にアンケートをとり、参加者の反応をみて研修に対する満足度を測る
【レベル2】Learning(ラーニング):理解度や習得度を評価
研修の内容が理解できたかどうか、筆記試験やレポートなどで学習到達度を評価する
【レベル3】Behavior(ビヘイビア):行動の変容を評価
研修後、業務における行動に変化が現れたかどうか、本人への聞き取りや上司などの判断により評価する
【レベル4】Results(リザルツ):結果を評価
研修後に実務でどれだけ結果がでたか、行動や実績など、成果達成度を評価する
上記の効果測定法を参考に、どのような内容をアンケートに盛り込めばよいか、その例を次にご紹介します。
カークパトリックモデルを活用した「レベル1」のアンケート例
【質問1】事前準備について
・今回の研修の目的を理解して参加した
・今回の研修で自身のスキルアップを期待していた
・今回の研修を受けるにあたり、事前に上司から目的や目標について話があった
【質問2】講師・学習内容・教材・相互学習について
・講師は今回の研修に関して高い専門性があるようだった
・講師の説明はわかりやすかった
・講師の声の大きさや話すスピードは適切だった
・テキストの内容は読みやすくわかりやすかった
・研修の学習内容は自分にとって適切だった
・研修を通じて講師やほかの参加者から有益な情報を得ることができた
・研修では、受講者同士が活発にコミュニケーションをとれる雰囲気だった
【質問3】会場の環境・室内設備・研修時間・事務局スタッフについて
・会場はアクセスがよく利用しやすかった
・照明や空調など会場の設備について適切だった
・研修の日数や時間は適切だった
・事務局スタッフの案内や連絡はスムーズだった
上記のような項目について、〇△×や、3段階評価などで回答してもらいます。
またレベル2については、先述のとおり筆記試験やレポートなどで評価し、レベル3~4についてはすぐに評価できる内容ではないため、例えば3か月などの期間をあけてから評価をすることが一般的でしょう。

まとめ

研修にはOJTとOff-JTがありますが、それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらがよいとは一概に言いきれないでしょう。効果的な方法としてはOff-JTで基本的な知識を習得し、それをアウトプットする場として、OJTに参加しながらスキルアップするというのがよいかもしれません。

なかでもOff-JTについては、業務や語学に関するものだけでなく、内容を多様化させている企業が多くなっているようです。まとまった人数の研修では広めの会場を、幹部研修では比較的落ち着いた雰囲気の会場を選ぶなど、研修の種類によって選ぶ会場も変わってきます。

研修を充実したものにするには、会場選びも大切です。目的にあった会場探しのコツについては、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。

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