イベント専門のコンサルティング会社ホットスケープの代表 前野さんに聞く「【初心者必読】成功するイベント・セミナーの作り方」。 第3回目テーマは「企画書と計画書の作り方」です。
前回の記事では「そのイベント、なぜおこなうの?」をテーマに、イベント開催の目的や目標をはっきりさせることの大切さを教えてもらいました。
>>そのイベント、何のためにおこなうの?イベント企画の際に最も重要なポイントとは【成功するイベント・セミナーの作り方 第2回】
それをふまえ、今回はその目標を達成するためのイベント計画の立て方、そしてその計画へのGOサインや予算をもらうための企画書の作り方をお伝えします。
企画書も計画書も、やはりまずは「誰に何を把握してもらうものなのか」を考える必要があります。 イベントは計画の時点でターゲットやゴールを明確にする必要があるのです。 スムーズに通る企画書を書きたい!計画書といっても何から書き始めていいのかわからない!という方に必見の内容です。
企画書を作り始めるときに…チェックポイント
企画書をラブレターのように丁寧に扱う心構えができたら、次は以下のような項目に注目してみましょう。
企画書は事前に渡しますか?それともプレゼン直前に配る予定ですか? 企画書は必ずしも早めに渡せばいいというものではありません。 例えば、直接説明しないと良さが伝わらない内容や先入観をもたずに聞いてほしい内容などがある場合は、あえて企画書はプレゼンの直前に渡すほうがいいでしょう。 また、企画書などの資料は会議の前に配っておかなければいけないという決まりがある場合、事前配布用の企画書を当日用のものとは別に用意して提出、当日はより詳しく核心に迫った企画書を用いてプレゼンするという選択肢もありかもしれません。 どのタイミングでどの情報を出すと効果的なのか、よく考えてから企画書の内容を検討してください。
プレゼンする相手の中に決定権をもつ人はいますか? 決裁者に直接プレゼンができるのかどうか、確認できるのなら早めにしておきましょう。プレゼン相手が会議後、企画書を持って決裁者に報告に行くというパターンであれば、企画書はより丁寧に、細かく作る必要があります。 なぜなら、プレゼンした相手が決裁者に対し、あなたの意図することすべてを正確に伝えられるとは限らないからです。また、イベントの目的・ゴールや決裁者が重視しているポイントなどは、企画書の中でも特にしっかりとページを割いて説明しましょう。
その企画書の最重要箇所はエレベーターで話し終わりますか? これはエレベーターピッチと呼ばれるもので、15〜30秒で自分のアイデアや思いを伝えきる話術です。企画書の中の一番大事な部分はこのエレベーターピッチができるかどうか、自問自答してみましょう。 長ったらしく言葉を連ねていては興味すらもってもらえないかもしれません。そのため、伝えたいことは短く簡潔に、相手に刺さるワードを選んでください。「いい企画書は30秒で説明できる」が合言葉です。
ポイント
つまり企画書には「こう書けば正解」という型はない。自分が口説き落としたい相手に合わせて、上記のポイントをヒントにしながら心に刺さるラブレターを作り上ること。
迷ったときは、自分が企画書を受け取る立場だったらどちらが納得感をもてるかという視点で考えてみる。
企画書作成に必須のフレームワークとは
——なるほど、ラブレターとはおもしろいですね。では、計画書を作るときに必ず頭に入れておくべきこととは何でしょうか?
6W2Hはもれなく盛り込んでください。 企画書においては、5W1Hという一般的なフレームワークより一つずつ多い6W2Hを意識する必要があります。
6W2Hとは When いつ、Where どこで、Who 誰が、Whom 誰に向けて、What 何を、Why なぜ、How どのように、How much いくらでという8つの要素のことです。一つずつ見ていきましょう。
Who 主催者は誰ですか? Whom 対象者、お客さんは誰ですか? 社内イベントであっても誰が誰のためにそのイベントをおこなうのかというところが大切になってきます。 (例:表彰式は表彰される人のためのイベントではない→第2回記事参照)
Why なぜ開催するのか 、イベントの目的ですね。 この設定が最初の山場と言っても過言ではありません。 >>そのイベント、何のためにおこなうの?イベント企画の際に最も重要なポイントとは【成功するイベント・セミナーの作り方 第2回】
When いつおこなうのか、Where どこでおこなうのか。 先ほどのWhy 開催の目的が決まると、この二つも考えやすいかと思います。また、開催日時と開催場所が決まると、準備に必要な期間も見えてきます。
What どんな内容のイベントを、How どのようなプログラム・演出でおこなうのか。 例えば… トークイベントの後に交流会、会場は移動せず机と椅子だけを動かして。たくさんのセミナーを別室で同時開催、興味をもってくれた方向けの商談室も用意。などなど、まずはこのくらいざっくりと、次のHow much 予算といったりきたりしながら何度も練り直しましょう。 途方にくれたり迷子になったりしたように感じたら、とにかくWhy 開催目的・イベントの目指すべきゴールに立ち返ってくださいね。
How muchの全体コストは、ここまでの設定で大まかには見えてくるはず。 それが予算をオーバーしてしまったら、ここまでの6W1Hを見直してみましょう。
ポイント
Who 主催者は誰ですか? Whom 対象者、お客さんは誰ですか?
