会議を効率的に進める3つのキーフレーズ『会社を変える「すごい会議」の作り方』【スマート会議術 第1回】

会議を効率的に進める3つのキーフレーズ『会社を変える「すごい会議」の作り方』【スマート会議術 第1回】Coriginal株式会社代表取締役/一般社団法人すごい会議 認定コーチ 段原 尚輝氏

会議を通して会社全体を変えていく「すごい会議」の存在をご存じでしょうか?
「すごい会議」は、1975年に米国で確立された手法です。日本でも2005年に書籍『すごい会議』が出版され、現在までに関連書籍として12冊が発売。その会議手法を伝えることを目的とした「一般社団法人すごい会議」のコーチ陣によって、1,000社以上で導入されています。

では、会社の業績拡大や経営幹部の成長、生産性向上といった目的を達成するための方法として「会議」を重要視し、「すごい会議」の手法を伝える「すごいコーチ」たちは、いったいどのようなノウハウを使ってビジネスの成功を生むための会議を行っているのでしょうか?コーチを務める段原尚輝氏に、会社を変えるための「すごい会議」の作り方についてお話を伺いました。

目次

可能性を最大化する方法を会議で作り上げていく

――「すごい会議」のノウハウを実践することで企業の業績が上がるというのは、どのようなしくみからなのでしょうか?
すごい 会議の中に「戦略的フォーカスの作成」というものがあります。戦略的フォーカスとは戦略的意図を持った目標のことです。ここでポイントになるのが、チームメンバー全員が最高と思うアイディアを提案しながら作っていくことです。
企業の上層部が作って下りてきた目標でなく、「自分たちが作ったんだ」と感じる目標を作ることで、メンバーが目標達成に向けた共通意識を持ちやすくなります。
また、もう1つ重要な点は、その目標設定を過去の延長線上にあるものではなく、今よりも上のステージにあるチャレンジングなものにするということです。
――チャレンジングな目標を立てることが重要である、と?
僕たちが考える目標を立てることのメリットは、「その目標を立てなければ起こらなかったことの実現可能性が最大化すること」なんです。
例えば今まで2億円だった営業利益が、来期順当にいけば2.2億円くらいにはなりそうだとしましょう。そこで、実現できるかわからないけど、目標は4億円としたとします。
すると、どうにかして4億円にしようと、今までと違うアクションを起こし続けます。最終的にはその目標には届かなかったけど、営業利益が3.5億円出たとすれば、4億円という目標を立てたことが功を奏したといえます。
これが、目標を立てることのメリットです。
――目標を立てることで方法が具体的に考えられていくということですね?
売り上げを伸ばそうとする場合、一般的には単価を上げるか客数を増やすかのどちらかになると思います。そこで、例えば目標の売り上げを達成するためには2,000人の来客が必要になったとしましょう。そして、過去の販売促進施策では1,000人の来客実績があったとします。でも、目標には1,000人足りないですよね。
つまり、まえと同じ販売促進をしていても目標が達成できないということがわかります。そこで「今までとどんな違うことをするか?」という話になり、具体的な施策の方法やしくみを考えるようになります。

目的がない会議が多い。ただの報告会はメールで十分

――段原さんから見て、一般的な会議の問題点はどのようなものが多いでしょうか?
まずは、目的のない会議が多いということが挙げられますね。会議を行うからには必ず目的があるはずですが、「今までやっていたから」というのが会議の目的になり、ただの報告会となり、最終的なアウトプットが出ない会議を多く見てきました。単なる報告なら、メールでデータを共有すれば十分です。
あとは、参加者が呼ばれたから来ただけで「なぜ会議に参加しているのか」を理解していない、やること自体が目的になってしまっている会議も多いですね。
――そうした問題を解決するために、どのようなことを行っているのでしょうか?
すごい会議では、会議を始めるまえに、必ず聞く質問があります。それは、「この会議でどんな成果が手に入れば、あなたにとって一番価値がありますか?」という質問です。
その質問をメンバー全員に聞いて全員の前で発表してもらうことによって、それぞれがこの会議で得たいものを明確にします。全員が目的を持って参加する会議では、全然違う成果が出ますからね。

