会議は特別なこと。定例という意識でやるべきではない。【スマート会議術 第2回】

会議は特別なこと。定例という意識でやるべきではない。【スマート会議術 第2回】元プライスウォーターハウスクーパース(PwC)コンサルタント株式会社 執行役員 中沢 恵氏(左)株式会社ジェイエルシー 代表取締役社長 林 哲郎氏(右)

ビジネスの場において絶対に外すことのできない会議。でも実際のところ、自分が参加している会議がうまくいっているのかどうか不安を感じることも少なくないはずです。

そこで「スマート会議術」では、ビジネスのプロたちがどのようにして会議を効率化・高品質化しているのか話を伺っていきます。今回は経営コンサルタントとして数々の企業の会議を見てきた中沢恵氏(写真左)と、経営コンサルティング事業や人材紹介事業を行う株式会社ジェイエルシーの代表取締役社長・林哲郎氏(写真右)に話を伺いました。彼らが理想とする会議のあり方とは?

目次

うまくいっている会議のほうが少ない

――お二人は数々の企業コンサルティングをされていますが、やはり会議は重要でしょうか?
中沢:ビジネスは基本的に、人と人とのコミュニケーションによって構成されます。ですから、話し合いで進んでいく会議は、ビジネスそのものであると考えます。
林:会議は人と会って話しているだけでなく、価値などの“何か”を作り上げていく場であると意識していいと思います。たとえSkype会議などでも、それは対面していないだけで本質は変わりません。
――会議のよくある問題点として何が挙げられますか?
中沢:うまくいっている会議のほうが少ないと思います。会議が終わると仕事が終わった気になってしまうといった勘違いや、設定された時間を目一杯使わないといけないという錯覚でダラダラ続けてしまうケースも多いですね。会議は早く終わらせられるなら、早く終わったほうがいいと思います。
林:それと、大人数が集まってしまうことも起こりがちですね。会議という場は、誰かが話をするとどうしても空間を独占してしまい、残った人たちが話を聞くだけになってしまいます。ですから、無駄に人数が多いと人件費の浪費になります。
中沢:私は外資の会社に在籍していた経験がありますが、会議の問題点は外資でも変わりません。1日のスケジュールがほとんど社内会議なんて人も少なくありませんでした。特に役職の高い人ほど会議が多くなりますが、社内の会議は“価値が作り出されてない”ものが多いので注意が必要です。
――そうした問題だらけの会議を改善するためには、まず何をしたらいいでしょうか?
中沢:その会議の目的が何かということを仕分けすることが先決です。基本的には、アウトプットや意思決定が目的である会議が重要です。
林:価値が作り出せない会議はなくしていくようにすべきですね。連絡は会議でしなくてもいい。メールで行えば十分です。

会議に最適な人数は7人である

――仕分けをして残った会議を改善する上で、見直すポイントはありますか?
中沢:会議を通してアウトプットを作る上で、資料の準備は必要です。また、コンサルティングをしていると、たまに「うちの社員には課題発掘能力がない」と相談されることがあります。その場合は、課題発掘のワークショップを行うなどして、スタッフのレベルを上げていくこともあります。
林:会社によっては、分析やロジカル・シンキングを教育しているところもありますが、普通の会社はなかなかそこまでできません。ただ、テーマへの理解が深まることで自然と議論も深まりますので、会議に参加するスタッフに対して効率よく問題解決を行うためのスキルやノウハウの共有はあったほうがいいですね。
――資料共有は前もってしておくべきでしょうか?
中沢:アカウントプランニング(営業)のプレゼンなどの場合は事前に読んでもらっていたほうがいいので、できれば前日に共有しておきたいですね。ただし、駆け引きがある場合もありますので、ケースバイケースです。事前に渡すと手の内が見られてしまうという場合は当日でかまわないと思います。
――経験上、会議参加メンバーとして望ましい人数はありますか?
中沢:いつも私は7人が望ましいとお伝えしています。カードや付箋によってブレストを効率的に整理する「KJ法」を考案した文化人類学者の川喜田二郎さんが、「人が覚えられる最大の人数が7人」と話していたことにも由来します。
林:7人であれば、そこにいる参加者がそれぞれ何を考えているのかを把握でき、会議への参加姿勢がより積極的になりますね。
中沢:誰かが一方的に話を続けると、聞いているほうは15分も持ちません。それを避けるために、サブグループに分けてワークショップのようにしてから、最後に発表の場を作るというパターンもあります。できるだけ一人が独占する時間を短くする工夫も必要です。
林:適切な人数のほうが自分事化しやすいですし、時間内で話す量が、ちょうど良くなりやすいというメリットがあります。
――会議の最適な時間設定は?
中沢:時間は難しい問題ですね。一番いいのは15分とか30分だと思いますが、アウトプットを作るにはその時間では難しいですし、ブレストなどまとまった時間が必要になる会議があるのはやむをえないとは思います。
それよりも、会議室を1時間押さえたから1時間全部使わなくちゃいけないと、長引かせる人がいるのが一番の問題ですね。
――確かによくそういうケースに遭遇する気がします。
中沢:そういう長引かせる人がいる場合は、立って会議することをおすすめします。また、会議中に眠くなったら、立って歩くべきだと思います。
食後や午後など、生理的に眠くなるのは仕方ないので、眠るくらいなら立って歩いたほうがいいです。外国の方はそうしたことをよくやるのですが、日本人はなかなかやれないんですよね。ですが、立って歩くよりもウトウトするほうがよっぽど失礼です
――良い会議室の選び方はありますか?
中沢:情報共有の観点から、ネット環境とPCの画面を映すプロジェクターやディスプレイは絶対に必要ですね。それから、その場で書くということも大事ですので、ホワイトボードも必要です。
それと重要な会議の場合は、会社から離れた場所で行うべきです。大事な会議では、その会議への集中を邪魔する連絡や来客が入らないようにしたほうがいいですからね。

