「コクヨの3ステップ会議術」(中経出版)をはじめ、数々の著書を手掛けてきた下地寛也氏。1992年にコクヨへ入社して以来、オフィスレイアウトや内装デザインを経て、働き方やオフィス環境づくりのコンサルティング、人材育成、研修など、新しい時代の「働き方」をテーマに、仕事に取り組んできました。
3回目となる「スマート会議術」では、ダメな会議の解決法を下地氏に伺いました。
コクヨ株式会社 経営企画室ワークスタイル研究所(兼務)スキルパーク部門シニアトレーナー 下地 寛也氏
目次
ダメな会議の3つのパターンと、3つの解決法
- ――著書で取り上げられていたダメな会議の3パターンについて、改めてお聞かせください。
- さまざまな企業で研修をさせていただくのですが、その際、「皆さんの会社の会議の問題点はなんですか?」と質問をすると、だいたい15個くらいは問題が出てきます。「目的が曖昧」とか「誰が参加するのかわからない」とか「まとまらない」とか…。
それを大きくまとめていくと、「アイディア・意見が出ない」「時間までに結論が出ない」「会議の空気が重苦しい」の3つのパターンに集約されるんですね。
業績のあまり良くない企業はアイディア・意見が出ないケースが多く、これは「シーン会議」と呼んでいますが、静かな会議となる傾向にあります。業績の良い大企業や銀行などにおいては、意見が出るものの時間までに結論が出ない「ダラダラ会議」が多いです。社内に派閥があるような企業では会議の空気が重苦しい「ギスギス会議」になります。
逆に言うと、この3つがコントロールできてさえいれば、会議の問題は大きく改善されるということでもあります。 -
<ダメな会議に多い3つのパターン>
シーン会議 アイディア・意見が出ない
→業績の良くない会社にありがちダラダラ会議 時間までに結論が出ない
→大企業にありがちギスギス会議 会議の空気が重苦しい
→社内に派閥がある会社にありがち
- ――ダメな会議を解決する具体的な方法をお教えください。
- これにも大きく3つの解決法があります。
1つ目は「アイディアマネジメント」です。人に意見を言ってもらうことって難しいですよね。何か意見がないかと聞くと、「俺も今考えてるところ」とか言われることがあるかと思います。ですから、人に意見を出してもらうには、アイディアを生むための切り口を提示する必要があるんです。
「常識にとらわれていないか?」「このアイディアと組み合わせられないか?」という呼び水になるようなヒントを出すことが必要です。 - 2つ目は「タイムマネジメント」です。これには「時間」と「結論」という、2種類の対象をコントロールする意識が必要です。
時間のコントロールをするには、結論にどう着地させるかが重要です。そして、結論の出し方は「多数決」「決裁者が決める」「全員で話し合う」などの方法があります。
ほとんどの会社は、結論の出し方を決めずに「あーでもない、こーでもない」と会議を進めるため、時間がコントロールできないのです。ですから、結論の出し方を最初に決めておくことがとても大切なんです。 - 3つ目は「チームワークマネジメント」です。論理的に考えれば、1つ目の「アイディアマネジメント」と2つ目の「タイムマネジメント」ができていれば、自然と結論が出るはずです。しかし、人間はロボットではないので、心理的なマネジメントをしなくてはなりません。
アイディアを出すのにも「バカにされないだろうか?」といったような心配が生まれたり、それを乗り越えるための勇気が必要だったりするんです。だから、相槌を打って場の空気をなごませる、あるいはだらけないように良い緊張感を生むなどのケアが必要なんです。 - つまり、ファシリテーターには会議を進行させるリーダーやマネージャーといった役割に加えて、ホスピタリティを高めるホストであるという意識が必要です。飲み会で1人ぽつんとしている人がいたら話しかけますよね。そういう考えが会議にも必要ですね。
課題を解決するための「正解」はない
- ――ダメな会議を解決するために、ファシリテーターではない参加者が考えるべきことはありますか?
- 参加者の問題として一番大きいのは、今何を議論しているのかがよくわかっていない場合が多いということです。
- 例えば「残業をどうしたら減らせるか」という会議があるとします。
まずは現状を認識しなくてはいけないのに、「19時に電気を消したらどうですか?」といった解決法の提案がいきなり出たりするんです。本来ならまず、どこの部署に残業が多いのかを確認すべきですよね?何を問われているのかを正しく意識しないといけないんですけど、つい議題を見逃しがちなんです。
ですから、「そもそも議題はなんでしたっけ?」という質問は、積極的に行ってほしいですね。それは、気の利いたことを言うより大事なことです。 - あと、基本的に議題に対する答えというのは、ひとつではないということを意識すべきです。答えの出し方というのは、どちらが正しいとかではなく、たくさんアイディアを出して、実現可能性が高く、効果の高いものを選ぶんです。だから、アイディアは多いほうがいい。選択肢を広げるためにも、突拍子もないと思えることでも言ってほしいですね。そのためには、アイディアの「発散段階」で否定しないというのが大切です。「いいですね」と言うだけで雰囲気は変わりますので、相槌を打つようにすることをおすすめします。
文・写真:坂上春希
- 下地 寛也(しもじ かんや)コクヨ株式会社
- コクヨ株式会社経営企画室。ワークスタイル研究所(兼務)スキルパーク部門、シニアトレーナー。
千葉大学工学部工業意匠学科卒業後、米国のインテリア設計事務所に勤務したのち、コクヨファニチャー株式会社(現在はコクヨ株式会社)に入社。現在は法人顧客やコクヨグループ各企業に対して教育研修などを行っている。著書に「コクヨの1分間プレゼンテーション」「会議がうまくいくたった3つの方法」などがある。
おもな著書
コクヨの3ステップ会議術(中経出版)
コクヨの「3秒で選び、2秒で決める」思考術(中経出版)
コクヨの5ステップかんたんロジカルシンキング(中経出版)