未来を見ていない人ほど、人の揚げ足を取る【スマート会議術第27回】

未来を見ていない人ほど、人の揚げ足を取る【スマート会議術第27回】株式会社ローズ・ウェッジ 代表取締役 うえたさより 氏

色彩学と心理学を使った集客の心理的アプローチを提唱し、「集客のプロ」と経営者から呼ばれている株式会社ローズ・ウェッジ代表取締役・うえたさより氏。

全国の中小企業を中心に、コンサルタントとして集客技術を指導。同時に商工会議所の招聘など、科学性のある売り方を取り入れたセミナーも好評を博している。最近は、消費税増税の転嫁対策、人口減少の地域や被災地、新幹線開通など、流動人口が減少する地域からも注目されている。

今回は、心理的アプローチから日本が抱える会議の問題点と改善策についてうえた氏にお話を伺った。

目次

色と心理学で集客戦略を提案

――ローズ・ウェッジでの事業内容についてお教えください。
経営者のための会社の競争力を高める集客戦略というコンサルティングを主軸として、コンサルの他にセミナー、講演、執筆をしています。
――具体的には、どんな相談が多いのでしょうか。
かつては建設会社や住宅販売の会社が多かったですね。家を販売するのにこれまでの考えでは売れないと考える経営者や幹部の方が、違った視点の意見がほしいというご相談をいただきます。
――建設業界が多かったというのは、色彩や心理学をやられていたからですか。
そうですね。色彩とか心理学を使ったコンサルティングをしていたから目をつけていただいたという感じです。
――具体的にどういうところを軸に、お話をされるのですか。
集客戦略です。モデルハウスの見学会や、チラシを配布したときのお客さんの反応などから集客方法についてアドバイスをします。お客さんは主に経営陣の方々なので、思考や考え方を軸に戦略全般を一緒に考えます。ただチラシの見せ方や展示の仕方といった戦術ではなく、戦略を含めて販売することはどういうことなのか、考え方を伝えるようにしています。
たとえば6回シリーズのメニューでしたら、最初の1時間は思考や考え方を伝える。その後、現場に行って、具体的にここができていないとか、心理的アプローチにおいて、科学性が足りないとか、そういったことをアドバイスしています。

会議を妨げる木を見て森を見ない保守派

――色や心理学という観点からレクチャーされるのですか。
まず私が訪問して行われる会議は、だいたい事業部長や経営者が参加されます。どちらかというと経営の学びを深める内容を1時間やって、あとは具体的な戦術についてお伝えしている感じですね。色の話をすると、例としてわかりやすいので、つかみとして色から入ります。でも色を使う話は初回だけで、どちらかと言えば心理的アプローチが中心になります。色にはデザイン性と色彩心理というものがあります。人間の内面がわかる色があるんです。お客さんの心理を捕まえるための心理学として、色を使っています。
――お客さんと会議をしていて感じる会議の傾向、特徴、課題はありますか。
私自身は外資系企業にしか勤めたことがないのですが、日本の会社がどういうものか、今の仕事をして初めてわかったくらいなんです。
――どう違うのですか。
お客さんのコンサルティングをしていると、必ず足を引っ張る人がいらっしゃるんですよ(笑)。びっくりするのですが、経営陣の中に揚げ足をとりたがる人が必ずいらっしゃるんです。私がやっている6回のシリーズでも「みんなで業績を上げていきましょう」って言うと、一字一句否定的なことをおっしゃる人がいるんですよね。
――なぜでしょうか。
木を見過ぎていて森を見てないんです。長期的ビジョンに立って会社の将来を見ていない。過去しか見ていない。目の前しか見ていない。新しいことをやって失敗したくないから、これまでやってきた無難な方法しかとらないんです。今問題があるから、私が入っているのに、その問題点を見ないで、目の前にいる私を見ている。最初の頃は、そういう後ろ向きな方に対してどう説明すればいいのか葛藤がありました。
――これまで自分たちでうまくやってきたのに、外野がヘタにかき回すなという気持ちなのでしょうか。
長期的に見られなくて短期的に見る人、もしくは過去のやり方を変えたくない人。問題があるから変えようとしているのに、自分を守りたい一心なのか、変革を恐れている。ですから一字一句、「これはやる意味がどこにあるのか」と聞いてきて、実施した場合の不安点・懸念点ばかり言う。森全体が危機にあって、森を救おうとしているのに、その中の1本の木の枝葉について、その枝葉まだ枯れていないのにとか、木を切ったらダメだとか、まだ元気なのになんで薬を撒く必要があるのかとか、そういう感じですね。腐ったリンゴはすぐ取り除かないと他のリンゴも腐ってしまうのに、まだ食べられるところがあるだろ、もったいない、と言っているような…。
外資系企業ではあまり見られないですね。外資はトップダウンですし、スピードも速いですから、そのスピードについていくのに必死です。日本の企業の場合は「ちょっと待った」という方が必ずいらっしゃる。
――お役所のやり方ですよね。前例に従って正しいことをきちんと丁寧にこなしてくっていう。
特に年配の方は、自分が勤めている間は変わってもらっては困る。自分が引退してから変わるのは構わないという感じですね。
――それはどうやって説得していくのですか。
社長さんに個別に時間をいただいて、「もう少し前向きになっていただきたい」って相談します。でも、たいてい「あいつは、ああいう性格だから仕方ない」と。でもそこは社内の問題なので、トップから言ってくれないと厳しいですよね。なかなか進められず時間ももったいない。やはりそれはトップの方からお伝えしてくださいっていうことになります。まあ、少しずつ時間をかけてやんわりと言っていただきますが。
――それは性格というよりも、仕事に対する考え方の問題ですよね。
そうですね。会社が性格の問題にしている時点でヤバくないですか? 性格で片づけてはダメですよ。私がアドバイザーとして入ってくることによって、自分のポジションを取られるという方もいらっしゃるんです。マーケティング担当や事業部長のレベルだと、仕事を取られちゃうと思って、「ひょっとしたらこの人が成績を上げるとずっと居座るのかな」って。で、気がつけば自分のポジションが奪われるのではないかとすごく警戒をされるんです。

