リハーサルのないセミナーはすべてが台無しになる【スマート会議術第28回】

リハーサルのないセミナーはすべてが台無しになる【スマート会議術第28回】株式会社ローズ・ウェッジ 代表取締役 うえたさより 氏

色彩学と心理学を使った集客の心理的アプローチを提唱し、「集客のプロ」と経営者から呼ばれている株式会社ローズ・ウェッジ代表取締役・うえたさより氏。

全国の中小企業を中心に、コンサルタントとして集客技術を指導。同時に商工会議所の招聘など、心科学性のある売り方を取り入れたセミナーも好評を博している。最近は、人口減少に伴い、男性主体のお店の「女性客や高齢者についての対応策」など、その活動の領域を広げ、流動人口が減少する地域からも注目されている。

今回は、地方でのセミナー活動から見えてくる企業の問題意識をはじめ、セミナー主催者側の課題や改善点などについてお話を伺った。

目次

危機的状況を体験した人ほど、心理学的アプローチに理解が深い

――うえたさんは全国でセミナーを開催されていますが、どんな基準で選んでいるのでしょうか。
セミナーはだいたい商工会議所さんの経済団体からお声がけいただいています。特に仙台では結構名前は売っているんです(笑)。冊子にコラムを書いたりもしているので。あと新潟、関西、九州といろいろですね。
――地方によっての特徴はありますか。
一番私が驚いたのは、仙台市ですね。東日本大震災があったあとにいただいた話なんですが、危機的な意識を持っている人は鋭いんだなって驚きました。というのも、私の仕事は色を使っていますが、誤解も多く説明するのが結構難しいんです。デザインのカラーコーディネートの仕事だと勘違いされやすい。でも仙台のお客さんはだいたい私の本を読んで来てくれているんです。そのときは印刷会社で、ブランド戦略推進の委員会を立ち上げていたんです。でもそのブランド戦略だけでは売れないということで、私に声をかけていただいた。
心理的アプローチとか科学性のある売り方というのを気づいてくださった。それって他の県ではなかなかないんです。気づき方が違う。あとは熊本県の益城町という熊本地震の被災地もそうでした。熊本の方も色彩心理を使ってマーケティングや経営に生かしていることを理解してくださっている。説明にお伺いする前から理解してくれていることに驚きました。
――本を読まれたからということではなくて?
本を読んでも理解されていない方は多いんですよ。カラーコーディネートの話だろうっていう経営者の方も多いんです。ところが色彩心理を上手く活用して、経営者もそこにお客さんの反応を見て無意識というものを理解されている。お客さんの心理を掴むということをわかっているんですよね。
――なぜだと思われますか。
危機的な状況が大きいから、他の都市の方に比べて意識が高いからでしょうか。そういった困難な状況にいる方は洞察力も鋭くなるのかなと思っています。確かに私が指導した方はその後、洞察力が鋭くなって、割合ビジネス展開がしやすいようにはなるんです。色を使って鋭くはなるのですが、彼らは危機的状況の中でそれが必要なんだと身体で体感しているのかなと思いました。自分たちに足りない能力があって、これを学ばなければまずいんじゃないかって。普通にブランド戦略をしていても売れないと気づいたんじゃないかなと思います。
――危機感の本気度が違う?
多分普通に暮らしている人にはわからない動物的な本能、生死がかかっているという、察知能力も鋭くなっているのかなという気がします。だから私の本を普通に読んだら、カラーコーディネートとしか理解しないところを上手く理解してくれている。アンテナとアンテナの周波数がピッと合ったように来られたのはびっくりしましたね。それが仙台市だけかなと思っていたら、岩手県の大船渡市からも依頼がありましたし、この後、熊本でもそうでしたから、人間の能力ってすごいんだなって思いました。
――そういう崖っぷちにあるお客さんが多いんですね。
そうですね(笑)。藁にもすがるという感じで、色にもすがるという感じです。最近はそういうことがわかって本当に面白いなと思いました。コンサルティングの営業を兼ねたセミナーのお話は商工会議所さんがオファーしてくれるのですが、集まるのはだいたい宣伝部の方や若手の経営者の方ですね。その彼らがリストを見たり、ホームページを見たり、本を読んだりして、私のセミナーを受けたいっていうことで商工会議所さんに依頼が来るみたいです。

