会議は世代別に役割を担えばうまくいく【スマート会議術第42回】

会議は世代別に役割を担えばうまくいく【スマート会議術第42回】CRMダイレクト株式会社 代表取締役社長 横田 伊佐男 氏

数多くの大手企業に経営コンサルティングをしてきたカリスマコンサルタントの横田伊佐男氏。これまで数千の会議に参加、講師やファシリテーターなどを担当し、「会議術」のプロとして高い評価を得る。そんな横田氏が、自身の経験を通して紡ぎ出した会議術とは? そのエッセンスが詰まった著書『ムダゼロ会議術』から、世代別によって変わる会議の有効活用術についてお話を伺った。

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目次

20代はひたすら質問攻めをしろ

――著書『ムダゼロ会議術』に「会議は世代によって担う役割が異なる」という話がありました。これは多くの企業のコンサルタントをされてきた上での経験則ですか。
はい。20代は、会議の議長をする人はほとんどおらず、会議に参加するだけの人が多くなりますよね。彼らの特性としては、経験がないということがあります。発言がない、活性化しないことが特性なのです。20代には「発言はいいので、とりあえず手を挙げて質問をしなさい」と伝えています。
――20代はとりあえず質問力を鍛えていくということですか。
わからないことは、とにかく手を挙げて質問することが重要だと思います。質問力を上げるには、意見が2つに分かれる質問を用意するといいです。たとえば「当社のビールはキレに振るべきでしょうか。コクに振るべきでしょうか。その場合のメリット・デメリットは、どのように整理されているのでしょうか」と。会議の場にいる人や議長に考えさせると、20代としては完成された上級者になってくるかと思います。
「あいつ、ちょっとやる気があるんじゃないか」とか「問題意識が高いな」とか評価されるようになります。前回お話したように、会議はいろいろな人が見ているステージでもあるので。仕事で運と縁の巡りを良くするためにも、経験がないうちは、とにかく手を挙げて質問しまくるということが重要なんです。

30代は「白悪魔」となって反対しろ

――30代は仕事も一通り覚えて、前線で活躍できる一番やりがいのある世代だと思いますが。
経験もあって世間のこともわかって、気力も体力も充実期を迎えつつある30代後半の人が、実はあまり意見を言わない。世の中の仕組みがわかってきて、飽きてきた段階なのか。いろいろな意見を言うより、ピンポイントで現実的に「これだ」って言う傾向になってきています。
もちろん、仕事がわかりかけた30代特有の傾向としてはいいかなと思います。数少ない発言の中で、あえて、ちょっと斜に構えた点検役のほうに回って代案を出すことに徹してもらう。値千金の一言を言ってもらう意味では、会議でみんなが気づかない反対案を出すことに徹してもらうことであればいいと思います。
しかし、ただ反対意見を言うだけでは、生産性も発展性もありません。そういう人を「黒悪魔」とすれば、30代には「白悪魔」になれと言っています。反対のあとに「こうすればもっと良くなる」と、対案を提案するのが「白悪魔」。だから30代には「白悪魔」になれ、と言っています。

迷える40代がすべきこと

――いまの40代は就職氷河期、不況の20年を経験してきた世代ですね。
40代は一番悩んでいる世代かと思います。現場でプレイヤーとして働いてきた人が、いきなり「会議を引っ張ってください」と言われて、すごく悩みのゾーンが多い印象を受けます。受講者と触れ合ったり、アンケートを見たりして、年代別に精査すると、40代はそういう傾向があります。
40代は「会議を使って、問題解決をしてほしい。部門のメンバーのモチベーションを上げて引っ張ってほしい」という役割を負わされる世代です。これまで文句を言うばかりだったのに、会議でいざ議長などを任されると、やり方もわからない。自分がかつて言っていた文句やグチが、直接、いま自分に突き刺さっている状況に立っている。
40代に求められる役割はファシリテーションだと考えます。また経験やスキル的にファシリテーションがもっともうまくやれる世代とも言えます。具体的には「思考拡大」「議論整理」「方向修正」「進行修正」が、ファシリテーターの押さえておくべきポイントです。また、それぞれのポイントで「質問→助言→評価→指示」をしていきます。
出展:横田伊佐男(2018)『ムダゼロ会議術』(日経BP社)
会議は、文化や流行など価値観が違う世代が、1つの部屋の中で同じ結論に向かっていかなければいけません。40代の人は、その価値観が違う世代の人たちから意見を聞き出して、1つのゴールに向かっていかなければいけない。なかなか大変なことですが、それは40代だからこそできることでもあるのです。