発言をコメント交換から3つのフレーズにすることで会議は前に進む

――会議のよくある問題点を教えてください。
ただコメントが飛び交うだけの会議になってしまうケースは多いですね。サッカーに例えるなら、バックパスだけをしていてゴールに近づかないような会議です。
――コメントを言ってはいけない…ということですか?
コメントを言うだけでは、会議が前に進まず何も意思決定されないんです。すごい会議では、会議の中で3つのフレーズで発言するようにしています。それは「提案」「リクエスト」「質問」のどれかです。
誰かの意見が聞きたい場合は、その人に質問をして回答してもらいます。
――意思決定が大事とのことですが、意思決定者を誰にするかで揉めることはないのですか?
すごい会議では、会議のまえに予め意思決定をする人を決めてもらうようにしています。
パワーバランスを考慮して発言できない、上の人に対して何も言えない人がいるというのは、そもそも会社として問題ですので、そういう場合は会議以前にその問題を解決することから始めます。
――最適な会議出席者の人数はありますか?
会議の目的を達成するために必要な、最少人数を呼ぶようにお願いしてます。ただ意見を言うだけの人、聞くだけの人は出席させないようにということです。これは経験によるものですが、だいたい6名前後がベストですね。
――出席者の能力や役職などについて、最適なバランスはありますか?
会議の内容によって変わってきますね。「偉いから仕方なく呼ぶ」みたいなのはやめて、会議の目的・意図を達成するために、最適な人を集めてくださいとリクエストしています。

会議はあくまで会話を中心に。PCは閉じ、携帯もOFFに

――すごい会議ではどのように会議を進めるのでしょうか?
まず、座席の座り方に決まりがあります。テーブルの奥、いわゆる「お誕生日席」に僕たちがコーチと呼ぶファシリテーターが座り、その対面側に意思決定者、そのほかの場所に一般の参加者が座ります。
誰がコーチ(司会)役で、誰がこの会議での意思決定者なのかを明確にするためです。
――意思決定者とコーチは違う方がいいのでしょうか?
コーチングを行いながら最終的に意思決定をするということも、決してNGではないです。しかし、どちらかの役割に集中できるという点から、役割は分けたほうが効果的だと思います。
――資料の共有方法について、注意点はありますか?
すごい会議では、基本的に個人のPCやタブレットは使わず、携帯もOFFにしてもらうようにしています。
理由としては、注意がそれらのデバイスに向かってしまうからです。それらを使うときは、意思決定者の許可をもらってから使用します。
――データはそんなに重要ではない…ということですか?
いえ、もちろん重要です。事実・データがない状態で出した解決策は机上の空論になりやすいですし、事実・データを見ることで解決策がより具体的になりますので、必ず必要な資料として事前に用意してもらうようにしています。

「雰囲気がいい会議室」の重要性

――会議をするにあたり、良い会議室というものはありますか?
あります。会議を行う上で、会議室の準備というのは非常に重要なんです。僕たちがクライアントに提供している資料においても、すごい会議を行う上での「会場室の選定は、会議の成果に大きな影響を与える重要なミッションです」と伝えています。
――どのような会議室を選ぶようにお願いしていますか?
「雰囲気がいいところを選んでください」と伝えています。
――「雰囲気がいい」とは?
すごい会議には、会議を行う上で重要な約束があるのですが、そのうちのひとつが「可能な限り愉快にやる」というものです。
「ただのコメントは言わないでください」と伝えていますが、冗談とかは全然OKです。成果を最大化するという目的のために、できる限り愉快にやりましょうということですね。
会議の雰囲気が明るい場合と暗い場合、どちらがより成果につながりやすいかといったら明るい場合です。成果を最大化するためにも、雰囲気は非常に重要なんです。
そして会議の雰囲気には、会議室の雰囲気も大きく影響するんですよ。具体的にいうと、テーブルに対する座席の配置や、ホワイトボードがきれいかどうか、ホワイトボードのペンが整然と並んでいるかなど、そうしたものすべてが影響します。
「神は細部に宿る」とはよく言いますが、まさにその考え方です。会議室がどこでもいいなんてことはありません。
――ペンの置き方まで関わってくるとは、おもしろいですね。
机の上に置くペットボトルの置き方でも変わりますよ。ラベルのロゴが正面を向いているかどうか、そうした細部が会議の最中の何かしらの発言や行動にも関わってきます。
――雰囲気のいい会議室の見分け方を教えてください。
いろいろありますが、ひとつは入った瞬間に「何かいい」と感じるかどうかですね。
例えば、高級ホテルの会議室で会議をすると、気分も変わるじゃないですか。僕自身、一人で仕事をするときも場所の雰囲気は非常に気にします。
繁華街の雑然とした喫茶店で会社の重要な戦略を考えるのと、高級ホテルのラウンジで考えるのとでは、まったく違うアウトプットが出ますよね。成果を最大化するためにも、雰囲気のいい場所を見つけるというのは重要なことなのです。

文・写真:坂上春希

段原 尚輝(だんばら なおき)Coriginal株式会社/一般社団法人すごい会議
Coriginal株式会社代表取締役。
GE(ゼネラル・エレクトリック)では、マーケティング部にて金融部門の戦略を担当。アクセンチュア株式会社では、ITコンサルタントとして、大手アパレルや大手メディアのプロジェクトに従事してきた経歴を持つ。IT・コンサルティング・コーチングの経験を活かしつつ、「すごい会議」を活用して過去の延長線上にない成果を出す最強の組織・チーム・人づくりをしている。
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