オンラインでのリスキリングを、“リアル”で活かすには?【スマート会議術第190回】

オンラインでのリスキリングを、“リアル”で活かすには?【スマート会議術第190回】株式会社Schoo コミュニケーション戦略室室長 大金歩美氏
オンラインでの学習サービスを提供して成長を続ける、株式会社Schoo(スクー)。リスキリングが社会のスタンダードになりつつある現在、同社の事業は社会において非常に重要な役割を果たすと言える。
前回に引き続き、企業におけるリスキリングの現状や、リスキリングが社会にもたらすメリット、同社が目指す“誰もが学び続ける社会”などについて、コミュニケーション戦略室 室長・大金歩美氏にお話しいただいた。
目次

コミュニティでの学びが、自己成長につながる

株式会社Schoo 大金氏
――前回、「学ぶ上で、コミュニティでの学習が有効」とお伺いしました。企業様は、どのような目的でコミュニティをつくろうと考えていらっしゃいますか?
例えば課題の一つとして、多くの企業様は、最近の若手社員の方に対して「成長実感がないと辞めてしまう」「キャリアに対して不安がある」という課題を感じていらっしゃいます。
そこで、個々のキャリア志向などに合わせてSchooで学び、さらにコミュニティをつくってみんなで学ぶことで、「会社が個人のキャリアを応援するし、自己成長できますよ」とキャリア支援の一つとして学びの場を提供する企業様も多くいらっしゃいます。
――御社のサービスを導入する大手企業様も多いとお聞きしていますが、皆さん、どのような課題やご要望をお持ちですか?
「単にオンライン学習サービスを入れたいのではなく、“学ぶ”という組織風土や企業文化をつくりたい」という企業様が多いです。
すでにオンライン学習を導入していらっしゃる企業様の多くには、「導入しただけではうまくいかない。学びを続けられない」ということが共通課題です。その解決策を探して、当社にご相談いただくことが増えています。
Schooをご導入してくださっている企業様の規模はさまざまです。中小規模の企業様から、日本を代表するような社員数万人の大企業様にもご利用いただいています。そのように多様な企業様にご導入いただいているのも、幅広いコンテンツがあるからこそだと思います。
企業規模が大きくなればなるほど職種もスキルレベルも身を置く環境もさまざまですから、そういったあらゆるニーズにお応えできるのがSchooの幅広いコンテンツです。
また、「いつでもどこでも学べる」という当社のオンライン講座の特徴も、企業様のニーズにマッチしているのだと思います。
――たしかに、“場所や時間を問わず、さまざまなことを学べるオンライン講座”という点も、企業がSchooを導入する大きなメリットですね。
そうなんです。たとえば地方にある企業様で対面の研修を行うとなると、講師の方をお招きするだけで1回で大きな費用がかかることもあります。それでは、企業様の負担が大きくてハードルが高いですよね。
Schooの講師には、書籍を出版されていらっしゃる方や、ビジネスの最前線で活躍中の方も多くいらっしゃいます。そういった方の講座をオンラインで手軽に受講できるのは、大きなメリットだと思います。
株式会社Schoo コミュニケーション戦略室室長 大金歩美氏

奄美大島での地方創生事業の成功事例

――地方創生事業にも力を入れていらっしゃいますが、そちらについてお教えください。
地方では「学びを始めるハードルが高い」という課題は都市部と比べて大きいと感じています。そこで今、さまざまな自治体でのSchoo導入が進行中です。
たとえば、2021年より奄美大島の5市町村と包括連携協定を結んでおり、約6万人の全島民の方がSchooを無料で使っていただけます。
このケースのように「自治体が導入して、地域住民の方に学習機会を提供する」というケースや、「自治体の職員の方がリスキリングするために導入する」といった事例が増えています。
――御社のサービスを通じてリスキリングを行って、自己成長につながったという実例はありますか?
奄美大島では、現地に移住してからSchooで学んで、Webライターやフォトグラファーとしてご活躍中の方がいらっしゃいます。また、アナウンサーが話し方を教える授業を受講して、夢だったバスガイドの仕事に活かした元学芸員の方の事例もあります。
一見、「新しいことを学ぶには、離島という環境はハードルが高そう」と思われるかもしれません。でも、「離島は人手が不足していて、学んでいる人が少ないからこそ、新しいことに挑戦しやすくて、逆にチャンスもたくさんある」とおっしゃる方も多く、私自身もハッとさせられた経験があります。
実際、奄美大島島内ではユーザー交流会も開催したのですが、参加者の方の熱量がとても高く刺激をいただきました。今後、そのような機会をほかの地域でも実施し、地域でも熱量が伝播していく場をつくっていけたら良いなと考えています。
全国各地にSchooで学んで自ら新しいキャリアを築いていらっしゃる方や、起業された方がたくさんいらっしゃいますので、地域から学びの輪を広げていきたいですね。

リスキリングによって、多くの社会課題を解決

株式会社Schoo 大金氏
――今後、リスキリングは、日本の社会や人、働き方にどのような影響をもたらすと思われますか?
“自分でキャリアが選択できる社会”になると、私たちは考えています。

