全裸でうろうろしていたら、全部監視カメラで撮られていたんですよね。【スマート会議術第25回】

全裸でうろうろしていたら、全部監視カメラで撮られていたんですよね。【スマート会議術第25回】株式会社バーグハンバーグバーグ 代表取締役 シモダテツヤ 氏

「それバズるの?」。今や多くの企業のWeb担当者が口を揃えて言う。その潮流の源泉が株式会社バーグハンバーグバーグだ。Web業界において、面白コンテンツをつくらせたら右に出る者はいないーーそれに異論を唱える者はいないだろう。

“日本一ふざけた会社”との異名をもち、面白系Webマガジン『オモコロ』や地元メディア『ジモコロ』を運営。「分かりすぎて困る!頭の悪い人向けの保険入門」や「インド人完全無視カレー」など、次々とユニークなプロモーションを打ち出し、常にWeb業界を騒がせてきたシモダ氏。

はたして、彼らの「面白いアイデア」は、どんな会議を通して生まれるのか? 企画会議のプロ中のプロ、シモダテツヤ氏に、同社の企業秘密である会議の裏側について伺った。

目次

遊び感覚だったのが、だんだん本当の仕事に変わってきたんです。

――バーグハンバーグバーグの設立の経緯をお教えください。
ぼくがまだ前職にいたときに会社のサーバを借りて『オモコロ』というWebメディアを始めたのがきっかけです。ちょっと人に笑ってもらえるような文章を書いていた人たちの集まりだったんです。でも、みんな就職すると辞めていくんですね。なくなっていく文化が悲しいなあと。この人たちの才能を生かさないのは、すごくもったいないなあと。
――ビジネスとして続けようとしたのですか?
最初はそこまでは考えていませんでした。ずっと続けているうちに仕事が来るようになって、やってるうちに仲間も結構増えてきまして。
ただ面白いからって、遊びみたいな感覚だったのが、だんだん本当の仕事に変わってきて。5年目ぐらいのときに、この先はもう会社をつくるしかないかなあと思って。
――それで起業されたと。
そうですね。会社をつくる1年ぐらい前にコアメンバーだけ集めて、いきなり全員は雇えないかもしれないけど、来年1人か2人、会社つくったときに入れるからって。
そのとき入社できなかったとしても諦めずに翌年、翌々年に入るという気持ちがある人は、来週もこのサイゼリアに集まってください、解散! って言ったら翌週みんな来てくれたんです。そんな流れで最終的に起業しました。

会議室では、わりと全裸でうろうろしていました。

――サイゼリアが最初の会議室だったんですね。
昔はそういう感じでしたね。『オモコロ』の頃は、毎週土曜日はサイゼリアや喫茶店に集まってずっと会議している感じでした。
――それは会議をするオフィスがなかったから?
そうですね、まさに。最初は、前職の会社があったセルリアンタワーの会議室を使ってたんです。でもグループ企業だったので、会議室がグループ全体で共有だったんです。土日で誰もいないだろうと、わりと全裸でうろうろしていたら、全部監視カメラで撮られていたんですよね。「セキュリティーどうなってるんだ!」ってちょっと問題になって。そういう意味では、セルリアンタワーのセキュリティー意識を高めることに貢献できたと思います。
――全裸になるのは、会議をどう楽しむかという発想からですか。
人数も少なかったし、単純に中学生みたいなノリですね。新しく誰かが入ってくれば、そのうち減っていくのかなと思ったら、逆に増えてしまって。これ、どこかで止めないと、中学生の脳みそのままだなって心配になって、それで女性社員を入れました。昨今、セクハラがいろいろ問題になっていますが、思い返せばうちは早くからセクハラに目をつけて、社員とぼく自身の成長を促していましたね。

「ヘタに面白くないことは言えねえな」という緊張感はありますね。

――バーグハンバーグバーグは、「面白いこと」が生命線ですが、企画会議に特別なやり方はありますか。
会社には最初から面白いなって思う人を入れているのはあります。ある程度ファンがついているスタッフが多いんです。個として名前があるというか、そういう社員が多いですね。
会社をつくって間もない頃は、わりとぼくのアイデアや意見は反映されていたと思います。でも今は本当に平等に、みんなでネタを出し合って、転がしながら、お互いに面白いなと言い合えていると思います。変に妥協もできないというか、自分が面白いと思っている人たちに見張られている感じはあります。「ヘタに面白くないことは言えねえな」という緊張感はありますね。
――イケイケ感より、ピリピリ感が強い?
イケイケ感はあまりないですね。ピリピリ感というか、お互いに「こいつ面白いな」と思っているから、自分も面白いって思われたいという文化があると思います。その緊張感の中で、どうやったら面白い企画が出るかを競う感じですかね。
――企画会議に臨むにあたってルールのようなものはありますか。
企画会議に関しては、全員参加と決めています。デザイナーもプログラマーも参加します。ただ、人が増えてくると、よくしゃべってるヤツらだけで回ってたりすることってあるじゃないですか。だから参加感をつくるために、3チームに分けたりはしていますね。
――一度全員を集めて、その中で分けるということですか。
1カ月に1回、チームをつくります。今回のリーダーはA君、B君、C君。社員の名前のマグネットが並んで、じゃんけんでドラフト会議みたいに1人1人とっていく。リーダーが勝手に自分の好きなチームを組む。それが発表されて、そのチームで1カ月間考える。
今来ている案件をホワイトボードに書き出して、「これが来週までにプレゼン必要だから、これからやっていきましょう」って優先順位をつけて。
――それは全社的にやるんですね。
そうですね。「じゃあまずはA社の企画を考えましょう」と言って、3チームがそれぞれチーム内で考えて、30分経ったら、また同じ場所に集まってプレゼンするんですね。
集合して、その中で10案ぐらいばーっと出て、どれが良かったか、みんなで言い合って票を入れていく流れです。
――全員で投票を?
はい。ただ、票の多さだけで決めていると、どうしても似たり寄ったりな企画になってくるんです。だから、票は一応入れるけど、票が入っていなくても尖っていて面白いと思う企画は、お客さんに持っていく候補に入れたりはしますけどね。

