2024年9月26日(木)開催【丸の内プラチナ大学】逆参勤交代セミナーレポート

2024年9月26日(木)開催【丸の内プラチナ大学】逆参勤交代セミナーレポート
今回の記事は、以前会議HACK!でご紹介した松田智生氏が講師を務める丸の内プラチナ大学・逆参勤交代コースに参加した体験レポートです。
目次

はじめに

「逆参勤交代」とは、日本全国の地域が抱える課題や潜在的価値を、都市に住むビジネスパーソンと共に考え、地域の発展や新たな魅力づくりを目指す取り組みです。

このセミナーは、北海道の美唄市について学びを深める目的ことを目的に、美唄市長である桜井恒氏を迎えて開催。これは、11月15~16日に行われた 「美唄を新たな挑戦を始めるフィールドに」という、実際に美唄市へ訪れるフィールドワークを踏まえた事前セミナーとして開催されました。

今回は、私がそのセミナーに参加した内容をお伝えします。

美唄市とは

美唄市は北海道の中央に位置し、札幌駅からJRで約37分の距離にあります。人口は約1万8,427人(2024年12月時点)で、北海道ならではの豊かな四季を感じられる美しいまちとして知られ、特産品として「美唄焼き鳥」やグリーンアスパラガスを与えて飼育された「アスパラひつじ」などが有名です。

松田氏はセミナーの冒頭で、美唄市について次のように語りました。

美唄市とは逆参勤交代セミナー講師 松田智生氏(撮影:冨田大介、以下同)

「美唄市はかつて炭鉱で栄えた町だったが、廃坑による街の衰退、人口減少、高齢化に苦しんでいる。しかし現在は新市長のもと官民連携や新たな地方創生政策を一生懸命頑張っている。私たち首都圏人材がどのように貢献できるか今日の講座の中でぜひ考えてみてほしい」

引用:エコッツェリア協会HP

続けて美唄市長の桜井氏は、美唄の魅力についてこう述べられました。

美唄市とは美唄市長 桜井恒氏

同氏は美唄市の特徴や魅力について、四季の美しさや食の豊かさ紹介した上で、北海道でも有数の豪雪地帯ならではの雪を活用した事業にも言及しました。

市内の民間企業、株式会社ホワイトデータセンターでは、バイオマス発電等で電力を賄いながら、雪を大規模サーバーの冷却に利用し、さらには排熱による雪解け水を使ってウナギを養殖したり野菜を育てたりして、CO₂の排出ゼロを実現しています。

引用:エコッツェリア協会HP

私も実際に美唄市へ何度も訪れたことがありますが、夏は一面に広がるみごとな菜の花や、冬にはスキーやスノーボードなどのウィンタースポーツが楽しめる、四季折々の魅力に溢れた土地でした。

また、豪雪を活用した先進的で環境に配慮した取り組みも印象的に残っています。

しかし、市長は次のような課題を挙げています。

桜井氏は「美唄市は明治期からずっと石炭の街として栄えてきた。ピーク時には10万近くの人口だったが、閉山後は4万人まで激減し、大きな人口の増減を経験した」と言い、「現在でも毎年5%ずつ人口が減り続けており、危機感を持っている」とその深刻さを訴えていました。

引用:エコッツェリア協会HP

このように、美唄市でも人口減少問題が深刻化しており、いかにして人を呼び込むかが重要な課題となっていて、この問題に対して、次の取り組みを進めています。

美唄市は、このような状況を打開するため官民連携でIT人材を育成するプロジェクト「未来クライム」を開催したり、野球の独立リーグ球団を設立したりと人口流出の抑制と関係人口の創出に力を入れてきました。

その中でも桜井氏が最も力を入れているのがシビックプライド(市民としての誇り)の醸成です。桜井氏はその醸成に取り組む意義として次のように話しました。

「行政の意思決定や施策は、民間出身の私から見れば遅い。もっと生産性やスピードを上げる必要があり、そのためには関係者で早く合意形成することが重要。シビックプライドを醸成することで市民がまちづくりを自分事化し、行政が持っている課題感を共有してもらえる。そうすれば市の施策を納得して受け入れ、時に助けて頂きながら、将来的には市民がまちづくりの主役になって行動を起こしてくれることが期待できる。そして、皆がときめく未来を語るまちに変わっていきたい」。

そのため桜井氏は年間40回を目標に市民と対話の場を持ち、市の意思決定プロセスや施策に対する課題感を共有しています。

またシビックプライドを高めるためとして、地域資源をフィールドにして探究学習を行ったり、子どもたちが主役となってまちを盛り上げる美唄まちづくり部を創設したりと様々な取り組みを行っています。

引用:エコッツェリア協会HP

こうした施策により、市民に「美唄市が好きだ」と思ってもらえるような、自治体のつながりとまちづくりの改革を市民とともに進めています。

私は2年前に「未来クライム」に参加した経験があり、学生から大人まで幅広い年代が集まって、パソコン初心者の方も講師や参加者同士で助け合いながら、個性あふれるWebサイトを完成させることができました。