50代はプレイヤーではなく、ティーチャーであれ

――50代は「俺まだ現役いけるぜ」と思いたいものですが、それは難しいですか。
50代以上は、プレイヤーよりティーチャー(先生)という立場がいいと思います。最近のスタートアップのIT企業などは、入社する前のインターン生に研修で気軽に“社長体験”とかをさせる。それは経験というより、感度が高い世代に任せたらどうなるか、という発想です。それも時代に合ったやり方だと思います。50代が20代と情報感度の高さを競っても、非効率ですから。
一方で、私が調べたところ、たとえばノーベル賞受賞者というのは、50代以下はほとんどいない。受賞者は、おじいちゃんばかりですよ。これは長い時間をかけて研究して実績を積んで、年齢を重ねていった人にしか見つけられない領域があるからだと思います。もちろん誰しもそうなれ、というのは難しいですが、経験に裏打ちされた役割というものがあるのです。
「これはあの人に聞かなきゃわからない」という、時間の経験を武器にできることを極め続けるのが、50代への大きなメッセージになるような感じがします。

会議で口数少ない人の価値を上げる方法

――会議では、とかく声が大きい人の意見が通ったり、評価されたりすることが多いと思います。
自分はおとなしくて声が小さいというだけで、評価されないと悩む必要はないと思います。自分の役割はメンバーによって決まってくると思うんです。議長が声の大きい威勢のいいおじさんだったら、声の大きさでは勝てないでしょう。自分のタイプを知り、どういう貢献をしたいかを見極めてキャラクター作りをすればいいのではないでしょうか。会議の中で、自分が貢献できるポジションと役割を見つけていくことが重要かと思います。
まず、おしゃべりが苦手な人に「口数を多くせよ」というのは、その人のパーソナリティを考えたら非常に難しいんです。だから、「口数は少なくていいから最後に一言かませ」と役割を絞ります。会議で内容が決まりかけたものの、対局に視点を置いて、そこから「何か物申すことにチャレンジせよ」とするんです。これもなかなか難しいですが、「口数を多くせよ」というより、やさしいことかと思います。
――「何でもいいからもう少し発言してよ」じゃなくて、「最後に必ず対案を1個出して」と。
まったく逆の立ち位置から意見をするようなカタチを求めるんです。ボクシングでみんながジャブとストレートで攻め続けるところを、カウンターの一発を狙うことを心掛ける。そのためには高い問題意識がないとできない。「賛成ということになったけど、反対意見として何かないか?」と発言を求めていくんです。
「60分のうち59分はしゃべらなくてもいい。決まりかけたことと真逆の視点から、質問や発言をしてほしい。それがあなたの役割だ」と、予め仕込んでおく。最後にその人が発言できるような場を用意してあげる。そうすると、最後まで、ドキドキしながらも準備はすると思うんです。それが野球でいうバントでも結構コツンと当たり始めたりすると、そのポジションに慣れたトークができてくるんじゃないかと思います。
――うまくいけば、バントや代走のプロのように、出番が来たときに周りの期待も高まりそうですね。
「その観点で来たか」と。「あの人を入れておけば、点検役として見てくれる」という立ち位置になるといいですね。物静かで発言をあまりしない人の価値が、すごく出てくると思います。

会議室選びは、デートスポット選びと同じ

――会議室はどんな環境が理想的だと考えますか。
場所の影響はすごく大きいと思っています。最近は立って会議をする、スタンディング会議が増えていますね。機動力が求められている時代に、5分でも10分でも、バーのカウンターみたいなところで立ち話ができるスペースは求められていると思います。場所の制約を設けずに話せるスペースができると、会議室が取れないとか、会議室を予約するのに手間暇かけるといったムダも省けていくと思います。
あと、いつも同じ会議室だと、ふだんの思考がこびりついていたりするので、場所を変えていくこともいいと思います。自社以外の環境がいい会議室を利用するのもいいですね。ホワイトボードが多い、もしくは壁全面が書けるようになっているとか。場所も会社から離れて、海が見えるところとか。目的に応じて使い分けていくといいと思います。
重要なのは目的に応じた会議室になっているかどうか。たとえば、つき合いはじめたばかりの初デートでおしゃれな雰囲気にしたいのか、プロポーズをする厳かな雰囲気にしたいのか。その目的によって、選ぶお店も違ってきますよね。そうやって目的によって会議の場を使い分けることがいいのではないでしょうか。
TPOで着替えていくようなカタチで会議室を使うのが、いまのやり方かと思います。時間がもったいないからといって、会社に一番近い会議室だけにこだわるのは、もったいないと思います。

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

横田 伊佐男(よこた いさお)CRMダイレクト株式会社
プロフェッショナル・マーケティングコーチ。横浜国立大学客員講師、早稲田大学オープンカレッジ講師、日経ビジネス課長塾講師。横浜国立大学大学院博士課程前期経営学(MBA)修了及び同大学院統合的海洋管理学修了。外資系金融機関を経て、2008年に独立。人が動く戦略は「紙1枚」にまとまっているという法則を発見し、マーケティングのオリジナル教育メソッドを体系化。主な著書に『マーケティングコーチ横田伊佐男の特濃会議学』『ムダゼロ会議術』(共に日経BP社)、『最強のコピーライティングバイブル』(ダイヤモンド社) 、『一流の人はなぜ、A3ノートを使うのか?』(学研パブリッシング)など多数。

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