礼に始まり、礼に終わる会議。畳の会議室を導入した和心【POP IN MEETING 第5回】

礼に始まり、礼に終わる会議。畳の会議室を導入した和心【POP IN MEETING 第5回】株式会社和心 COO 若槻 愛氏(左) CIO 木村 耕治氏(右)

会議のあり方に独自の理念を持ち、成長を続ける企業の会議にお邪魔(=POP IN)して、ミーティング方法の話を聞いていく「POP IN MEETING」。5回目に訪問したのは、和風アクセサリーやかんざし、和傘、浴衣などを直営店舗で販売する株式会社和心(わごころ) です。

1996年の創業以来、順調に業績を伸ばし、オフィス拡大・移転を行ってきた和心。現在、東京の千駄ヶ谷にある「和心ビル」には、畳が敷かれた和そのものといえる会議室が設置されています。社内会議はもちろん、取引先との打ち合わせやスタッフ研修も畳の会議室で行っています。

では、「畳会議」を積極的に行う意図とメリットはどこにあるのでしょうか?COOの若槻愛さんとCIOの木村耕治さんに、詳しい話を伺いました。

目次

“あえて会議を増やす”のが2017年の目標

――御社の事業内容について教えていただけますか?
若槻:私たちは「日本のカルチャーを世界へ。」を経営理念として、モノ・コト・ITという3つの軸で事業を展開しています。
「モノ」分野では、企画やデザインはもちろん、工場での製造、そして販売までを直営で行っています。
他社さんも同じことをされているのですが、弊社の特徴は実店舗の設計や内装も社内の店舗クリエイターが行うという点です。受託制作のOEMも展開していますが、売上の9割は店舗での販売です。
「コト」に関しては、着物レンタルなどを通じて、お客様に「和の体験」を提供しています。
――会議自体も何か工夫をされているのでしょうか?
木村:会議が多い会社だと思います。正確には「多くしよう」としています。
――会議を減らすことを目標としている企業が多い中、会議を増やそうとしているのはなぜですか?
木村:「会議力を強める」というのが、今年のテーマなんです。
弊社はベンチャーですし、会議をしている暇がないくらいのスピードでビジネスを進めています。ですが、人が増えたこともあり、このままではダメだという危機感を抱きました。社員の認識をしっかりと合わせてから事業を進めていくフェーズに入ったと考えています。
ですので、今は積極的に会議を開き、しっかりと意思決定をして進めていくよう意識しています。

社内の店舗クリエイターが手掛けた“面倒くさい”会議室

――なぜ会議室を畳にしたのでしょうか?
若槻:元々は、普通にテーブルと椅子の会議室でした。しかし、人材採用などを進めていく中で、会社のイメージ向上を目的に、特徴的でカッコいいオフィスにしようと考えたのがきっかけのひとつです。「和心らしさ」を追求した結果、自然と和室になったという感じですね。
もうひとつの理由としては、我々は着物レンタルや浴衣の販売もしているので、和室があれば自社で撮影ができるというメリットもありました。
和室だと、靴を脱いだりするのがたいへんなんですけど、日本の文化って“面倒くさい”というのが大事だったりするじゃないですか。
着物を着ることだって、とても手間がかかります。でも、着物はボロボロになったら子供服に仕立て直すなど、布を大切にするという考えが根本にあるんですよね。そういう日本の古き良き考え方を取り入れたいという思いもありました。
あと、畳を敷いたのも弊社の店舗クリエイターの仕事なんですよ。
畳の会議室は、“面倒くさい”という日本固有の文化を踏襲して誕生した。畳の会議室は、“面倒くさい”という日本固有の文化を踏襲して誕生した。
木村:若槻は常々「和」を意識している人なんです。そして、それは社長に近い経営層に浸透していますが、一般の社員からするとちょっと遠くなってきた現状もあります。
だから、その「和心らしさ」を社内に浸透させるのも、和室の会議室を導入した理由のひとつですね。
若槻:靴を脱いで畳に上がって、みんなで顔を合わせて話をする。それって一見面倒なんですけど、とても大切なことだと思うんです。
木村:弊社はそういう理念を大事にしています。「儲かれば良い」となってしまったら、そのうち「売れるのだから、もう別に和じゃなくてもいいじゃん?」みたいにぶれてしまうんですよ。
若槻:例えば、着物レンタルだとマジックテープの物も世の中にはあるんですけど、うちはあえてそれは扱っていません。

会議は「姿勢を正して」から始まる

――実際に、畳の会議室を使ってみてどうですか?
木村:正直、腰は痛いですね(笑)。
若槻:でも、具合が悪くなったら寝られたりして便利ですよ(笑)。
――使い勝手は…良し悪しですか(笑)?
若槻:やはり不便な部分もありますが、メリットもありますね。
うちの会議は「姿勢を正して」という言葉から始まるんですけど、そのときの背筋が伸びる厳かな感じがより強くなりました。
木村:弊社の会議は、この会議室を使うときも、ソファやデスクの自席でやるときでも、ファシリテーターが「○○会議を始めます。姿勢を正して。よろしくお願いします」と言ってから始めるようにしているんです。
そして、最後は「では○○会議終わります。姿勢を正して。ありがとうございます」と言って締めることをルールにしています。
――それは特徴的ですね。
木村:やはり、「和心」ですからね。和の心というのは礼節を大事にしますし、社長自身が道徳と礼節を大切にする人なので、挨拶がとても重要です。
最初に挨拶が中途半端だとやり直しになったり、議長が変わったりもします。
和室にはストックとして保管されている商品もちらほら。
――畳の会議室には、和を感じさせるインテリアも充実していますね。
若槻:弊社は店舗の施工も自社でやっていますので、インテリアを見せつつ、置き場も兼ねているんです。
とにかくスピードを重視して店舗展開をしているので、来月にいきなり4店舗オープンということもあります。だから、開店が決まってからインテリアを購入しても間に合わないので、常にストックしてあるんですよ。そういうスピーディな会社なので、1週間出張して帰ってくると、全然違う会社になってるみたいなこともありますよ(笑)。

文・写真:坂上春希

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