プレゼンの3つの不安を払拭する方法【第4回】

プレゼンの3つの不安を払拭する方法【第4回】すごいプレゼン代表 松永俊彦

皆さんこんにちは。すごいプレゼン、代表プレゼンコーチの松永俊彦です。

皆さんは、プレゼンを行う際に緊張しますか? 私は、もともと目立ったことをすることが嫌いなタイプなので、教師になりたての頃は生徒の視線を集めると想像するだけで鼓動が高鳴る感覚に陥りました。それはいまも変わらず、多かれ少なかれ緊張はします。

そんな私が、これまでどのようにしてこの緊張と向き合ってきたのかについて、今回は具体的な解決策をお伝えしていこうと思います。

目次

プレゼンの3つの不安を払拭する方法

まず初めに、なぜ緊張するのか? について考えてみましょう。
なぜだと思いますか?
「笑われるかもしれない…」
「うまくできないかもしれない…」
「聞いてもらえないかもしれない…」
など、さまざまな緊張の原因について考えていくと、実はそれらはすべて「他人からどう評価されるかが不安」という一言に集約されます。
そして、この不安は大きく3つの要素から構成されているのだと気づきました。つまり、3つの不安さえなくすことができれば緊張から解放されるといえます。
ここからは、具体的に以下3つの不安についてみていきます。
①失敗
②聴衆
③質問
の3種類です。

①失敗
事前に練習したにもかかわらず、失敗してしまうのではないか、という恐れは大きな不安につながります。しかし、ここで考えてほしいのは「聞いている人はどのようにしてあなたが失敗したことに気づくのだろう?」ということです。
たとえば、もともと用意していたセリフを飛ばしたとします。それを聞いている人が気づくでしょうか? 答えはNOです。なぜなら、聞き手は正しいセリフの原稿を見たことがないからです。つまり、あなたが言ったことがすべてであり、あなたが言ったことが正解なのです。聞き手が気づきもしないのですから、セリフを忘れようが、話が飛ぼうが、大した問題ではありません。大切なのは、「絶対にこれだけは伝えたい」という軸さえブレないことです。
もし仮に、どうしても伝えたいことを忘れてしまったとしたら、それは本当に伝えたいことではなかったのかもしれませんよね(笑)。その程度の話題であれば忘れたとしても気にする必要すらないでしょう。言葉を噛んだ、一部忘れてしまった、などといった状況もまったく気になりません。聞き手は想った以上に話し手の言葉に対して興味がないのです。そんなことよりも、自分の伸びた爪や切りすぎた前髪が気になって仕方ないでしょう。
ですから、間違えたことを指摘されることを恐れるよりも、自分が伝えたいことがちゃんと伝わるように取り組むことのほうがよっぽど重要なのです。

②聴衆
プレゼンの際に、聴衆がまったく話を聞いてくれなかったらどうしよう? という不安があります。これは非常につらいです。会場全体が自分の敵になったような気がして、そこから先の話を進めることが苦痛になります。興味を持ってもらいない、という不安は緊張の大きな原因となります。
しかし、ちょっと待ってください。本当にただの一人もあなたの話に興味を持っていないのでしょうか? 私の経験上、絶対にそんなことはないと断言できます。
たとえば、目の前に5人いたとすれば、その中の1人は絶対にあなたの話に頷きながら話を聞いてくれています。10人いたとすれば、その中の2人は少なくとも真剣にあなたの眼を見ています。
このとき、あなたは話を聞いていない大多数を気にしてしまうあまり、あなたの話に興味を持って聞いてくれている方に気づけていません。その結果、全員が話を聞いていないような錯覚に陥り、緊張感がますます大きなものとなります。
この状況において私ができるアドバイスは、「あなたの味方を探し、その人に向けて話してください」という一点につきます。興味がない人に聞いてもらうというのは難易度が高い話です。そうではなく、せっかくあなたの話に耳を傾けてくれているその一人に向けて、精一杯プレゼンを行ってください。すると、その人の周りの人も次第にあなたの話に興味を持つような連鎖反応が起こります。私はこれをFor you理論と呼んでいます。
まずは味方を探すことから始めてみると、聴衆に対する不安を払しょくすることができますのでぜひ試してみてください。

