株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫 義人 氏
ビジネスでは「ホウレンソウ」が、仕事の基本として教えられることが多い。「ホウレンソウ」とは、報告・連絡・相談のこと。しかし、そんな慣例を破る起業家がいる。株式会社ソニックガーデンの社長であり、『管理ゼロで成果はあがる』『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』などの著者である倉貫義人氏だ。
同社はセルフマネジメントをはじめ、オフィスや管理職の廃止、リモート会議などのユニークな取り組みが評価され、「働きがいのある会社2018」にも選ばれた。
倉貫氏は、なぜこの常識破りな取り組みに成功したのか。働き方改革が叫ばれる中、ユニークな経営戦略で成長を遂げる倉貫氏にその秘訣を伺った。
相談は雑にしたほうがいい
- ――「ザッソウ」が特に重視されるのはどんな背景があるのですか。
- 僕らがやっている仕事の種類がまず変わってきているのがひとつです。再現性の低い仕事やクリエイティブな仕事が増えてきた。相談の重要性が非常に増していると思います。問題を解決するときに相談しないと解決しないことがたくさん出てきたときに、いきなり改まって相談するのは難しい。だから「雑談から入りましょう、ザッソウしましょう」と。
- 「ザッソウ」という言葉には、もうひとつ「雑に相談する」という意味があるんです。これも僕らが大事にしていることです。よくあるのが相談するときに、しっかり考えないで相談すると、たいてい「しっかり考えて持って来い」「なんでそんな状態で相談してくるんだ? 調べてから来い」って叱られる。そうすると、「しっかり考えて相談しなきゃ」と思って時間をかけてから相談するんです。しかし、今度は完璧に仕上げてから相談に持って来られると、相談を受ける側はダメ出しをしにくくなるんです。「いや、そんなんじゃダメだ」と思って、ひっくり返してしまうと、それまでやってきたことが無駄になる。もっと早い段階で相談にきてくれたら早く軌道修正できたかもしれない。しっかり考えて持って来られると実は無駄が多くなるんです。
- いま正解がない時代になってきていることも大きいと思っています。レポートを書くのもそうだし、資料を作るのもそうかもしれない。お客様のために作る提案資料でも、正解がある仕事ではないですから。
- ――上司の経験値からの判断が必ずしも正解とは限らない。
- そうです。部下が考えていることも正解ではないかもしれないし、上司が考えていることも正解ではないかもしれない。正解があれば、しっかり考えたうえで持って来られても「正解」もしくは「不正解」と言えるけど。正解かどうかわからないので、お互いキャッチボールをしながら作るしかない。キャッチボールで質を高めていくほうが、生産性も成果物も良いものになるというのがあります。
- あとは、組織のカタチも変わってきたということですね。最近ティール*とか、ホラクラシー*が世の中で注目されています。従来の指示命令の組織の作り方で、ただ「良いレポートを書きなさい」「良い研究をしなさい」「イノベーションを起こしなさい」と言うだけだったら、それは上司の仕事としてどうかという話です。そんなことやって仕事ができたら苦労しない(笑)。指示命令では人を動かせなくなってきている。
- フラットな組織を作ろうするとき、果たしてホウレンソウでいいのかという疑問が出てくる。雑談をしていく中で本人のやりたいことを知って、仕事をやってもらう。生産性を確実に上げるためには、そういうフラットな組織が求められてきているのだと思います。
ティール*
社長や上司がマイクロマネージメントをしなくても、目的のために進化を続ける組織のこと。指示系統がなく、メンバー一人ひとりが自分たちのルールや仕組みを理解して独自に工夫し、意思決定していくという特徴が見られる。
ホラクラシー*
社内に役職や階級のないフラットな組織形態のこと。意思決定権が組織内で分散される。それぞれが裁量をもち、自主的に仕事に取り組めるようになることが期待できる。