ファシリテーターは、会議において参加者全員が発言しやすい雰囲気を作ったり、中立的な立場で参加者の意見を集約したりする重要な役割を果たします。
社会人になると、まずは一人の参加者として会議に出席し、資料の準備や議事録の作成などを経てファシリテーターを任されることになるでしょう。
この記事では、初めてファシリテーターを務める人がスムーズに任務を果たせるよう、押さえておきたいコツをご紹介します。ファシリテーターの立て方や選任方法についても言及していますので、ぜひ参考にしてください。
ファシリテーターとは、話し合いの場を円滑に進めるサポート役のこと
目まぐるしく変化するビジネス環境の中で企業が生き残るには、迅速に対応する機敏性を高め、既成概念にとらわれないアプローチを模索する必要があります。新たなビジネスアイディアの創出を目指して、どの企業も日々さまざまなミーティングや会議、ディスカッションなどを行っているのではないでしょうか。
上記はいずれも目的を持って招集された関係者が意見を出し合い、共通理解や納得のいく結論を導くために行われる集まりです。しかし、複数人がただ集まるだけでは、決定権のある人に発言が集中したり、予定時間を超えてダラダラと話し合いが続いたりしてしまう可能性があります。
「結局何も決まらなかった」「初めから結論ありきで、集まる意味がなかった」といった不満につながることも少なくありません。こうした場を取り仕切り、建設的な話し合いを促すのがファシリテーターです。
ファシリテーターは、いわば会議を先導する案内人のような存在。ファシリテーターがいることで、意思決定者などによる独断専行を防ぎ、参加者全員から公平に意見を収集することができます。また、自由に出された意見をまとめ、誰もが納得できる結論へと昇華させることも可能になるのです。
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- ファシリテーターと司会の違い
- ファシリテーターは「司会」と混同されがちですが、この2つには明確な違いがあります。
- 一般的に、司会は会議を滞りなく進める役割で、あらかじめ決めておいた議題をテンポ良く消化していくことが求められます。結論を導き出せるかどうかは参加者の責任であり、司会はプログラムを時間内に終わらせることに徹します。
一方のファシリテーターは、ただ議事を進めるだけでなく、参加者の意見を引き出し、最終的に何らかのゴールへと導く必要があります。 - 会議などの集まりにおける第三者という立ち位置は共通していますが、役割は大きく異なることがわかるでしょう。よって、1つの会議に司会とファシリテーターが存在しても問題はありません。
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ファシリテーターが押さえておきたい4つのコツ
会議においてファシリテーターが役割を果たすために、どのようなポイントを押さえておけばいいのでしょうか。意識しておきたい4つのコツをご紹介します。
- 出席者に会議の目的を理解してもらう
- ファシリテーターが最初に行うべきなのは、「何のための会議なのか」「何から始まり、何時までにどんなゴールを目指しているのか」といった目的を出席者に理解してもらうことです。
- 会議の成功のカギは、決められた時間内に必要な情報をしっかり引き出しきることにあります。そのためには、参加者一人ひとりが主体的に会議に参加する雰囲気を醸成しなくてはなりません。各参加者が「自分に求められていること」を認識し、発言の準備をしてから会議に参加できるよう、まずはアジェンダを伝えましょう。
アジェンダ、および会議の冒頭では、タイムスケジュールと会議の内容についてしっかりふれておきます。
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- 会議の流れを作る
- 会議が始まったら、参加者に好き勝手に情報共有や意見交換をさせるのではなく、ファシリテーターが全体の方向性を作っていきます。入社歴や立場の違いが発言の積極性を邪魔しないよう、アジェンダに続いてグランドルールを決めておくといいでしょう。
特にアイディア出しのブレインストーミングでは、最初に下記のようなルールを示しておくとスムーズです。
- <グランドルールの一例>
・批判しない
・自由に発言する
・質より量を重視する
・アイディア同士を結合する - グランドルールを示すことで、誰もが議論しやすい場が整備できます。会議の最中には、参加者の態度や発言頻度に気を配り、発言が少ない人に適切な質問をするなどして参加意識を持たせましょう。
それぞれの参加者が意見を言って終わりにならないよう、発言に「So What?(~をして、何を実現したいのか)」の問いかけをして深掘りをし、本質的な課題を抽出することも大切です。
- また、自分の意見ばかりを述べる人や、話をしているうちに本題からずれていくことに気がつかない人に対しては、適切なタイミングで発言を要約して示したり、軌道修正をしたりしてコントロールするよう心掛けます。
