情報は、交換し合えばし合うほど価値は高まる【スマート会議術第54回】

情報は、交換し合えばし合うほど価値は高まる【スマート会議術第54回】株式会社Phone Appli 代表取締役社長 石原 洋介 氏

「Change the Way」(やり方を変える)を合言葉に、コミュニケーションのやり方を変え、企業文化の変革と企業価値の創造をサポートする株式会社Phone Appli。コミュニケーション改革企業No.1をビジョンに掲げ、企業の社内コミュニケーションを促進するソリューションを軸に急成長を遂げてきたベンチャー企業だ。

5年連続シェアNo.1の連絡先管理・共有サービス『連絡とれるくん』をはじめ、『居場所わかるくん』『お客様わかるくん』『会議革新プログラム』など、さまざまな“働き方改革支援サービス”を提供する。

働き方改革が叫ばれる昨今、仕事の4割を占めると言われる会議はどうあるべきか。代表取締役社長の石原洋介氏に、会議の「Change the Way」についてお話を伺った。

目次

会議の実態を抽出する『会議革新プログラム』

――御社が提供している『会議革新プログラム』についてお教えください。
会議のスコアリングをベースに、自社がどういう会議のレベルなのかを見てから改善していくメソッドです。このスコアリングシートは、京都大学経営管理大学院の末松千尋先生が世界22カ国、NPO400の会議を調査して、「会議のスコアと業績にいわゆる相関がある」という研究結果に基づいています。
「日本の会社は仕事全体の40%ぐらいは会議をしている」と言われています。そんな状況で、「会議を上手にやる企業は業績がいい」という相関があるという結果が非常に面白いと思いました。会議スコアをまず測定して、その会議スコアを上げるためのメソッドを提供しようというのが、この『会議革新プログラム』の仕組みです。
――御社のWebサイトでも公開されていますが、質問に答えることで点数化されるのですか。
そうです。「あなたの会社は会議スコア2.5です」とか、「3です」とか算出されます。弊社の場合、初めは2.6ぐらいでした。あまり良くなかったんです。
すべてで67項目あって、これを実測します。その企業のやっている会議をコンサルタントが行ってチェックしていきます。「会議の目的はみんなに共有されていますか」とか、「プロジェクターやモニタでみんなに資料を見せられていますか」とか、「事前に資料を見せられていますか」とか、「そのオーナーシップは明確、かつアクションは、誰がいつまでにやるのかは明確ですか」とか、「会議資料を作るために、ムダな時間を使いすぎていませんか」とか。そういったことをヒアリングと実測調査で点数化します。
――実測調査は具体的にどういうことをするのですか。
調査員を会議に参加させてもらってやります。もちろん一切発言をせずに、みなさんがどんな会議運営をしているかを見ます。たとえば、私の会社でやってみたところ、「リーダーが強すぎる」と言われました。「現場のみんなからのアイデアを、ボトムから上げていくような会議が弱いですね」というコメントをいただきました。こんな感じで実測して評価をします。
――スコアリングが出て、そのあと御社としてはどう関わるのですか。
「定期的にスコアを取り直しませんか?」とお伝えしています。
――「あとは自社で考えてください」ということですか。
そうです。欠点がわかれば、その欠点を改善していくだけなので。