セミナー参加費が安いと、意識の低いオーディエンスになってしまう

――どのくらいの規模のセミナーが多いですか。
セミナーと言いながら20~30人かなと思っていたら、200人ぐらい呼んでくれることが多いですね。地方都市なので、こういう講師は珍しいですよと言って呼んでくださるんです。
――毎回「こういう話をしてください」というお題はあるのですか。
セミナーでは自分の言いたいことを話すだけですね。自分のコンサルティングテーマがありますので。心理的アプローチの初回に色を使ってというのがあるんですが、皆さんそれを望まれていますね。セミナー時間は、商工会議所さんは原則120分です。途中で1回休みを入れています。でも120分はダラダラするので90分ぐらいが一番いいかなと思いますね。
――今後、セミナーでさらにやっていきたいという具体的な構想はありますか。
成果がすごく出やすいので、それをもっと知ってもらいたいと考えています。今は商工会議所さんからのオファーがメインですが、受講料が500円~1000円なので、どうしてもオーディエンスの意識が低くなりがちなんですよね。たいした話じゃないなみたいな感じで。だから、呼ばれたときだけでなく、自分で高額セミナーを発信していかなきゃいけないなと思っています。
――セミナーで、そういう意識が低いオーディエンスを飽きさせない工夫があればお教えください。
PowerPointを使っているんですが、やはり画像は多く見せるようにはしていますね、視覚的に楽しくして眠らせないように。あとレジメの中に書いてもらうスペースがあるんですが、ちょっと時間を取ってそこに自分のお店は今どうなのか考えてみてくださいって書いてもらうとか。私が一方的に話すよりも、自分たちでちょっと手を動かしてもらうとか、赤色の話をするときに赤が好きなに挙手してもらって、その理由を聞くとか。そういうことはしています。
――オーディエンスの数によってやり方を変えることはありますか。
セミナーは少なくてもいつも30人はいます。基本は人数によって変えないようにはしています。コンサルティングの内容をセット売りにしているので、その内容に沿ったメニューにしています。セミナー内容は基本一つですね。その一つを売るために3回やりますって宣伝して売るっていう感じですね。

セミナーでは最前列は埋めてほしい

――いろいろな会場でセミナーをされていて、設備について気になることはありますか。
やはり会場によって、マイクが良いところと悪いところがあるんですよ。自分の声が前に飛んでないような、声がこもって頭の辺りで自分が説明しているのかなというところはあります。マイク自体の品質で全然違っていて、前にポンと声が飛ぶようなところもあれば、自分の周辺でしか聞こえないようなときがあったりとか。聞こえているのかどうなのか、あまりよくわからないような。自分の声が本当に届いているのかなっていうのは困りますよね。
早めに会場入りして、マイクのテストをして、それからPowerPointでスクリーンに映るかどうか確認します。特にスクリリーンの投影で発色が悪いと台無しになるので。色について説明しているのに、色が全然出なかったときもあったんですよ。準備してほしいものは念のため必ず言っていますね。自分のパソコンはMacですとか。アダプタは自分で用意すべきかどうかとか。そういう基本的なことは伝えています。最近は私の写真をどこまで使用できるのか、肖像権について先方さんが言ってくることもあります。そういう肖像権、著作権周りの契約も厳しくなってきていますね。撮影した写真は外部に出さないように、録音の無断使用はできませんとか。
――セミナーがやりづらかったという苦い経験はありますか。
一番大変だったのは、そんなに大きな会場ではなかったんですが、前列からつめていなくて、前の5列が全部空いていたときですね。壇上があって見下ろす感じであればまだいいのですが、一番前に座る方がもう10メートルくらい離れている。アイコンタクトも取れないじゃないですか。わかりましたか?と言っても反応がないし。必要以上に空いていて後ろのほうから埋まっているのは、きついですよね。主催者の方には、ちゃんと前のほうから座っていただくように誘導してほしいですね。前列にいたら当てるとわけでもないし。それなのに当てられては困るという感じで、後ろのほうに座っている方が多いと萎えますね。
――どういう主催者だと起こるんでしょうか。
そういうときはだいたい若手の男性の担当者が多いですね。経験がなく初めて仰せつかりましたみたいな反応で。私も何を用意すればいいでしょうかとか、事前にメールで丁寧に確認するのですが、最後の詰めが甘い(笑)。少なくとも段取りをちゃんとリハーサルする時間はいただきたいですね。リハーサルなしで、どのタイミングで登壇して、降りればいいかがわからないということはありましたね。
その点、大手企業はやはり慣れていてきちんとしています。リハーサルから段取りがしっかりしています。マイクテストをして、照明もチェックされる。カメラ位置はどうですかと、実際に映るかどうかのテストしてって感じで。キュー出しでも、このタイミングでやりますとか、タイムキープはここを見てくださいとか。キューを出して、終了もこの人が合図を送りますからとか。退場するときの流れも、担当者が誘導しますみたいな感じで。そういう段取りがきちんとされますね。
それが大手でも地方都市の支店になると、そういうリハーサルがないんですよ。いきなりここに座ってくださいみたいな感じです。でもリハーサをしていないから、何をすればいいのかわからない。そういうところのセミナーってだいたい上の偉い方の挨拶が最初に出てくるんですよ。それが意図もわからなければ、時間もよくわからない。私はいつ出ればいいの?みたいな。それで困ったことはありましたね。やっぱりリハーサルをしてほしいですね。軽くでもいいですから。都内の大手企業は代理店さんが入っていることもあって、やっぱりそつなく進めてくれます。

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

うえたさより(うえた さより)株式会社ローズ・ウェッジ
マーケティングにおける「色」がもつ心理的な効果の影響を、20年以上にわたって追求してきたカラーマーケティングの第一人者。特に人口が減少する地方において女性客を増やすマーケティングが得意。著書に『たった1秒の「イメージ色」で行列店に変わる』 (経済界刊)がある。講演テーマは「お客さまがどっと増える!劇的に変わる『集客』のアプローチ」 など。

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