これまで、日本では「個人のキャリアは、会社が決める」というのが一般的なイメージでした。でも今は、自分でキャリアを決めて設計していく『キャリアオーナーシップ』が求められています。
学ぶことで自分に必要なスキルを身につければ、将来の選択肢が広がります。そうなれば、誰もが新しいことに挑戦できる社会に変わっていくと思います。
地方では、「キャリアのチャンスが少ない」「そもそも自分に選択肢があることを知らない」といった現状があります。そこで、「世の中から卒業をなくす」、つまり学び続けることで、そのような問題を解決して、人の可能性を広げたいと私たちは考えています。
それが、地方創生事業を行っている理由の一つでもあります。
――社会課題の解決につながるのですね。
学びを通じて、たとえば主婦の方が身近な困りごとを解決する方法を見つけて、起業につながるということもあるかもしれません。
今は、社会課題に関連するビジネスに従事している人しかその課題を解決できないかもしれませんが、学ぶことでさまざまなスキルを身につけた方が増えれば、より多くの社会課題を解決できる世の中になるかなと考えています。
また、たとえば「結婚や育児などで、仕方なく働くことをあきらめた」といった方の選択肢も広がっていくと思います。
株式会社Schoo 大金氏

オンライン+リアルが、“誰もがチャレンジできる社会”をつくる

――御社はオンラインに特化した事業を行っていますが、リアルの社会との共存や相乗効果について、どのようにお考えですか?
私たちはオンラインのサービスを提供していますが、オフラインをとても大切にしています。それは、「オンラインだけでは、学びに関する問題は解決しない」と考えているからです。
私が当社に入社直後に、Schooを市民向けに導入していただいている山口市にお邪魔した際に驚いたことがありました。
市民の方々が個々の端末でSchooを視聴するのではなく、皆さんが施設に集まって大きなモニターを見ながら皆で受講されていらっしゃったんです。「授業の動画を見ながら、途中で止めて皆でディスカッションする」という新しい学び方をしていらっしゃいました。
――スポーツバーなどの“パブリックビューイング”みたいですね(笑)。
まさにそうなんです。「個別に学べるオンライン授業なのに、どうして皆さんで一緒に受講されていらっしゃるんだろう?」と当時は疑問に思いました。
そこで受講者の方に実際にお話をお聞きしてみると、「こういう場所に来て、年齢も性別も職業もまったく違うけども“同じ志”を持っている仲間が一緒にいることがすごくありがたいし、やる気につながる」という声が多かったんですね。
また、「知り合いと子育ての話はできても、『本当はこういうことを学びたい』『将来、起業したい』という話をすると“意識が高い人”だと思われちゃうのでできない」とおっしゃる主婦の方もいらっしゃいました。
そのようなお話をお聞きして、「オフラインで実際に集まることの重要性も強く感じました。ですから、当社のサービスはオンラインではありますが、オフラインも組み合わせてリアルで学べる機会も提供しています。それぞれに合った学び方を提供し続けていきたいですね。
――そのようなサービスの提供を通じて、御社が実現した社会について教えてください。
やはり“誰もがチャレンジできる社会”を実現したいですね。「生まれた場所や環境によって、チャンスの数が変わる」という状況を、学びという手段を通じて変えていくことが当社が目指すことの一つです。
代表の森をはじめ、私たちは「単に学習を支援していきたい」のではなく、「学習をした先に、人の可能性を広げる社会をつくりたい」という想いを持っています。
そのためにも、人の可能性を広げるベースとなる学び以外にも、幅広いサービスを展開し続けていきたいと考えています。
――御社自体は、どのような企業を目指していかれるのですか?
“学びだけにとらわれない会社”でありたいと思っています。「世の中から卒業をなくす」というミッションの実現も目指しながら、人の選択肢や可能性を広げることに寄与できる、世の中の様々な課題を解決できる会社になりたいですね。
今は社会人になってから学ぶことに対するハードルがまだ高いですが、リスキリングをもっと“身近で当たり前なこと”にしたいと考えています。その一環として行っている地方創生事業にも、さらに注力していきます。
今後も学びを通じて、より良い社会の実現を目指し社会のスタンダードを変えていきたいと思います。
株式会社Schoo 大金氏

文・あつしな・るせ
写真・大井成義

大金 歩美(おおがね あゆみ)株式会社Schoo
大学卒業後、デザイン会社を経てPR代理店に勤務。国内外のホテルやブランド、公官庁などのPRを幅広く担当し、商品企画〜PR戦略に至るまでの設計、実行を行う。 その後、ラクスルで事業会社の広報として、アウターとインナーコミュニケーションを担当。新規事業の立ち上げPRや社内報の立ち上げ等にも従事。2021年10月、株式会社Schooに入社し広報部門の立ち上げを行う。現在はコミュニケーション戦略室の室長としてコーポレート、事業のPRを統括。 個人の活動として、複数のベンチャー企業のPR支援を行うほか、WEBメディアでの編集・ニュース記者の仕事を経て航空専門誌の記者・カメラマンとしても活動中。

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