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- 客観的な立場に立って意見や情報を整理する
- ファシリテーターは常に客観的な立場で、出てきた意見や情報を整理します。会議が盛り上がり、参加者が対等な立場で意見をぶつけ合うのはとても有意義なことです。
- しかし、単にそれぞれが自己主張をするだけでは意味がありません。収拾がつかなくなりそうなときは、議論の原点に立ち返ることを促し、俯瞰的に見て軌道修正を図るようにします。何のために話し合っているのかを参加者に思い出させ、議論が噛み合うように指揮をとりましょう。
論点が拡散している場合は、「今話し合うべきこと」を整理して一つずつまとめていきます。
- 黒子に徹し、結論へと導く
- 会議の流れを作り、場が盛り上がるように介入しながら結論を導くのがファシリテーターの使命ですが、存在としてはあくまで表には出ない黒子です。
- ファシリテーターが目立ってしまうシーンが多ければ、それは参加者同士で活発に議論が交わされていないことを意味するといっても過言ではありません。議論の火がついたら少し離れて見守り、時間を見ながら適宜、話題を転換するために登場する程度にとどめます。状況に応じて介入頻度を調整し、話をゴールに向かって進めていくことが肝心です。
ファシリテーターを立てるときのコツ
ファシリテーターには、どのような人物を選任するのがいいのでしょうか。ここからは、ファシリテーターを選ぶためのコツをご紹介します。
- 適性がある人を選ぶ
- ファシリテーターには状況に応じたさまざまなスキルが必要なため、誰を任命しても良いわけではありません。
例えば、議論を嫌味なくリードでき、長引く話やまとまりのない話にうまく介入して反感を買わないよう対応できる人や、組織の円滑な運営のために、黒子に徹することをいとわない人が適しています。また、会議の準備なども必要になるため、裏方的な業務も率先して引き受けられる人が好ましいでしょう。
このような人物像を前提として、さらに下記のような特長を備えている人が望ましいといえます。
- ・組織感覚に優れた人
ファシリテーターが介在する会議の目的は、組織の目標を達成することです。よって、ファシリテーターには、自身が所属するコミュニティだけでなく、組織の全体像と人間関係、利害関係を踏まえた広範的な組織感覚が必要です。
それぞれがどのようなバックボーンを持ち、どんな人間関係のもとで仕事をしているのかを把握した上で進行することができれば、参加者同士の対立や遠慮を防いで活発な会議の展開を実現できます。
- ・ロジカルな考え方ができる人
会議で出たさまざまな意見をまとめるために、ロジカルシンキング(論理的な考え方)ができることも重要な要素です。
ファシリテーターは、会議をより良いゴールに導くため、一見ばらばらに見える意見を構造的に整理して参加者に示す必要があります。それぞれの意見の共通項や対立関係などを瞬時に把握し、どのように可視化すれば全員にわかりやすいのかを判断する上でも、ロジカルシンキングが役立ちます。
- 管理者かどうかではなく、現場のリーダーシップで選ぶ
- ファシリテーターは、立場が異なる参加者の意見をまとめ、決められた時間内で全体の流れをコントロールして結論を導く役割を担います。
誰の意見に対しても物怖じせずに介入し、テンポ良く議題を進める力が求められるため、リーダーシップと決定権がある管理職やオーナーに任せるのがいいような気がするのではないでしょうか。しかし、必ずしもそうとは限りません。
■ファシリテーターと参加者、オーナーとの関係
第一に、ファシリテーターは会議における第三者であり、黒子として会議の円滑な運営をサポートする立場です。ファシリテーターの役割とは切り離した個人として意見を述べることはあっても、結論を出すことは求められていません。よって、必ずしも発言力や決定権がある人である必要はないのです。
第二に、オーナーや管理職がファシリテーターをすることによって、参加者が萎縮してしまう場合があります。上司がファシリテーターとして場を仕切りながらアイディアを出した場合、たとえその案がいまひとつだと思っても言い出せず、参加者の中には迎合するメンバーが出てくる場合があります。
また、オーナーや管理者のタイプによっては、最終的に自分の意図に近い結論になるよう誘導したり、強権を発動してほかのメンバーの意見を排除したりすることがないとはいえません。
こうした会議は、参加者に「最初から結論ありきなら、出なくても良かった」「無駄な時間を過ごした」と感じさせる可能性が高いです。役職にこだわるのなら、オーナーに次ぐナンバー2の人や、現場のメンバーの信頼が厚いリーダー職などをファシリテーターに配置するといいでしょう。
適切な人材をファシリテーターに立て、意味のある会議につなげよう
ファシリテーターは、会議の成否を左右する重要な存在です。適切な人材をファシリテーターに立てることで、充実した会議を開催することが可能になるはずです。
今回紹介した内容を参考に、適切なファシリテーターを選び、実りある会議を開催しましょう。
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