テレワーカーとノンテレワーカーの格差を埋める情報共有と配慮が成功の鍵【第6回】

テレワーカーとノンテレワーカーの格差を埋める情報共有と配慮が成功の鍵【第6回】カスタマーズ・ファースト株式会社代表取締役 片桐あい

政府からはテレワーク7割を目標にするようにとの要請がありますが、実際には業界・業種によりかなりテレワーク率には大きな差があることでしょう。コロナ禍で急速に広がったテレワークという働き方ですが、個々人の家庭の事情によってもテレワーク格差が起きていることも事実です。どのような働き方を選択するにしろ、多様化するメンバーのニーズをくみ取り仕事で成果を出すためのヒントをお伝えします。

テレワーカー(テレワークをする人)とノンテレワーカー(テレワークをしない人)が役割によって分かれる場合もあれば、仕事の中身によっても変わる場合もあります。また、中には家庭の状況などによってもテレワークができない人もいることでしょう。

テレワークができる人とテレワークができない人がいます。それぞれの事情はさまざまでしょうが、職場にいる人もいない人も基本的には同じ環境をつくれることが理想です。

それでもどうしても情報格差ができてしまうこともあるでしょう。それをどう埋めていくかの配慮が大切です。

どちらに対しても公平であるべきなのですが、どうしても目に見える人を優先して情報を伝えがちです。

遠隔であればあるほど、悪気はなくても忘れがちです。「あっ、しまった連絡してなかった!」ということがないように、できるだけ、情報はテレワーク中の人にも開示しましょう。

また、テレワークしたくでもできないノンテレワーカーの悩みとして、ITリテラシーが低いことも挙げられます。ITリテラシーとは、わかりやすく言うと、「IT機器やネットワークを使って、やりたいことを自分でやるために必要な情報を収集し活用することができる力」です。

こんなことをしたいと思っても、ITの知識がなければうまくできない場合もあるでしょう。いまさら、誰にも聞けないようなこともあれば、いままでは必要なかったけれど、テレワークをするようになった瞬間に必要になってくる場合もあります。ITの情報格差をなくすために、できることを考えましょう。たとえば、ツール類の勉強会を企画するなど、ITリテラシーの高い人から低い人へ教えてあげられるような機会があればいいですね。

できる人にとって当たり前のことも、できない人にとってはストレスです。ちょっとしたことを調べるのに、何時間もかかることが、知っている人にとっては数秒で終わるようなこともたくさんあります。誰が生徒でも先生でも、知っていることを教え合うような勉強会を実施することで、職場のITリテラシーを高めることができます。

情報共有の仕方で、仕事の効率は高まる
仕事の効率がいいとは、どういうことでしょうか?
提供した時間、労力に対して、それ以上の成果があること。
同じ労力でたくさんの成果が出ること。
仕事上のムダ・ムリ・ムラをなくすこと。
同じことができる人を増やすこと。
などさまざまな定義や解釈はありますが、手間をかけずに多くのことができれば効率がいいと言えますね。
それを情報共有がどう関係するのか? しかも、テレワークという仕事の環境で、どうしたら効率化ができるかを考えましょう。
そもそも、情報とは何でしょうか? 組織を人の身体に例えると、「情報は人の身体を流れる血液」だと考えます。
栄養や酸素がたっぷり入ったフレッシュな血液が、体内をサラサラと流れている身体であれば、基本的には身体は健康です。それがドロドロの血液が流れていたり、毛細血管まで流れなかったり、血管が破れて出血すれば、大惨事になります。
組織も同じです。
一番怖いのは、「情報漏洩」です。技術的なセキュリティ対策については、社内に専門家を置いてしっかり管理することが大切です。ヒューマンエラーは、絶対にゼロにはできません。
その前提で考えることが大切です。持ち出してもいい情報と持ち出せない情報、印刷していいものといけないもの。特に、個人情報を扱う場合には、厳密なルール設定をしておくことが大切です。ルール化については次の項目でお伝えします。
ヒューマンエラーは、テレワークでもノンテレワークでも対策は必要です。そもそもミスが起きにくい仕組みやプロセスはどこの職場でも考えていることでしょうが、それが在宅になった瞬間、同じことができなくなるということもあります。たとえば、必ずダブルチェックをするというオペレーションになっていたとしても、隣に人がいなければそれもできません。まずは、テレワークを開始する前のシミュレーションをしておくことで、機能しなくなるだろうプロセスを事前に洗い出しましょう。
情報漏洩以外にも、情報の問題はあります。たとえば、望ましい血液の状態としては、「栄養や酸素がたっぷり入ったフレッシュな血液」と書きましたが、「栄養や酸素は情報の内容(コンテンツ)」です。
誰にとって必要なのか、どれくらいの量が必要なのか、受け取る側にもよります。情報が多すぎたり、足りなすぎてもいけません。相手に合わせて出し入れしなければ、無駄なやり取りが発生することになります。
また、情報は「フレッシュさが命」です。古いバージョンの情報を流してしまったり、間違った情報を流してしまうと、現場が混乱します。ですから、情報の出所やいつ付けの情報なのかなど、メールのように宛先、発信元、発信時間、テーマ、緊急性などは、少なくてもカバーしておく必要があります。
適切な情報が、相手にサラサラと流れれば、仕事のスピードも高まります。反対に、何が言いたいのかわからないようなポイントが不明瞭で、自分に関係ない情報が含まれているような情報過多のものは、受け取り手が混乱します。
分かるとは、「分ける」こと。
たとえば、これはある、これはない。この場面では起きていて、この場面では起きていない。あるいは、メリットとデメリットを伝える。などの対比で整理して伝えることも大切でしょう。また、事実と意見に分けることも必要です。さらに、ポイントを3つに分けて伝える。「5W3H」(When: いつ、Where: どこで、Who: 誰が、What: 何を、Why: なぜ、How much: いくらで、How many: どのくらい、How to:どうした)で整理するなど、分けて伝えることも大切です。
このように情報が小分けになっていれば、相手も理解しやすく、自分に必要な情報とそうではない情報に分けられます。そうしておくことで、テレワークで離れている相手であっても、情報のやりとりが速やかになり、結果的に仕事が効率的に行える環境が整うのです。

※当コラムは著書『これからのテレワーク──新しい時代の働き方の教科書』を基に補筆したものです。
片桐あい(かたぎり あい)
カスタマーズ・ファースト株式会社代表取締役、産業カウンセラー、キャリアカウンセラー。行動習慣ナビゲーター。人間関係問題解決コンサルタント。サン・マイクロシステムズ株式会社(現・日本オラクル株式会)サポート・サービス部門に23年間勤務。グローバルのプロジェクトで「エンジニアのトレーニングの開発」のためのメンバーに選出され、各国の教育担当とカリキュラムを開発。2012年に独立し、企業研修講師となる。これまで、年間約120件登壇し、約2万5000名の育成に従事。また、人財育成コンサルティングで、延べ3400名の育成にも尽力。著書に『職場の「苦手な人」を最強の味方に変える方法』(PHP研究所)、『一流のエンジニアは「カタカナ」を使わない!』(さくら舎)、『これからのテレワーク』(自由国民社)がある。
オンラインコミュニケーション35の魔法──リアルのコミュ力も上がる! 』(自由国民社より12月24日発売予定)

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