会議にはお金がかかっていることを意識する重要性

――会議の欠点を改善していく上で、クラウドサービス『会議かえるくん』を提供しているのですか。
『会議かえるくん』単独の提供はしていません。観測してレポートを出す中で、自社の会議のやり方を変える促進支援をするときに、『会議かえるくん』をご紹介しています。
――それで御社のサービスを使いたいと言えば、「どうぞ」ということですか。
そうです。よく、会議って共有カレンダーの予定表で招待しますよね。たとえば、人の名前と議題を入れます。「○○さん 来期プラン会議 会議室の場所」と。『会議かえるくん』では、「役割コスト設定」をポチっと押すと、「この会議30分で9500円かかるよ」というのがわかります。9500円は簡単に言うと場所代と人件費です。そのときの運用責任者、最終意思決定者、ファシリテーターは○○さんにやらせよう。タイムキーパーは○○さんにさせよう。そのときのアジェンダを入れていく。これで送信すれば、URLが生成されます。このURLを叩くと、『会議かえるくん』のテンプレートで、会議をうまく運営するために入れておいたほうがいい参加者や添付資料、アジェンダ、アクションアイテムリスト、アウトプットなどを共有できるWebポータルです。これをちゃんと埋めていけば、末松先生のメソッドに沿った会議ができるような仕組みです。
――金額が出ると言うのは、コストの意識づけですか。
そうです。やたらめったら人数を呼ぶ人がいますよね。金額が出ることで、本当に会議に必要な人だけを厳選しようとする気になるのを促します。
――「お前とりあえず出ておけ」みたいなことがなくなりそうですね。
そうですね。「とりあえず」じゃないだろと。投資に応じた理由をみんなが考えるようになると思います。たとえば会議の段階で「お前は今週いくら売上げるんだ」とか、「あの件やったのか?」とか、別に会議でみんなが集まっているときにやらなくてもいいんですよ。SFA(Sales Force Automation)とかで、パッと今週の売上げが画面に出てくれば、会議で聞く必要ないじゃないですか。そういうことに時間が浪費されているわけです。

会議とは専門性をお互いに交換し合う場

――会議に課題を持っている企業は増えているのですか。
増えていると思います。やはり効率を上げなければいけないと考えたときに、会議の時間が40%ぐらいを占めているわけです。最も占めているものの効率を10%アップするほうが投資対効果は高い。会議が多く占めているようであれば、「そこから手をつけるべきではないですか?」ということは、提案しています。
――実際に、『会議かえるくん』を取り入れた企業は、具体的にどんな変化がありますか。
「会議が終わったあとに、アクションアイテムと、そのオーナーと期限を定義するだけでもだいぶ変わった」という声があります。私も、それができていれば、ほぼ成功だと思うんです。それさえみんなができるようになったら、かなり効率のいい会議になると思うんです。
自分で考えるだけでなく、ブレストもそうですが、新しく生み出すことにみんなの時間が使えたほうがいいですよね。会議は会社の文化です。それを「革新したい」と思っている人は少なからずいると思います。
――会議に大きな課題があるとすれば、どういうところがありますか。
やはり「決めない」ということだと思います。「決める」ということは、責任が伴うじゃないですか。責任を負う組織モデルになっていない。会議の場でうまく責任を分散させて、モヤモヤっとさせて、ことなかれにするような感じじゃないですか。でも、決めないとビジネスが前に進まない。ビジネスが前に進まないと、海外の競争相手には勝てない。経営側としては、本当はみんなに決めてもらって、トライ&エラーのサイクルを短くしてビジネスを進めたいと思っているんです。それをなかなか現場がうまく運営できない。もしくは、トップを含めて「現状維持でいい」と思っているんじゃないかと思います。
――会議の価値を上げるポイントは何だと考えますか。
会議は、みんなそれぞれが持っているプロフェッショナリティとかノウハウとか、専門性をお互いに交換し合うことによって価値を創る場であるべきです。それが適切に運営できていることですね。
ですから、プロフェッショナリティを持たない人が会議に参加をするのは、あまり意味がないと思います。勉強のために出るというのは、もちろんOKです。いずれプロフェッショナルになるためであれば。違った見方、違った能力をみんなと交換することが重要なんです。
情報は、交換し合えばし合うほど価値って高まると思うので。会議はそこからいいサービスやいい企画、「新結合=イノベーティブ」なアイデアが出てくる場だと思います。参加するなら、それなりのプロフェッショナリティをちゃんと持っているというのが、会社としては重要だと思います。

