9月9日(月)、会議HACK!がメディアパートナーとして参画する一般社団法人プレゼンテーション協会のプレス発表会が行われました。
当日は、台風の影響で交通のダイヤが乱れていたにもかかわらず、会場はほぼ満席の盛況ぶり。期待の高さがうかがわれます。
モデレーターを務めるのは、プレゼンテーション協会の代表理事・前田鎌利氏。前田氏は、全国で年間200を超えるプレゼン・会議の企業研修・講演をこなすプレゼンテーションクリエイターです。
★前田鎌利プロフィール
https://www.katamari.co.jp/
★スマート会議術インタビュー記事
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オープニングトークでは、まず「伝えることの難しさ」について語りました。あるアンケート調査によると「ビジネスパーソンの9割の人がプレゼンテーションが苦手」だとのこと。前田氏は、2300年前のアリストテレスの『弁論術』を例に、人は2300年経ってもいまだに「相手に何かを伝える」ことに苦心していると言います。「しかし、プレゼンテーションとは決して特別なことではない。名刺交換をするのも、病院の問診も、花を贈るのも、私たちの日常はすべてがプレゼンテーションである」と語ります。
前田氏が提言するプレゼンテーション協会の理念は
“念いが伝わる世の中へ”
このメッセージには、前田氏のプレゼンテーション協会設立への熱い“念い”が強く反映されています。
前田氏は「“思う”は頭で考える。“想う”は感情を表す。そして、“念う”は信念や理念といった強い気持ち」であると説明します。
念いを伝えることは、相手を動かすこと。そして、それは未来をつかむことを意味するーーそれがこのメッセージに込められた意味です。
どうすれば世界でも通用する「伝え方」ができるのか。世のビジネスパーソンや学生たちと一緒に考えていきたいという“念い”で立ち上げたのがプレゼンテーション協会なのです。
プレゼンテーション協会の立ち上げにあたっては、21社の会員企業をはじめ、アライアンスパートナー、そして「会議Hack!」などのメディアパートナーが参画。世界に通用するプレゼンテーションスキルの向上を目的に活動をしていきます。
プレゼンテーション協会の主な活動内容は、「分科会」「プレゼンスキル検定」「大学校」の三本柱。「分科会」では、セミナーや会員同士の交流会、情報交換などを行います。第1回(11月)は働き方改革をテーマに三井不動産、ベネッセを招き講演をします。第2回(12月)はビジネス女性部会、第3回(1月)はジャパネットとのセールスプレゼンテーション部会などが予定されています。
「プレゼンスキル検定」は、研修受講後の試験を通じて、受講者の能力に応じた資格の認定を目的に来年5月からスタート予定。プレゼンテーションスキルの可視化を目指します。「大学校」は、指定機関と連携して講師育成プログラム(企業内)を運用。半年間にわたってプレゼンテーション講師の育成を図ります。
プレゼンテーション協会の具体的な活動内容
二部では、理事とオフィシャルパートナーを紹介。そして、オフィシャルアドバイザーの平野洋一郎氏(アステリア株式会社 代表取締役社長)が挨拶。続いて、理事の佐藤勝彦氏と詠友佑星氏からプレゼンテーション協会の今後の具体的な活動内容について説明がありました。
平野洋一郎氏(アステリア株式会社 代表取締役社長)
平野氏は、日本の経済成長の停滞が続く「失われた30年」の原因は、スピード感の欠如にあると語ります。欧米や急成長するアジア諸国と比べて、いまの日本は何事も決めるのが遅すぎるとのこと。海外では「持ち帰って検討します」が日本人の悪いクセ。その場で即決できる材料を提示するーーそれが「プレゼンテーション=企業力」だと熱弁をふるいました。
★平野洋一郎氏プロフィール
https://www.asteria.com/jp/company/message/
- 【プレゼンスキル検定】
続いて理事の佐藤勝彦氏が、「プレゼンスキル検定」について説明します。
佐藤勝彦氏(TANREN株式会社 代表取締役)
- 「プレゼンスキル検定」の目的は、認定試験を通じて受講者の能力に応じた資格の認定を行うこと。知識の習得と思考術・資料作成術・プレゼン術を学び、動画を使ってアウトプット力を磨きます。検定は年に2回、オンラインを通じて初級・中級・上級のレベル別に開催されます。
- 【大学校】
最後は、理事の詠友佑星氏がプレゼン講師を育成する大学校の目的について説明します。
詠友佑星氏(株式会社アット・アップ 代表取締役)
- 目的は実践的なプレゼンスキルの修得で、企業内の決済スピードを上げること。現在、現場では特にプレゼン資料作成において、3つの課題があるそうです。
- 1. デザインが属人的
2. 資料がわかりにくい
3. 資料がつくれない
- その原因は、そもそも企業内における統一ルールがないこと。そして、プレゼンテーションスキルを体系的に指導できる人がいないこと。これらの課題を解決するためにプレゼンテーションの講師を育成するプログラム(企業内・個人事業)を運用していきます。
- ★理事プロフィール
https://www.presen.or.jp/
なぜ日本人はプレゼンテーションが苦手なのか?
