いまコワーキングスペースが熱い。
「いいオフィス」の代表・龍崎コウ氏は、年内に300店舗、最終的には全国に2万店舗、世界に10万店舗の目標を掲げ、コワーキングスペースのフランチャイズに取り組んでいる。
働き方改革が叫ばれるものの、効率化や生産性の向上は遅々として進まず、まだまだ社会全体が改革に向けてシフトしているとは言い難い状況が続いている。しかし、新型コロナウイルスの影響で、私たちは否が応でも変革しなければならない時を迎えている。
その変革のカギを握るのがコワーキングスペースだ。
人との接触を避けるために推奨されたテレワーク。そしてテレワークに伴って在宅勤務によるストレス、マネージメントや自主管理の難しさなど、新たな課題も生まれた。
「いいオフィスは、コワーキングスペースをつくることによってオフィスのあり方をアップデートし、働く場所の流動性を高め、それにより結果として地域活性にも貢献できる。そんなビジネスモデルです」
そう語る龍崎氏。
果たしてコワーキングスペースは今後どんな役割を担い、働き方をどのように変えていこうとしているのか。龍崎氏が考えるwithコロナ時代の働き方改革についてお話を伺った。
コワーキングスペースは家でもオフィスでもないサードプレイス
- ――シェアオフィス、コワーキングスペース、レンタルスペース、ドロップインと、いろいろな言葉が出てきていますが、それぞれどんな棲み分けになっているのですか。
- シェアオフィスはあくまでも、空間を個室に区切って企業さんに貸します。サテライトオフィスの要素があって、自分たちの個室がほしいという形ですね。そして、比較的オープンスペースになっていて、みなさん自由に座って自由に仕事してくださいっていうのがコワーキングスペース。
- コワーキングの「コ(Co)」は「共同」を意味するように、みなさんが一緒にやってコミュニティを生んでいきましょうという形です。レンタルスペースはコワーキングスペースとあまり意味は変わらないと思いますが、どちらかというと年配の方にはレンタルスペースと言ったほうがイメージを理解しやすいってことだと思います。WeWork*1さんのおかげでシェアオフィスという言葉が浸透してきて、コワーキングという言葉もこの5~6年で知られてきました。
- 基本的にいろいろな形があって、まだどれも主流ではないと思います。主流でないからこそ、オープンスペースを利用して仕事をしていくというコワーキングスペースのあり方をアップデートしていかなければなりません。いまはフリーランスの方やノマドワーカーが使うという印象が強いですが、オフィスワーカーなどのホワイトカラーと言われる人たちが家の近くにあるコワーキングスペースを使う形に変えていきたい。そうすると、今までとまったく違った市場ができる。フリーランスの方々だけではなく、大企業の方々も自宅の近くのコワーキングスペースを使う形にもっていきたいと考えています。
「いいオフィス」品川
- ――コワーキングスペースと契約しても、その場所まで行く時間が通勤と変わらないと面倒臭くなって結局あまり利用しなくなりますよね。
- そうですね。たとえばいま浜松町にいて、その後に渋谷に行く用事ができたとき、約束の時間まで1時間空いたとします。その場合、みなさんスターバックスとかで時間をつぶすわけですよね。そういうときに、どこに行っても「いいオフィス」があって、すぐにチェックインして利用できるようにしたい。出張に行っても見知らぬ土地だけど「いいオフィス」がある。海外に行ったときにスターバックスがあるとすごく安心しませんか。とりあえずスターバックスに行けば間違いないかなという安心感です。同様に「いいオフィス」に行けばオフィスワークがすべてできるという環境を整えていくことが大事だと思っています。いろいろな方のいろいろな使い方があると思っているので、それらに対して提案をしていきたいですね。
- ――コワーキングスペースは働くうえでどんな存在になっていくのでしょうか。
- 家でもなく、オフィスでもないサードプレイス*2でしょうか。図書館に近いイメージです。図書館に行って勉強をするような形がコワーキンスペースかなと思っています。
- ただ、会員さんたちに対してもっと付加価値をつけていけなければならない。同じ場所で働く者同士が仕事を紹介し合ったり、仕事の発注先を用意してあげたり、また逆に仕事を依頼したり。彼らもコワーキンスペースを利用することで、所得が上がっていく仕組みをつくるのが「いいオフィス」の付加価値だと思います。
WeWork*1
米国ニューヨークに本社を置く、コワーキングスペースを提供する企業。29カ国111都市に528カ所以上の拠点を有し、急成長を遂げユニコーンと呼ばれる。ソフトバンクも出資し日本にも上陸したが、現在は赤字経営を改善できずIPOは延期、評価額も78%下落するなど苦境にある。
サードプレイス*2
コミュニティにおいて、自宅や職場とは隔離された、心地のよい第3の居場所を指す。アメリカの社会学者、レイ・オルデンバーグが著書『ザ・グレート・グッド・プレイス』で、市民社会、民主主義、市民参加、ある場所への特別な思いを確立するのに重要だと論じている。サードプレイスの例としては、カフェ、クラブ、公園などが挙げられるが、スターバックスが使ったことで広く知られるようになった。