強い会社は「意思決定」「ブレスト型」「執行管理型」がうまく運営できている

――会議には目的によってやり方も違ってくると思います。
会議には、大きく意思決定型、ブレスト型、執行管理型に分けられると思います。意思決定型、ブレスト型がうまくできている会社は、世の中をあっ!と思わせるようなサービスが出てきているんじゃないかと思います。ブレスト型はエモーショナルインテリジェンスとも呼んでいますが、情報交換をしながら、思いつくような会議。それこそ、「イノベーション=新結合」の源泉になったりするものだと思うんです。
ですので、ブレスト型というのは、これからのグローバル、かつダイバーシティ(多様性)の中で、新しいサービスを作っていくときには、非常に重要になる会議だと思います。
執行管理型というのは、なくなりはしないでしょうけど、減っていくとは思います。「あなたは今月いくら売上げをやって、いま進捗がどのぐらいで」という予実管理とかですね。たとえば、「まだ売上げが30%足りないですよね。翌週何をしますか?」っていうのを会議の中で確認をしていくようなものですね。こういったものはなくなっていくと思います。別にそれは会議の場でなくてもいいので。
リーダーイノベーション型というもありますが、これは1人のリーダーのアイデアで、会社を一気に引っ張っていくときには機能しするものです。ただ、その場合リーダーが時代遅れになってきたり、リーダーの能力に組織が依存したりするので、限定的ですよね。
――朝礼のような士気を上げる会議もありますよね。
そうですね。会社の運営の仕方にもよると思いますが、そういうのが好きな経営者はいますね。外資はそういうコミットメント型が多いです。「あなたは今月いくらやるんですか?」「私はいくらやります!」ってみんなの前で発表させることによって、達成をコミットメントさせる。ただ、やりすぎると、コンプライアンス違反にもつながってしまいます。こういうのは気をつけなければならないですね。
こういった意思決定、ブレスト型、そして執行管理型がうまく運営できている会社というのは強い会社だと思います。

『V2MOM』がなければ、小手先で会議のルールを変えても意味がない

――会議がムダだと感じて、イヤイヤ仕方なく参加したり、会議に集中しないで他の作業をしたりする社員も多いと思います。
それは目指す方向が明確ではないからでしょう。会議に限らないですが、弊社では『V2MOM(ブイツーマム)』という人事考課の仕組みを自社で、いろいろ工夫してやっています。これは、会社と社員が同じ方向に向かって成長するために作っているものです。Vision(ビジョン)のV、Values(価値)のV、Methods(メソッド)のMと、Obstacles(障壁)、Measure(測定基準)のM、この頭文字をとって『V2MOM』と言います。会社では、みんな、「V2MOMやっているか?」ってよく言って、半年に1回『V2MOM』を作ります。
『V2MOM』で、達成しなければいけないメジャー(測定基準)と、目指すべきところが明確であれば、それに沿わない会議に出るのは本意じゃないことでしょう。逆に、自分のメジャーやビジョンを達成するために、その会議に出て、いろいろなメンバーと情報共有したり、意思決定をしたりするのであれば、その会議にパソコンを持ち込んでいても、ちゃんと人の話を聞いて付加価値をつけると思います。そもそもの目指すべきところが曖昧なのが、悪い会議の元凶な気がします。
――根本の『V2MOM』を押さえずに、枝葉末節な手段だけを変えても意味がないと。
「自分はどうしてもこの雪山に登りたいんだ! この頂上に行きたいんだ!」というビジョンがあったら、それを準備するための会議とか、一緒に行く人たちとの顔合わせには自分が絶対出るじゃないですか。内職せずにちゃんと話を聞くじゃないですか。それと同じことだと思います。そこがブレている組織の会議は、あまりいい会議にはなっていないと思います。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

石原 洋介(いしはら ようすけ)株式会社Phone Appli
株式会社Phone Appli 代表取締役社長 兼 CHO室長。青山学院大学経営学部を卒業。2011年、青山学院大学大学院にてMBA取得。1997年に株式会社APC Japanに入社。2000年シスコシステムズ合同会社に入社し、コラボレーション エバンジェリストを担当。2016年にPhone Appliの代表取締役社長に就任。働き方改革やコミュニケーション改革へ取り組む企業へWeb電話帳を中心とたアプリケーションの企画・開発・販売を行っている。2018年2月には、「もっともパフォーマンスを出せる環境で健康的に働ける」オフィスとして「CaMP」を設立。

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