会議は会議室でする、という考えはもう古い【スマート会議術第36回】

会議は会議室でする、という考えはもう古い【スマート会議術第36回】日本スチールケース代表取締役社長 大野 計一 氏(左) ワークプレイスソリューションズ 代表取締役社長 越田 壮一郎 氏(右)

1912年創業の世界最大手の老舗オフィス家具メーカー、スチールケース。オフィスでの人の働き方を観察、理解、開発、製品化していくことを企業理念として、世界を視野に成長してきたグローバル企業である。

国、世代、業種、思考、文化、働き方、オフィス環境まで、徹底したリサーチを元に商品開発とオフィス設計を手がける。大学や研究機関と協働でリサーチを軸とした商品開発をするオフィス家具メーカーは、世界でも稀な存在だ。

約1世紀にわたり世界のグローバル企業の働き方を見てきたスチールケースが考えるオフィス改革のあり方とは?

日本スチールケース代表取締役社長の大野計一氏と、販売代理店のワークプレイスソリューションズ代表取締役社長の越田壮一郎氏にお話を伺った。

目次

活性化させるために、「動きやすい」というのが必要。

――理想的な会議室に求められる設備や機能があれば、お教えください。
越田:会議室全般に言えることですが、特に外部スタッフや他部署との横断的なコラボレーションプロジェクトだと、活気のある会議は人が動くんですよ。会議はふつう席が決まっていてじっと座っていますよね。でもコラボレーションになると、もう少し流動的なもので、前に出て話したり、ホワイトボードに書いたり、歩きながら考えたり、いろいろな動きがあります。本来、どんな会議でも活性化させるために、「動きやすい」というのが必要だと思います。動きやすくすると、会議はポジティブになってきます。ネガティブをゼロにするだけでなく、ゼロをプラスに変えていくという考え方をします。
たとえば、会議室のデスクは、ふつうは四脚ですよね。これを一脚にするのもネガティブをプラスに変えた一例です。製造という意味では、四脚のほうが安く作れるし、作りやすい。でも、一脚にしたほうが確実に動きやすいんです。デスクに多少投資しても満足度が上がって、そこからいいアイデアが出たら、投資分などあっという間に回収できるわけです。
大野:仕事の満足度が上がれば、最終的に生産性が上がると考えています。使いやすい、打ち合わせしやすい、情報が入手しやすい、すぐ連絡が取れる、というようなことがあると満足度が上がって、ポジティブになると思うんです。

カフェはみんなが集まるから、そこで打ち合わせをしてもいい。

――会議室が足りなくて、会議のスケジュール調整に苦労することもよく耳にします。
大野:たとえば社内にカフェがあるとします。カフェはみんなが集まる場だから、そこで打ち合わせをしてもいいわけです。そうするとカフェで打ち合わせをやりやすくしましょう、という考えも出てきます。ここで一緒に打ち合わせもできる。食事するときだけじゃなくていい。会議室よりもっと居心地のいい環境を求める人もいるでしょう。あるいはディスプレイが置いてあるとか。ランチ以外の時間にここでディスプレイにつなげて会議ができる、としてもいいんです。打ち合わせ場所を使うために、そこがいま空いているかどうか、スマホですぐにチェックできるようにするとか。
――そのためにはIT設備の充実も重要になってきますね。
大野:そうですね。インタラクティブボードみたいな電子機器をうまく使うと、より便利ですよね。
越田:たとえばスチールケースでは、マイクロソフトのSurface Hubを使っていますが、米国でやっている会議のホワイトボードの画像が出てきて、そこに私たちが書き込むこともできます。これはちょっと新しいタイプの会議室の形ではないかと思います。ただ問題は、せっかくの新しいテクノロジーも適正な環境の下で利用しないと、まったく機能しないのです。それでスチールケースとマイクロソフトがパートナーシップを組んで、クリエイティブオフィスという形で共同研究し、環境とテクノロジーの融合したソリューションを提案しています。
大野:その使い方をみんながわかっていて、社員みんながさっと簡単に使えることが絶対条件ですね。意見をすぐ絵で見せたり、ワイヤレスですぐ映せたりというように、テクノロジーと環境がうまく融合して、アジャイルオフィスを実現することが、これからのスマートな会議のあり方かもしれませんね。
――昔は会議室ありきの会議だったのが、いまはそれだけでは時代遅れになりそうですね。
大野:「会議室」じゃないんですよね。「会議室」と言ってしまうと、すごく狭い意味に限定されてしまう。会議室の予約に時間がかかっていたら、いまの早い流れに置いていかれてしまいます。
――会社にいる間、いつでもどこでも会議ができる、すぐできるような状態が理想なのですね。
大野:いわゆるデスクという、固定された場所で仕事をする必要すらないんです。1日中どこにいてもいいんです。結果的に打ち合わせをする場所があればいい。会社ってどうしても定義づけしたくなっちゃうんですよね。ここが仕事場、ここが打ち合わせ場所、ここが会議室。打ち合わせはパーティションで仕切られて、会議室はドアが閉まっている、と無理やり作っちゃっていますよね。でもそんな固定概念に縛られる必要なんてないんです。

