見えない情報を可視化するテレカン【POP IN MEETING 第2回】

見えない情報を可視化するテレカン【POP IN MEETING 第2回】グリー株式会社 ライフイノベーション事業本部 宮川大佑氏

会議のあり方に独特の理念を持ち、成長を続ける企業を紹介する「POP IN MEETING(会議を覗き見る)」。今回訪問したのは、インターネット事業・ゲーム制作で知られるグリー株式会社。

「テレビ電話」はかつて未来を象徴するような技術でしたが、SkypeやFacetimeなどの普及によって今では珍しいものではなくなりました。そうしたテレビ電話の技術を使って行われる会議が「テレカン(teleconference)」です。遠隔地同士や、オフィスと在宅勤務をつなぐなど、その使われ方はさまざまです。グリー株式会社においても、テレカンは重要な会議方法として採用されています。

目次

「情報量」が決め手!テレカン導入は自然な流れだった

定期的に行われるグリー株式会社(東京)とセカイエ株式会社(大阪)とのテレビ会議。
――テレカンを導入された経緯を教えてください。
弊社が2015年1月に、オンライン定額リフォームサービス「リノコ」を運営するセカイエ株式会社を事業買収したのがきっかけです。
元々は弊社のグループ会社で展開していた個人向けの定額リフォームECサービス「安心リフォーム いえプラス」と「リノコ」をサービス統合するにあたり、大阪にあるセカイエと東京のグリーでプロジェクトを進めていくために、自然とテレビ会議が必要になったんです。
――電話会議ではダメだったのでしょうか?
当初は、実際に大阪へ出張することも多くありました。しかし、会議が頻繁に発生するので、徐々に音声による「電話会議」を行っていくようになりました。しかし、音声のみなので表情や微妙なニュアンスが伝わらなかったり、しゃべっていない人間の当事者意識が下がってしまったりと苦労が多かったんです。
ほかにも資料を事前共有していましたが、意図したところを見てくれているかといった状況がわからないなど、電話会議は対面のときに比べて不安要素が多く、自然とテレカンを行うようになりました。
――テレカンが電話会議と大きく違う点はどこですか?
やはり表情が見えることだと思います。「ノンバーバル・コミュニケーション」とよく言われますが、我々は知らないうちに五感を使って情報共有しているのだと思います。
東京と大阪の遠隔で会議するにしても、いっしょのオフィスで働いていた人同士なのか、まったく違う会社で働いていた人たちなのかによって、考え方や企業文化など基礎となる情報量が異なります。そこを埋めるための情報が表情なんだと思います。
――会議資料と発言のやり取りだけでは、情報量として不十分だと?
はい。それに、ベンチャー企業と上場企業という異なる環境で働いてきた人たちが、事業統合によっていっしょに働くことになりますので、できるだけ丁寧な意思疎通をしたかったんです。
セカイエ株式会社(大阪)側から見たビデオ会議風景。
――テレカンのシステムは何を使っているのでしょうか?
いくつかのアプリを試したのですが「Google ハングアウト」に落ち着きました。基本的にグリー社内はGoogle Appsを使っているのですが、セカイエ側も同様でしたので都合も良かったんです。
ただ、音声はデータの負荷が大きかったので、今では音声だけ「ポリコム」という音声会議システムを使い、映像はハングアウトを使っています
――テレカン用の部屋があるのでしょうか?
いえ、各自のPCを会議室に持ち込んで使用しています。私のPCを使って画面を映しながら、会議室全体を別のPCで映すなど、複数台のPCを使うことが多いですね。
特別なシステムを入れてしまうと、その会議室でしかテレカンの使用ができなくなってしまいますし、会議室の予約も取りにくくなってしまいます。ですから、これくらいの機動性があったほうがバランスはいいと思っています。

会議は30分以内!気になるグリーの会議術は?

――グリーの会議全般について、ルールや方針はありますか?
「社内会議は基本30分以内」というルールがあります。昔は1時間以上の長い会議が多かったのですが、ミーティングが長いとダレてしまうということもあり、スケジュールを管理する「Google カレンダー」の設定も30分刻みがデフォルトになりました。
あとはスタンディングルームも増設されて、立って短く会議しようという方向になっていますね。
――スタンディングルームというのは?
30人くらいが入れるフリースペースです。高いテーブルがいくつか置いてあって、会議室を押さえて行うほどではない5分から10分程度の話をするときに、「ちょっとスタンディングルームで話せますか?」とよく使われますね。
――会議の短縮やスタンディングルームを活用するのは、スピーディに意思決定をしたいということの表れでしょうか?
そうです。グリーは従業員1,500人ほどと規模は大きくなりましたが、スタートアップのベンチャーに負けないように、意思決定やサービスの改善をもっと迅速に行いたいという思いを、現場だけでなく経営陣も持っています。
意思決定のスピードを重視するグリーでは、2~3人の小ルームから30人くらい入れる大ルームまで、大小5つのスタンディングルームがある。
――会議の時間を短くする分、会議の数が増えたということはありませんか?
分科会は増えたような気がします。ただ、私個人としては、会議で意思決定や判断をしたいタイプですので、議論の会議に長く付き合わされるより断然良いと思っています。
もちろん、ブレストを3時間かけてしっかりと行うこともありますが、基本的に会議は何かアクションを行うための決定をしたり、上長の承認を得る場にしています。
――そのほかに会議のルールはありますか?
関係者と齟齬(そご)がないように資料を作ることがグリーの文化です。会議においても、資料の事前準備とログ管理をしっかりしているケースが多いですね。
資料や議事録作成の手間はかかりますが、引き継ぎや思い出す手間などが省け、結果的に効率は上がっていると思います。
――禁止事項はありますか?
社内会議では、基本的に紙を使わないようになっています。各自PCを持ち込むか、1台だけ持ち込んで画面に映すなどの方法を採っています。
――今後、導入を検討してみたい会議手法があれば教えてください。
先日、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOがテレビ電話とアバターを組み合わせた「ソーシャルVR」の技術を発表しましたが、個人的にはVRを使っての会議に興味があります。Oculus Rift(オキュラスリフト)などVR端末を使うことで、仮想空間上の会議室にメンバーが集まっているような状況を作ることができます。このようにVR技術によって情報量が多くなると、リアルで対面する会議との差はますます小さくなっていくことが魅力だと感じます。
ほかにも、Siriのようなアシスタントが同時通訳をしてくれるような会議は、今後も出てくるでしょう。私自身、英語が得意ではないということもあり、とても興味がありますし期待している分野です。

文・写真:坂上春希

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