過去に似たものがあったら、すぐ諦める。それが会議のルールですね。

――企画会議はどのぐらいの頻度で行うのですか。
企画会議は週2回で、そのサイクルで何年もやってる感じですね。
――そのスタイルでうまく回っていると。
そうですね。ただ、チームで企画を考えるとデメリットもあります。1人だからこそ生まれるカオスみたいな企画ってあるんですよ。でも、それは票を集めにくい。人に説明するのもすごく時間がかかったりするので。だから、チームを組むと、そういう企画が出にくくなるデメリットはあるかもしれないですね。つくってみてからじゃないとわからないけど、つくってみたらすごい面白いものってあるじゃないですか。でも、すごく説明がしづらいという。
――「面白さ」を判断する基準があったりするのですか。
どれだけいいアイデアが出ても、たまたま過去にどこかで見たネタと被ることがあるんです。だから、絶対に調べるようにします。調べたときに似たような企画が出たら、「あったかー、じゃあ、ナシで」ってボツにしますね。それがやっぱり一番大事なことだと思っています。そこで1回でも言い訳してパクっちゃうと、今までやってきたことが全部壊れてしまうので。
ぼくらも随分パクられてきましたけど、傷つくんですよ、それやられると。悔しいし、ムカつくし。だから、自分たちだけはパクりはやらないと決めています。まず調べて、過去に似たものがあったら、すぐ諦める。それが会議のルールですね。

アイデアが出てこない人は、その代わりに笑ってもらいます。

――企画会議で人数が増えると、発言する人と発言しない人のバラつきが出てきませんか。
あまりしゃべらない子とか、アイデアが出にくい人は、その代わり「笑って」とか、面白くなくてもいいから発言するようには言います。面白くなくても、それがスイッチになって新しいアイデアにつながるかもしれない。何も話さないのは一番参加していないし、罪だと思うので。
――そこで面白くなかったら、っていうプレッシャーも同時にあるんですよね。
あるとは思いますね。あるけど、結局は会議室の会議なんて表に出るものじゃないですからね。アウトプットされるものがすべてなので、最終的に整って面白かったら問題ありません。
――実際に面白くない話が出てきたときは、どういう反応になるんですか。
たぶん、ホワイトボードにも書かれないんじゃないですか。するーっと流れますね。でも結局毎回量は結構出るので、ホワイトボードが埋まるぐらいの中で削っていったりします。
――とにかく数を出して、精査していくと。
わりと最後までチューニングして、納品してリリースされてからも、当たっていようが、当たっていまいが、反省会はしますね。
めちゃくちゃ当たってすごい評判がよかったものも、ホワイトボードに書き出して、「もうちょっとこれできたなあ」とか、みんなで反省会はしますね。ウケなかったものはもちろん、当たっているものを、無理やり粗探しをすることにも意味があると思っているんです。成功体験から学ぶことは多いんです。
――そこからさらに付加価値の高いコンテンツを目指していくわけですね。
そうですね。やっぱり面白いことをやりたくてつくった会社なので。そこが一番満たされるかどうかが大事だと考えています。
――面白さを追求していけば、お金は後からついてくると?
そうなるといいかなあと思いますね。お金とか、落ちてへんかなと思います
けどね(笑)。 

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

シモダ テツヤ(しもだ てつや)株式会社バーグハンバーグバーグ
株式会社バーグハンバーグバーグ代表取締役。『オモコロ』初代編集長。
京都府出身。株式会社GMOペパボに入社した後、2010年バーグハンバーグバーグを設立。同社から生み出されるコンテンツも非常に独創的。「イケてるしヤバい男長島」「インド人完全無視カレー」「グラップラー刃牙×佐賀県」など、世の中にたくさんの話題と斬新なクリエイティブを提供している。会社理念に「がんばるぞ!」、採用基準に「炎の洞窟の奥に住む爆炎の魔神 かつやる気のある人」を掲げるなど、他の企業とは一線を画すユニークな会社である。

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