③質問
最後の不安は、聞き手の質問に対してちゃんと回答できるだろうか?という不安です。プレゼン中に、聞き手が首をかしげながら何か納得していない不満げな表情をしています。そして、あなたにこう発言してきました。
「すみません、先ほどおっしゃったお話ですが、なぜそう言えるのかもう一度聞かせてもらえませんか?」
あなたは緊張と不安で頭が真っ白になるでしょう。そして、この状況をプレゼンの前に想像すると緊張がさらに高まり、プレゼンが嫌になるのです。
しかし安心してください。この状況は、あることをしておけば簡単に回避できます。
それが、「反論への準備」です。
プレゼンは「話すこと」だと考えている方が多くいますが、これは違います。正確には、「聞き手の興味のあることを伝え、疑問を解消し、行動させること」です。この中で「疑問を解消し」という部分について事前に準備をしていないプレゼンターが非常に多くいるのです。ですから皆さんは、ぜひ事前に「反論への準備」を徹底的に行ってください。
やり方は2ステップあります。
まず初めに、自分のプレゼンに対して自分でツッコみを入れます。「わざわざそんなことツッコむ!?」と感じるくらい、タフなツッコみを入れてください。そして、その回答をすべて準備します。
私がよく行うツッコみはこんな感じです。
・いま出したデータが本当に正しいという根拠はどこにありますか?
・先ほどのデータだけではこの結論を出すのは少し無理があると思いますが、いかがですか?
・なぜそう言えるのですか? これは事実ですか? それともあなたの感想ですか?
・話が長いのですが、結局何を言いたいのですか?
・で、私はどうすればいいのですか?
・どんないいことがあるのですか?リスクについてはどう考えていますか?
このように、自らのプレゼンにツッコみを入れていきます。批判的な人物を自ら演じることで、反論への心構えと準備を行うことができるからです。
続いて、自らのツッコみを終えたら、他の誰かにプレゼンを聞いてもらって、その人からツッコみを入れてもらいます。気になった点、質問、疑問、違和感など、すべてを吐き出してもらいます。これについてその場ですべて即答できればいいですが、「それは考えていなかった…」「それはわからない…」といった反応が出てしまうのであればラッキーでした。本番前に準備をすることができるのですから、運がいいです。しっかりと準備を行い、必要に応じてデータや資料をスライドの一番後ろに差し込んでおきます。
こうすることで、どんな質問が来たとしても回答することができるという心理的な安心感を得ることができ、結果的に不安や緊張をやわらげることができるのです。
ただ、ここまで準備しても、どうしても答えられない質問が当日出る可能性はあります。その際には、「ご質問ありがとうございます。すみません、いま正確な答えを持ち合わせておりませんので、確認後改めてご回答させていただいてもよろしいでしょうか?」と、ハッキリ伝えてください。
やむやな状態で、正しいかわからない適当な回答をしてしまうよりも100倍良いです。こう回答して怒る方はいません。むしろ、「しっかりと受け止めてくれて誠実だな」という印象を持ってもらうことができるでしょう。
以上、今回はプレゼンの3つの不安についてお伝えしてきました。
これらの不安は事前準備と練習によって払拭することが可能です。今回のスキルを活用して、皆さんが自信を持ったプレゼンを行ってくださることを楽しみにしています。
※当コラムは著書『感動させて→行動させる エモいプレゼン』を基に補筆したものです。
松永俊彦(まつなが としひこ)
すごいプレゼン代表。プレゼンコーチ。塾教師として入社初年度から生徒支持率95%以上という驚異的な成績を誇り、多くの生徒を地域トップ高校をはじめとする難関校合格へと導いた。学力だけにとどまることなく人間力を成長させる指導は生徒、保護者から絶大な支持を得た。その後、教師育成だけにとどまらず、ビジネス領域の一般企業研修、営業指導領域でもHPPMの効果を実証し、セミナーや研修を通じて世の中に輩出したプレゼン生徒数は1500名を超える。著書に『感動させて→行動させる エモいプレゼン』(すばる舎)がある

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