実際に参加してみて、「未来クライム」はプログラミングや新たなことに挑戦するきっかけとなり、このような活動が継続されることで、美唄市でもIT技術を学び、都心に匹敵するスキルを持つ未来が実現する可能性を大いに感じました。

最後に桜井氏は今後の展開として次のように語りました。

桜井氏:「子どもの頃から自分のまちが好きであれば、仮に大人になって道外に出たとしても美唄のために尽力したいと思ってくれる。美唄のために将来力を貸してほしいという願いを込めている」

引用:エコッツェリア協会HP

子どもたちに焦点を当て、彼らが大人になった時も地元を好きであり続け、まちを離れても地元に貢献したいと思うような成長を願っているとのことです。

美唄市とは桜井氏の話を聞くセミナー参加者

美唄市の課題と今後の展開

北海道内でも先駆的な取り組みを積極的に行ってきた桜井氏は、市長になる前は民間企業の社員でした。

なぜ美唄市の市長に立候補し公務員へ転身することを決意したのか、その理由を桜井氏は次のように説明しました。

美唄市の課題と今後の展開美唄市の今後の課題について語る桜井氏

桜井氏:市議会議員である父の手伝いをきっかけに、美唄市の人口が年間500人減少していることを知り、何とかしたいと思いました。その後市長選があり、色々なアイデアを市政に盛り込んで美唄市を盛り上げたいと考え、一念発起しました。

当選後、一つ一つの決断がまちの動きに変換されていく点にやりがいを感じます。ホワイトデータセンターやデジタル人財育成施策を視察すると、自分の育ったまちを良くしていけると実感でき、達成感は民間企業のときより大きいです。

引用:エコッツェリア協会HP

松田氏と桜井氏の対談

また、松田氏と桜井氏の対談も実施されましたので、その一部を紹介します。

松田氏と桜井氏の対談対談する松田氏と桜井氏

松田氏:逆参勤交代は、さまざまなバックグラウンドの方々が参加します。そんなよそ者から見た美唄市の魅力を地元の子どもたちと話すことによって、郷土愛を高めることにつながると思います。ぜひフィールドワークで実施してみたいです。

桜井氏:私も大学などと連携して新たな教育プログラムを実施していこうと考えていたところで、ぜひ逆参勤交代でも子どもたちとの交流など実現していきたいです。

引用:エコッツェリア協会HP

と述べられ、共に新たな取り組みを進めていく意気込みを見せていました。

フィールドワーク日程:

11月15日(金)1日目
12:35 美唄駅集合、バスで移動
12:50 アルテピアッツァ美唄着
13:00 オリエンテーション(アルテピアッツァ美唄ミニガイド)
13:25 昼食
14:10 セッション1:黒いダイヤ編~旧産炭地のいま
14:55 美唄ハイテクセンター着
15:00 セッション2:白いダイヤ編~利雪の取り組み~
16:00 セッション3:美唄の遊雪 ~SNOWLANDとインバウンド~
18:00 懇親会

11月16日(土)2日目
9:00 ホテル発
9:10 美唄市郷土資料館着
9:15 セッション4:郷土資料館見学
10:10 宮島沼水鳥・湿地センター着
10:15 セッション5:ラムサール条約登録湿地 宮島沼を知る
11:45 昼食
13:00 セッション6:地元起業家との意見交換
14:00 セッション7:地域活性化起業人・地域おこし協力隊との意見交換
15:00 セッション8:参加者振り返り
16:30 日帰り温泉体験
18:30 懇親会

11月17日(日)3日目
8:45 ホテル出発
9:00 課題解決プランまとめ
12:00 昼食
13:00 市長への提案・総括
15:00 終了

グループディスカッション

グループディスカッショングループディスカッションをする参加者たちと美唄市職員

お二人の対談後、市長や市の職員を交えてグループディスカッションも行われました。

参加者からは次のような声がありました。

参加者の一人は「若い世代へのキャリア教育に貢献してみたいと思った。市外の人をうまく巻き込める仕組みができれば、キャリア教育を通じた関係人口の創出につなげられると思う」と語っていました。

また社員教育の場を探していたという参加者は「美唄市は交通アクセスも良く、まちの規模感や雰囲気も魅力的。社員が地域での交流を通じて多くの気づきを得てもらえるのではないか」と美唄市が人的資本経営に有効な場であると感じたようでした。

引用:エコッツェリア協会HP

参加者それぞれが、美唄市との関係の作り方を考える絶好のきっかけになったようです。

セミナー終了後、桜井氏は今回のフィールドワークに関して次のような期待を寄せていました。

「地元の『常識』を打ち壊してくれること、そして美唄が新たな挑戦を始めるフィールド(実験場)になることの2つに期待している。

将来的には、市内外の人たちに対して新たな体験や学びを提供できるまちにしていきたい」と語りました。

引用:エコッツェリア協会HP

11月のフィールドワークでは、受講者が実際に美唄市に訪れてまちの魅力や課題について考えていくそうです。

これからどのような新しい取り組みが生まれ、関係人口が築かれていくのか、今から楽しみです。

240527_会ドバナー
「会議HACK!」とは?

人気記事ランキング

最新インタビュー

新着記事

タグ

PAGE
TOP