結果が出れば会議も変わる

――会議で揚げ足を取る保守派の方は、コンサルティングが終わる頃には何か変わりますか。
保守派や反乱分子の方は、最終的に結果が出たら納得して変わりますね。結果を出すと会社の中も変わるんです。「俺たちできるんだ」みたいな空気が漂って、ガンガン店舗を増やしていったり、新しい市場に進出していったり動きが派手になりますね。
――先ほどおっしゃっていた粗探しみたいな、問題点を指摘するのは一番簡単ですよね。
揚げ足取りは発展性がないんです。代案が常にセットならいいのですが。 粗探しした人は、「俺ってみんなと違う意見を言ってる、すごいだろ」とドヤ顔になっちゃう。他の社員もそういう会議しか経験したことがないので、それが正しいと思ってしまうんです。当たり前になっているので、突いてくるポイントがズレているんですよ(笑)。その辺りもコンサルティングの中で軌道修正はしていきます。思考、考え方の中で「こういう風に目を向けてください」とか、お伝えしています。多少時間はかかっても、少しずつ理解をしていってもらう感じです。
――その保守的な人も、ガラッと変わっていくことはありますか。
そうですね。1、2回ぐらいで割合早めに成果が出ると、やはり熱心さが変わりますね。「この人は信頼できる」という目で見てくれるようになります。あと、その改革を引っ張ってきた人たちも生き生きとして活発に動いてくれるようになります。それまで揚げ足取りをしていた人も、その流れに乗らないと自分が取り残されてしまいますからね。
――そうなると会議も活性化しそうな気がします。
そうですね。私と契約が終わっていなくても、会議をすごく大事にされるようになってきます。彼らが大事だと思う瞬間が来るんです。成果を出すためには会議でとことん話し合っていくべきだと。
――どこに重要性を見出していると思いますか。
事業の躍進の原動力になるというか、問題点の本質をきちんと話し合う空気になるんだと思います。やっぱり役員レベルの方たちですからわかりますよね。問題の本質をきちんと話し合おうとなります。
――ある程度筋道を作ると、自分たちでそこからいろいろ工夫するようになるんですね。
そうですね。最初から理屈で、「これは問題を棚卸して、こう改善していきます」と言っても、文字通りにはやってくれないんです。実際に自分たちで会議をして体感しないと身につかないと思います。

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

うえたさより(うえた さより)株式会社ローズ・ウェッジ
マーケティングにおける「色」がもつ心理的な効果の影響を、20年以上にわたって追求してきたカラーマーケティングの第一人者。特に人口が減少する地方において女性客を増やすマーケティングが得意。著書に『たった1秒の「イメージ色」で行列店に変わる』 (経済界刊)がある。講演テーマは「お客さまがどっと増える!劇的に変わる『集客』のアプローチ」 など。

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