これだけは押さえておきたい!音響、映像、通信など機材関連において知っておくべきこと【成功するイベント・セミナーの作り方 第8回】

これだけは押さえておきたい!音響、映像、通信など機材関連において知っておくべきこと【成功するイベント・セミナーの作り方 第8回】

イベント専門のコンサルティング会社ホットスケープの代表 前野さんに聞く「【初心者必読】成功するイベント・セミナーの作り方」
第8回目のテーマは「機材関連において知っておくべきこと」です。

大きなイベントであれば専門の会社に、内輪の小さなイベントでも詳しい人にお任せすることになる映像や音響などの分野。自身に知識や技術がなければプロに依頼すべきですが、任せっきりで何もわからないというのも考えものです。

そこで今回は、専門知識がなくてもイベント運営者として持っておきたい「視点」をご紹介します。実はこの連載でお話をうかがっている前野さん、社会人としてのデビューは音響技術者でした。
元音響技術者がイベントを運営しようとする皆さまにお伝えしたいこととは一体何なのでしょうか?

目次

音響機材、音響環境について

――専門スタッフが非専門の人間、たとえば運営責任者にも知っていてほしいと思うことは何なのでしょうか?
音に関する難しい知識や専門用語を勉強してほしいなんて思ってはいません。ただ、イベントの目的は何なのか、目的達成のために必要なのはどのような音響なのかということを明確に伝えておくと、専門スタッフも動きやすいと思います。
たとえば、コンサート会場と会議やセミナーをおこなう会場では「よい音」の定義が異なってきますよね。ビジネスの会議やセミナーで優先されるべきは聞きやすさ。音楽ライブのような大音量もカラオケのようなエコーも必要ありません。
――なるほど、それは音響の専門でなくても考えればわかることですね。では、会議やセミナーの場にふさわしい音響かどうか、どのように確認すればいいのでしょうか?
たくさんの人が発言をする会議の場では、長時間聞いていても疲れない音量や響きかどうか、マイクをいくつか使うのであればそれらの音の大きさがそろっているかどうかなどを確認しましょう。また、マイクの本数に過不足はないか、マイクの種類・形状は会議の形式に合ったものか、きちんと検討してください。
セミナーなど聴衆が多い場では、どの席に座っていても登壇者の声や演出の音が心地よく聞こえるかという点もチェックが必要です。後ろに座ると登壇者の声が聞き取りづらいとか、スピーカーに近い席に座ると演出音がうるさいとか、そういったハズレの席を作ってはいけません。
さらに、会議においてもセミナーにおいても忘れてはいけない確認事項は、PCから音を出すかどうかと、録音をするかどうか。それぞれ事前の打ち合わせや機材など準備が必要となるので、早い段階で確認を取っておきましょう。

映像機材、映像環境について

――プロジェクターやモニターなど映像関連の機材も、大きなイベントでは必ずといっていいほど使うものですよね。映像機材について運営責任者に知っておいてほしいこととは何でしょうか?
実は、映像についても音響と同じチェック方法が使えます。どの席に座ってもスクリーンやモニター画面が見やすいかどうか、まずは実際に座って確かめてみましょう。そして、プロジェクターの場合は明るさの確認も重要です。会場の照明、特に天井の照明とのバランスを考慮し、検討してください。
セミナーや会議などでは映像を映し出しながらプレゼンテーションがおこなわれますよね。まず、PCやプロジェクターなど使う機器すべての接続端子の種類を確認しましょう。次に画面の縦と横の比率、アスペクト比にも気を配れるといいですね。せっかくきれいに作り込んだプレゼンテーションが、モニターに映し出すと横が余ってしまい不格好に…なんて失敗を避けるためです。
そして可能であれば、プロジェクターなどとつなぐPCは1台に限定してしまったほうが運営はスムーズです。登壇者ごとにPCをつなぎ替えると、事前の動作チェックや当日のつなぎ替えの時間が大幅に増してしまうからです。プロジェクターとPCは運営側で用意して、登壇者にはUSBメモリだけ持参してもらう、もしくは事前にデータを送ってもらい、使用するPCに用意しておくという方法を取るのがおすすめです。
ポイント
  • 音響や映像については「実際に参加者の席に座って」確認すること。
  • 声が届かない、スクリーンが見えないといったハズレの席を作らないよう、前後左右いろいろな場所に座ってみる。

通信機材、通信環境について

――通信環境といえば…やっぱりWi-Fiなどでしょうか?会場が用意してくれている場合も多いですし、さほど注意すべきこともないような気がするのですが…
イベント運営の初心者だと、そのように考えがちかもしれませんね。しかし、Wi-Fiがある・ない の2種類で環境をとらえてしまうのは危険です。
会場にWi-Fiが用意されている場合は、そのキャパシティを確認しましょう。同時アクセス可能数や通信速度などを問い合わせてみてください。明確な数字で回答が得られればいいのですが、そうでない場合は自前で用意して持ち込むのが無難かもしれません。
――どのくらいのキャパシティがあれば安心なのでしょうか?
必要な通信キャパシティは、以下の要素などを参考に導き出してみましょう。
○受付のレジストレーションでインターネットに接続する機器数
○登壇者や来場者の人数
○テレビ会議や生中継などイベントの内容や演出上、特別に太い回線が必要かどうか
○イベントの内容やタイムスケジュール上、アクセスが集中するタイミングがあるかどうか
これらを洗い出し、会場内のWi-Fiで足りるのか持ち込みが必要なのか検討してみてください。テレビ会議など映像のやり取りをリアルタイムでおこなうときや、どうしても回線落ちを避けなければならないというときには、会場に専用の回線を引くという手もあります。その場合は、会場とも相談しながら専門の業者にお願いするといいでしょう。
ポイント
  • イベントの内容によっては、特別に太い回線が必要だったりアクセスが集中する時間帯があったりすることも。
  • 「会場にWi-Fiが飛んでいるから安心」ではなく、必ずその通信キャパシティを確認すること。

今回は音響・映像・通信の3つの分野について、イベント運営者が持っておくべき視点についてご紹介しました。機材の扱いは専門スタッフにお任せすることになっても、イベント全体のクオリティや満足度に関わる部分はきちんと把握し、専門スタッフから的確な要望や指示を出せるようになるといいですね。

さて次回は、「設営日や当日に会場入りしてから確認したいこと」をテーマにお話ししてもらいます。イベント本番が近づいてきたときに、運営に関わるすべての方々に読んでもらいたい内容です。
どうぞお楽しみに!

取材協力:前野 伸幸(まえの のぶゆき)
株式会社ホットスケープ 代表取締役。
27年前の独立起業当初より、多くの大手企業からのミーティング・インセンティブ・各種セミナー・イベントを直接受注。企画・進行・運営をワンストップで数多く手掛けている。
その一方で、イベント施設・会議施設のコンサルタント・運営でも多くの実績を残す。「虎ノ門ヒルズフォーラム」のコンサルタントを自らが担当し、さらに「六本木アカデミーヒルズ」も加えた両施設の運営・管理業務も受託。また宮崎の「フェニックス・シーガイア・リゾート」のコンベンションセンターのリニューアルにて、マーケティングリサーチから発注先選定・機材選定や営業戦略策定まで広域にわたるコンサルティングを担当。
施設を貸し出す側と施設を利用する側の双方の立場で経験を積み、そのノウハウを活かして活躍中。
http://www.hotscape.co.jp/

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