そもそも、良いコミュニケーションとは?【第2回】

そもそも、良いコミュニケーションとは?【第2回】株式会社モダン・ボーイズ 竹中功
 
目次

他人を尊重すると良いコミュニケーションになる

「良いコミュニケーション」のことを、「心のキャッチボールが上手くやっている時」と前回に書いたが、そのことを説明しよう。

そもそもコミュニケーションは「感じる力のやりとり」ということができ、これこそが「共感する力」なのだ。

楽しいキャッチボールを続けるには、相手を尊重することが必要だ。そして信頼し合うことも必要だ。他人に受け入れてもらいたければ、こちらも他人を受け入れなくてはならない。受け入れられないのなら、他人も受け入れてくれない。キャッチボールが成立していないということだ。

そして、もちろんそこには他人の力量に合わせて手加減をするということを忘れてはならない。キャッチボールが上手くない相手なら、思いっきりボールを投げてはいけない。怪我をしてしまう。また、捕れるわけもない方向に投げて「受けられへんの!」といったらキャッチボールは続かないし喧嘩になってしまう。

ここで楽しんでキャッチボールをするという行為は、相手を愛するということだ。相手を尊重して、愛を持てば「共感力」は向こうからやってくる。

まず自分を愛せるかどうか

ここで肝心なことは、まず先に自分が自分を愛することができているかどうかである。愛するということは自分にやさしくするだけではない。厳しくしなければならない。

まずは自分をしっかりと観察し、いいところや悪いところを見分ける必要がある。

自分を知り、自分を愛することを身につける。そしてそれに気づいて、それができたら他人を知り、他人を愛することができるようになる。

「まず自分に共感」することこそ、重要な「共感する力」と私は思っている。

自分を知る。他人のことを考えるのではなく感じて知る。同様に、他人と自分の快楽と苦悩の違いを知る。そうやって「共感力」を身につければ、少しずつ他人ともいい関係になることができる。

ところで、「考えるな!」というぐらいだから、実際、考えたらどうなるかを考えてみた。すると下の図1のようなことが頭に浮かんだ。

どうも「考えること」は必要なことのようだが、あまり楽しいことが浮かんで来なくて悲しい気分になった。そこで明日が楽しくなるように考え直してみた。

その結果、「どうも、考えようによっては明日はいい日になりそうだ」ということになった。でも、これは考えたから起きたことであって、そもそもは考えなければいいのだ。ただただ、自分をありのままに感じることが重要だ。

このように自分を「感じる」ことができたら、自分とのコミュニケーションが上手くいく。そして、他人との関係も上手くいくようになる。自分に「共感」できているわけだから、進んで他人との「共感」も手に入れようと心理は働く。

他人の心を開き理解し合う「共感する力」は、考えすぎずに感じる力を高めることで手に入れることができる。考えすぎないで、いま自分が何を感じたかを自分のなかに記憶していくことで鍛えられるのだ。

まず己を知り、次に他人を知る

孫子の言葉を借りれば「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」といったところだが、私の経験からいえば、まず己を知り、他人を知るという順番であって欲しい。自己分析をして、自分の実力や力量を把握し、本当の自分を知る経験をした者こそが他人を知ることができるといえる。

別にこれは戦いの場面だけをいっているのではなく、他人とか男女間の関係にとっても非常に有効なものでもある。しかし「己を知る」ということは、なかなか難しいことだ。自己分析を進めると、ついつい過小や過大評価の二つが出てしまい、そのせいで真実の自己の認識から遠のく。

過小評価をしている時は行動が消極的になるし、逆に実力を過大評価すると大きな過ちに繋がることがある。過去のリーダーの失敗はこの誤った分析、実力の誤認識によることがおおいにあったはずだ。

「コミュニケーション」を上手にできるようになるには、どうやら考えるより感じるほうがいいようだ。

竹中 功(たけなか いさお)モダン・ボーイズ
株式会社モダン・ボーイズCOO。同志社大学卒業、同志社大学大学院修了。吉本興業株式会社入社後、宣伝広報室を設立。よしもとNSC(吉本総合芸能学院)の開校や心斎橋筋2丁目劇場、なんばグランド花月、ヨシモト∞ホールなどの開場に携わる。コンプライアンス・リスク管理委員、よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役、よしもとアドミニストレーション代表取締役などを経て、2015年退社。現在はビジネス人材の育成や広報、危機管理などに関するコンサルタント活動に加え、刑務所での改善指導を行うなど、その活動は多岐にわたる。著書に『謝罪力』(日経BP社)、『よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術』(日経BP社)、『他人(ひと)も自分も自然に動き出す 最高の「共感力」』(日本実業出版社)がある。

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