二次元女子とグダグダ会議を変えろ!世界一やさしい会議本が示す「正しい会議」とは?【スマート会議術第6回】

二次元女子とグダグダ会議を変えろ!世界一やさしい会議本が示す「正しい会議」とは?【スマート会議術第6回】ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 ディレクター 榊巻 亮氏

数多くの会議ノウハウ本が出版される中、「世界で一番やさしい会議の教科書」 (日経BP社)というちょっと変わった一冊をご存じでしょうか?
主人公の若手女性社員が、さまざまな会議の問題を乗り越えていくという小説形式で書かれたこの本。どのような問題意識から生まれたのか?そして、著者が本に込めた思いとは?
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのディレクターである、著者の榊巻亮 さんにお話を伺いました。

世界で一番やさしい会議の教科書
目次

会議の積み重ねは「企業の質」に直結する

――数々の企業をコンサルティングされる中、会議の本である「世界で一番やさしい会議の教科書」を執筆されたきっかけは何だったのでしょうか?
実は、ずっと書きたいと思っていた本でした。コンサルタントとして多くの企業をサポートしてきましたが、僭越ながらどこの会社も良くない会議ばかりしていたのです。
――そんなにダメな会議ばかりなのでしょうか?
どんなに一流と呼ばれる会社に行ってもダメでしたね。例外として、リクルートのようにすばらしい会議をしている会社もありますが。基本的には、多くの会社でダメな会議をしています。
ビジネスパーソンが働く時間のうち、会議に使う時間は、一生で30,000時間といわれています。これは年月にして、約8年間に相当する時間です。
――8年…そんなに膨大な時間を会議に使っているのですね。
そうです。そこが変われば、当然働き方も変わりますよね?それは、極端にいえば「会議の積み重ねが企業の質に直結する」ということでもあります。
――世の中に会議のノウハウを紹介した本はたくさんありますが、榊巻さんはどのような意図で書籍を執筆されたのですか?
多くの会議ノウハウ本は、読むだけで納得してしまい、実践するところの説明が物足りない印象でした。
だから「世界で一番やさしい会議の教科書」では小説形式で、自分の会社に置き換えやすいように工夫しました。読者が実践する際に「どこから始めれば、どう変わるのか」をイメージできるようにしたかったのです。
――同書の主人公は若手社員で、そういう立場の人間がそれとなく会議を先導していく「隠れファシリテーション」を提唱されています。全体的に若い人に向けて書かれている印象を受けましたが、その理由は?
「会議で困っている人は、若い人」だからです。
というのも、立場が上の人は長く会社にいるのでダメな会議に慣れてしまっています。だから、そもそも会議がグダグダだとすら感じていないのです。それを嫌だと思っているのは若い人たちです。
本を読んでくれた彼らが何十年後かに偉くなったとき、本に書いてあることを常識のように実践してくれていれば、いろいろなことが変わっているのではないかと期待しています。

何よりも大切なのは「会議の終了条件」の共有。それによって参加人数もおのずと決まる

――数々の企業を見てきた中で、榊巻さんが考える「会議における最大の問題点」とは何でしょうか?
「何をどう議論して、どういう結論を導きたいのか。どこに着地したいのか」という大前提を参加者がわからないまま会議している、ということが最大の問題点です。
――かなり根本的な問題のように感じられますね。
「会議の司会者から指名された人が、議題についてなんとなく意見を話す」という会議では意味がないのです。それは、指示がなければ議論できていないとも言えます。
日経情報ストラテジーが2016年11月に行った「良い会議・悪い会議 実態調査」 では、会議について「最後まで何を決めるのかわからなかった」という経験がある人が42.5%いました。
まるで、ルールも知らずにラグビーの試合に呼ばれているような感じですよね。
――どうしてそのような問題が起こるのでしょうか?
単純に、司会者が参加者に伝えていないということが原因ですね。
もし伝えていたとしても「やること」だけを話している。「その議題について話すことで、何を達成したいのか」を伝えないと意味がないのです。とにかく、最初に終了条件を確認する。それだけで会議は変わります。

会議の納得感は、会議後の実行力につながっていく

――榊巻さんが会議室に必ず用意するものはありますか?
ホワイトボードがないとダメですね。
私は「書かない会議は井戸端会議」だと思っています。今話していることや進捗を見えるようにしないと、会議が噛み合っていかないのです。
――会議室について求める条件はありますか?
机が無駄に広い会議室は嫌ですね。
座る位置が離れると、それだけで心理的な距離も離れてしまい、会議全体の熱量が下がってしまうんです。そういう意味では、声がすごく反響する会議室も良くないですね。
あと、会議の雰囲気は重要です。固い会議は何もいいことがないです。
ですから、どう空気感を作るかはいつも考えています。設備的な話としては、窓がない会議室は閉塞感が気になりますね。あとは、特に自由な発想をしたい会議のときは、天井が高い会議室を選ぶようにしています。
――熱量や雰囲気はやはり重要なんですね?
参加者が全員でゴールに向かうため、遠慮なく意見を言えるかというのは、最終的なアウトプットの質に影響します。上辺だけで話してもダメなんです。アウトプットに対しての納得感が出ないですからね。
本当に自分が思っていることをぶつけて、初めて会議の決定事項に納得感が出ますし、それが実行力につながります。
――納得感は、会議後にも影響すると?
そうです。僕らは普段の仕事の中で、会議自体ではなくプロジェクト全体を見ていて、そのほとんどは実行までが含まれています。会議をしても、参加者がきちんと納得していなければ、その後のアクションにつながらない。
だから、会議の納得感はとても大切にしていますし、それを意識して会議を作っています。
抵抗勢力との向き合い方

文・写真:坂上春希

榊巻 亮(さかまき りょう)ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 に所属するコンサルタント。
大学卒業後、大和ハウス工業に入社。建築士として住宅の設計業務に従事すると同時に、業務改善活動に携わる。大和ハウス時代に「変革に巻き込まれる」経験、「変革をリードする」経験。現場の立場でプロジェクトを推進することの重要性を実感。ケンブリッジ入社後は「現場を変えられるコンサルタント」を目指し、金融・通信・運送など幅広い業界で業務改革プロジェクトに参画。新サービス立ち上げプロジェクトや、人材育成を重視したプロジェクトなども数多く支援。ファシリテーションを活かした納得感のあるプロジェクト推進を得意としている。さまざまなメディアで「数字で現場を納得させる改革術」「抵抗勢力対策」「会議ファシリテーションの7つの基本動作」などの連載やセミナーなどの講演活動も多数実施。主な著書に『世界で一番やさしい 資料作りの教科書』(日経BP社)、『世界で一番やさしい会議の教科書』(日経BP社)、『抵抗勢力との向き合い方』(日経BP社)、『業務改革の教科書』(日本経済新聞出版社) など多数。
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