「基本的に会議は行わない」という意識

――最後に、どうしてもビジネスの場において発生しがちな「定例会議」を退屈なものにしないための工夫があればお聞かせください。
中沢:毎回テーマを決めることですね。そしてファシリテーターを毎回変えること。もし、それをやってもマンネリ化するようだったら、その定例会議自体をやめたほうがいいと思います。
――朝礼に悩まされている方も多いと聞きます。
中沢:「意思決定」と「アウトプット作成」のどちらにも該当しない「動機付け」とか「合意」という曖昧なものを目的とした会議は、毎週や毎朝やるようなものではありません。セレモニーとして必要かもしれませんが、それは四半期末や年度末に行えばいいことです。会議時間を設定しているから実施するという「形式」になっていないか、注意する必要があります。
林:コミュニケーションの一環として毎朝会議をするなら、もっと適切な手段があると思います。「お尻を蹴る」といった目的で営業進捗の報告会議を行う際でも、報告のためのフォーマットが作れるはず。違う形を模索して、スピーディにやるべきだと思いますね。
中沢:とにかく基本的には「デフォルトで会議は必要ない」という意識を持つべきです。会議を当たり前の定例にしてはいけない。会議があるときは特別。だからやるときは本気でやる、という考えでいるべきです。
林 哲郎(はやし てつろう)株式会社ジェイエルシー
株式会社ジェイエルシー代表取締役社長。東京大学法学部卒。ITベンチャー企業を経てプライスウォーターハウスクーパース(PwC)コンサルタント株式会社に入社。2005年にヘッドハンティングを受け、メディア系ベンチャー企業の取締役CFOに就任。ネットメディア事業のスタートアップ、マーケティング、オペレーション、ファイナンス等、ベンチャー実務を幅広く経験。その後、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社にて製造、消費財業界等に対する経営コンサルティングに従事したあと独立し、現職に至る。 株式会社ジェイエルシー http://www.joblifecreate.com/ オーナー経営者向けの経営課題解決、経営幹部採用を支援する経営コンサルティング会社。これまで2000社近くの経営者とのディスカッションを通じ、様々な業種・規模の企業に対しカスタムメイドのサービスを提供。
中沢 恵(なかざわめぐむ)元プライスウォーターハウスクーパース(PwC)コンサルタント株式会社
元プライスウォーターハウスクーパース(PwC)コンサルタント株式会社執行役員、戦略コンサルティングサービス部門パートナー。上智大学卒、INSEAD(欧州経営大学院)でMBAを取得。
日産自動車株式会社を経て、PwCが世界最大のグローバル会計事務所傘下のコンサルティング会社として日本国内で急成長した時代に、戦略コンサルティング部門のトップを務める。国内外のさまざまな企業に対する戦略コンサルティンクの経験多数。現在は独立して経営コンサルティングサービスを提供。クライアント側のメンバーを巻き込んだファシリテーションによる課題発見、解決策立案と実行支援、定着化を得意とする。
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