物理的な共有するオフィスはあったほうがいい

――最近増えているシェアオフィスやサテライトオフィスについては、どのように考えていますか。
大野:二極化していきそうな気がしますね。会社への帰属意識を高めようというエンゲージメントが重視される反面、いまは仕事がほとんどプロジェクトベースになっている。比較的ルーティンな仕事をする人と、プロジェクトベースでどんどんアサインされていく人の二極化が進んできています。そうするとエンゲージメントの時代から、アライアンスを組むような時代に変わっていくのではないかなと思っています。
毎日会社に出勤しなくても、あるいは会社を辞めたとしても、ちゃんとアライアンスを組んでおけば、プロジェクトが発生したとき、そこにその人を呼んでプロジェクトを遂行していく。それが終われば、またそれぞれ散っていく。エンゲージメントという部分とアライアンスというプロジェクトベースに、二極化していく気がしています。エンゲージメントとアライアンスのバランスを考えると、いずれにしても物理的な共有するオフィスはあったほうがいいとは思います。
ビデオチャットやバーチャル会議だけで成り立つのか。物理的なスペースに対して、どこかでテクノロジーが追い越してくれるかもしれないですが、いまのテクノロジーは、まだ追い越せていないと思うんです。日本の場合は、特に人事上の問題もあるから、オフィスという場がきっちりあったほうが逆にスムーズなんじゃないのかなって思います。
【デュオ・スタジオ】
ペアでの共創ワークや1人または一緒に作業を反復するための共有スペース。2人での作業(並んで、対面しながら)のためのスペース。身体を動かすためにさまざまな姿勢が取れる選択肢を提供。
【チーム・スタジオ】
動きやすいようにした一脚のテーブルと台形テーブルが特徴。テーブルに対して座ったままで人が動ける。台形テーブルにすることよって、会議の出席者からもテレビ会議の相手からも、お互いが見やすくなっている。また台形テーブルの中央が空いているためプレゼンテーションを行う人が立って話すスペースができる。椅子はハイスツールを配置することで立ち上がりやすくなっている。壁全面のホワイトボードは薄く絵柄模様が入っており、無機質な雰囲気を解消している。会議室を囲むガラスは透明で中が見えるがTVモニターの画面だけが見えない仕様になっている。
【レスバイト・ルーム】
電源もLANもなく、リラックスしたり、集中力が切れたときに気分転換を図る。自宅のリビングルールのように低い目線でくつろぐ空間を演出している。
【フォーカス・スタジオ】
Steelcase
1912年アメリカ・グランドラピッツに設立されたスチールケース社は、欧米で圧倒的シェアを誇る世界最大のオフィス家具メーカーです。
https://www.steelcase.com/asia-ja/

ワークプレイス ソリューションズ
WSIはワークプレイスのプロフェッショナルとして、世界中から優れたコンセプトや家具を提供しています。
https://www.wsi.jp/

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

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