三部は、パートナーによるトークセッション。代表理事の前田鎌利氏をモデレーターに、平野洋一郎氏(アステリア 代表取締役社長)、伊能美和子氏(一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム専務理事)、渡辺克己氏(株式会社K-works 代表取締役)、奥部諒氏(Logicool Spotlight Ambassador/東京大学大学院)の4名が登壇しました。
写真左から前田鎌利氏、平野洋一郎氏、伊能美和子氏、渡辺克己氏、奥部諒氏。
トークセッションでは、「なぜ日本人はプレゼンテーションが苦手なのか? どのように克服していけばいいのか?」をテーマに熱い議論が交わされました。特に議論の中心となったのは教育環境。
国際都市国家のシンガポールに長く在住していた平野氏は、「シンガポールでは小学生の頃から授業の内容に関係なくプレゼンテーションをする機会が当たり前にあるので、そもそも苦手意識が生まれない」と言います。これからのグローバル社会を生き抜くには、教育現場からプレゼンテーションを日常にしていく必要があると語ります。
平野洋一郎氏(アステリア株式会社 代表取締役社長)
伊能氏は、同じ日本人同士で同じ言葉を使っても、会社や職種によって理解度や意味が違うことが多いので、言葉の標準化が必要だと言います。アイデアとして、「スーパーグローバル創生支援やスーパーサイエンススクールのようにスーパープレゼンテーションスクール指定校をつくればいいのでは」と教育面での斬新なアイデアを提言しました。
伊能美和子氏(一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム専務理事)
学校教育の現場を多く見てきている渡辺氏は、「小学1年生は絵を描くときに紙からはみ出す自由さがあるのに、高学年になるにつれ、枠内に収めるようになっていく」と、親や先生に言われたことしかやらないように教育され、発想が制限されていく現状を打破していかなければならないと言います。
渡辺克己氏(株式会社K-works 代表取締役)
奥部氏は、「プレゼンテーションが苦手なのは意識しているけど、勉強するプライオリティが低い現状がある」と語ります。プレゼンテーションは、人と話すことの延長線上と考えられがちで、単純に「人前で話すのが苦手」と片づけてしまう。でも、それは違うと言います。「野球しかやっていない人が急にサッカーをやっても上手くできないのと同じ」とスポーツにたとえ、スキルを学ぶ必要性を訴えます。
奥部諒氏(Logicool Spotlight Ambassador/東京大学大学院)
最後に登壇された4名のパートナーの方々にメッセージをいただきました。
★伊能美和子氏
「伝えたいことを伝えるためには、受け取る人がどのような状況にあるのかを考えながらコンテンツを作っていかなければならない。プレゼンテーションが伝わるためには、興味関心がどこにあるのか、伝わる条件や環境をきちんと把握することが必要」
★渡辺克己氏
「プレゼンテーションが苦手という人が90%いると言われますが、習っていないのだから当たり前。できないことを具体的に棚卸しして、思考整理をして、プレゼンテーションという機会を通して自分を見つめ直していってほしい」
★奥部諒氏
「何事も熟達するには1万時間がかかるという『1万時間の法則』という説がありますが、その1万時間をいかに効率化して短くマスターできるかをみなさんと一緒に探求していきたいです」
★平野洋一郎氏
「プレゼンテーションは、ただきれいな資料を作ったり上手に話したりすることが主ではない。伝えるコンテンツのためには常に考えることが大事。プレゼンテーションを通じて考えることをしてほしい」
代表理事の前田鎌利氏は、パネラーの方々のメッセージを受けて、最後にソフトバンク時代の恩師である孫正義さんの言葉を引用して締めくくりました。
「脳がちぎれるほど考えろ、というのが孫さんの教えでした。どんなに考えてもちぎれはしないのだから、とことん考えろと(笑)」
みなさん、プレゼンテーションのプロフェッショナルだけあって、思わず引き込まれる刺激的な話ばかりで、発表会はあっという間の2時間が過ぎて幕を閉じました。
理事とオフィシャルパートナー、オフィシャルアドバイザー全員で記念写真