Why 開催する理由、イベントの目的は何ですか?
When いつ、Where どこでおこないますか?
What どんな内容のイベントを、How どのようなプログラム・演出でおこないますか?
How much どのくらいのお金が出入りしますか?
イベント企画に必要なこの8つの要素をどんどん書き出していく。
——予算は無限に湧いて出てくるものではないですから、How much 予算、全体コストは頭を悩ます問題になりそうですね。 How muchに関して気を付けるべきポイントはありますか?
実はHow muchはコスト、つまりかかるお金だけの話ではないのです。 支出だけ記載されていて収入が抜けているというパターンがよく見られますが、計画書には入ってくるお金と出ていくお金の両方を書き込みましょう。
つまり、そのイベントによる収入も考える必要があるということです。スポンサーについてもらったり、お客さんから入場料や参加費を徴収したりする場合、その金額が収入となります。例えば、必要な予算に合わせてスポンサー数や入場者数・参加者数の目標を設定するといったことが、イベントの収支両方を意識するとできるのです。
——確かに予算というと出ていく金額ばかり追いがちですが、入ってくる金額についても把握する必要がありますよね。 では、誰しもが頭を悩ませる出ていくお金、コストに関して注意すべきこととは何でしょうか?
見えないコストを考慮することと、トータルコストで比較すること。この2点がとても重要です。
例を挙げてみます。 会場を選ぶとき、A会場は利用料金が15万円、B会場は10万円だったとしましょう。金額だけを見ると、安いのはB会場ですよね。でも、少し調べてみると、B会場は音響や映像の設備が整っていないため、買ったり借りたりして持ち込まなければいけない。当然、大きなものを運ぶには労力やお金が余計にかかります。そうなると、会場自体の金額は高くても設備が整ったA会場を利用したほうがトータルのコストを抑えることができるということです。 そういったケースは案外多く存在するので、会場を選ぶときなどはトータルコストを意識して比較検討しましょう。
また、より見ることが難しい、つまり金額などの数字に置き換えて考えることが少ないコストもあります。それは、先ほどの会場選びの例でも少し触れましたが、ずばり人の労力です。 この設備やツールを使えば、あるいは外部のスタッフを雇えば、準備や当日の運営が楽になるのはわかっているけれど、それにお金をかけるくらいなら社員でなんとかしよう…というときに考えてほしいのが労力というコストなのです。自社の社員に頑張ってもらうということはコストがゼロということではありません。 確かに目に見えて出ていくお金は減るかもしれませんが、イベントの運営に関わる時間は通常の業務ができない時間です。
もちろん、自社のイベントですからある程度社員にも時間を割いてもらうことになりますが、慣れないイベント業務に時間をかけすぎてしまわないよう、アウトソーシングという選択肢ももちましょう。 例えば、社員が10時間かけて70点の出来栄えを達成するのに対して、外注のプロは積み重ねたノウハウやテクニックを使い3時間で90点までもっていけるということだってあり得ます。 社内でできないことはお金をかけてでもプロに任せることで、社員が通常の業務に集中できるなど、結果的には効率を上げコストを抑えることにつながるのです。
一つの項目の金額だけでなくトータルコストで比較すること、そして社員の労力などの数値化が難しいコストもしっかりとらえること。 そういった見えないコストの把握がHow much 予算管理に大いに役立ちます。
ポイント
How muchは入出金両方を考えること。
そして、出ていくお金は見えないコストを可視化しトータルコストでとらえること。
この連載も第3回ということで、今回はぐっと実践的な内容に踏み込みました。企画書や計画書を作るということはイベント初心者にとってかなり負担の多い作業かもしれませんが、第一稿で完璧なものを書こうとは考えないでください。試行錯誤しながら、少しずつ慣れていくものです。 そして、悩んだときはとにかくイベントの基礎である「Why 開催目的・イベントの目指すべきゴール」を思い出しましょう。
企画が通り、ある程度計画ができあがってきたら、次に考えたいのが会場です。 次回は会場の選び方について、施設コンサルもおこなう専門家の立場からじっくりと語ってもらいます。どうぞお楽しみに!