テレワークがうまくいかないのは、自分をマネジメントできないこと。
多様な人と多様なツールを使い分けることに慣れていないこと。
自分の仕事の成果を正当にアピールできないこと。
この3つが挙げられます。これらを克服することがテレワークを成功させるうえで必要最低限の条件なのです。
カスタマーズ・ファースト株式会社代表取締役 片桐あい
目次
テレワークを成功させるために必要な3つの力!
- 誘惑に負けて仕事が進まないというデメリット
- テレワークの最大のデメリットとしては、自宅での仕事であれば誘惑が多いということです。どんな誘惑があるかというと、自宅には自分の好きなものがたくさんあります。趣味のもの、途中まで観ていたテレビ番組、映画、動画、さまざまな魅力的な誘惑。
- また、怠けたい気持ち、睡魔との戦いなども、あなたにとっての誘惑です。オフィスでは、人の目があるので、耐えられていたことも、人の目がなければ、つい負けてしまって、5分だけ、10分だけと気が緩んでしまい、気づくと1時間の昼寝をしたり、ゲームをしてしまったり、怠けて仕事ができないという場合もあるでしょう。
- オフィスの上司や同僚と離れているからこそ、誘惑に負けて、自分に負けてしまうことが、テレワークで思うように仕事が進まないことの原因です。
- 仕事相手からは見えないからこそ、自分を律する必要があります。テレワークという働き方をうまく使いこなすためには、セルフマネジメント力が必要です。
- その力はテレワークができるだけではなく、これから就くどんな仕事でも必要な力です。そして、それは、誰かに頼らずにプロフェッショナルとして選ばれていくためにも、絶対に外せない力なのです。
- テレワークは誘惑に負けて仕事が進まないというデメリットがありますが、それを乗り越えられる人だけが、今後も必要とされる人材として大切な要素なのです。
- 離れている人と情報交換がしにくいというデメリット
- テレワークは物理的に仕事の関係者と離れて仕事をするものです。だから、テレ(遠隔)ワーク(仕事)つまり、離れてする仕事です。在宅とは限りませんので、セキュリティさえ確保できれば、カフェやレンタルオフィスなどで仕事をすることもテレワークと呼びます。
- そのテレワークでの人間関係のデメリットといえば、離れている分、情報交換がしにくいということです。もちろん、最近では多くのコミュニケーションツールが存在します。電話、メール、チャット、SNS、SM、Zoomなどのオンライン会議システムなどさまざまあります。そしてこれからも新しいテクノロジーが進化し、見たこともないようなツールも開発されるでしょう。しかし、やはり、リアルで会って話すほどたくさんの情報が伝わるものはありません。
- だから、意識しなければ、離れている人との情報交換がしにくいというコミュニケーションギャップは埋められません。逆にいうと、離れている人ともうまく情報交換、情報共有ができる人がこれからの時代に求められる人材です。
- 見られていないと評価されにくいと思うデメリット
- 「テレワークで上司から見えなくなった場合、自分はどのように評価されるんだろう」と思う人は多いのではないでしょうか。確かに、今まで見えていたものが見えなくなるという不安はあるでしょう。しかし、たとえテレワークで上司と毎日会えなくなったとしても、仕事の目的もゴールも変わりません。ただ、上司からあなたの働いている様子を直接目で見えない時間が増えるだけです。
- それだけのことであっても、やり方が変わるだけで不安を覚える人もいるでしょう。しかし、仕事の成果は隣の机で汗水たらして働いている人が必ずしも成果を上げているかというとそれだけではないはずです。仕事のプロセスも大切ですが、やはり仕事の成果を見えるように伝えることはもっと大切なはずです。
- 日本人はアピール下手で、「推して知るべし」の文化なので、自分の成果をわかりやすく伝えることが苦手です。私がいた外資系の企業では、リストラは年中行事でした。業績の振るわない社員から切られることも多々ありました。
- そんなときに、どれだけ長い時間働いていたのかは一切関係ありません。評価の指標を並べられて、海の向こうにいる顔も見たことのないマネジメントチームの人たちが、「この人はパフォーマンスが低い」と、名指しで指名がくるのです。もちろん上司は指標に表れない仕事の説明はしてくれますが、数値に表れない仕事は評価されにくいのです。
- テレワークだからといって仕事のゴールは変わらない!
- クライアントさんでこんな声がありました。「テレワークになって、自分はいったい何を評価されるようになるのだろう……」
- 言っていることはわかりますが、会社に出社して仕事してきたいままでとテレワーク導入されてからのこれからと、仕事のゴールは変わりましたか? 仕事の目的やゴールはきっと変わっていないと思います。変わったとすれば仕事のやり方が変わっただけでしょう。そうであれば、評価軸が変わるわけでもありません。では、いったいのこクライアントさんは何が不安なのでしょう。それは、いままで上司の前で汗水たらして働いている様子も評価の対象になっていたのではないか? という思い込みが働いていたのでしょう。
- また、評価する側の上司も目の前で行われている仕事のプロセスも含めて評価をしていたかもしれません。確かに仕事のプロセスも大切ですが、そのプロセスも含めて上司にレポートするなり、知ってもらえるような努力は必要です。なぜならテレワークで上司・部下またはチーム全体が見えにくい状況になってしまうからです。ですから、コミュニケーションは網の目のように行う必要はあります。
- 次回からは、テレワークに必要な3つの力、つまり、セルフマネジメント力・マルチコミュニケーション力・成果の見せる化力について、詳細をお伝えします。
- ※当コラムは著書『これからのテレワーク──新しい時代の働き方の教科書』を基に補筆したものです。
- 片桐あい(かたぎり あい)
- カスタマーズ・ファースト株式会社代表取締役、産業カウンセラー、キャリアカウンセラー。行動習慣ナビゲーター。人間関係問題解決コンサルタント。サン・マイクロシステムズ株式会社(現・日本オラクル株式会)サポート・サービス部門に23年間勤務。グローバルのプロジェクトで「エンジニアのトレーニングの開発」のためのメンバーに選出され、各国の教育担当とカリキュラムを開発。2012年に独立し、企業研修講師となる。これまで、年間約120件登壇し、約2万5000名の育成に従事。また、人財育成コンサルティングで、延べ3400名の育成にも尽力。著書に『職場の「苦手な人」を最強の味方に変える方法』(PHP研究所)、『一流のエンジニアは「カタカナ」を使わない!』(さくら舎)、『これからのテレワーク』(自由国民社)がある。
『オンラインコミュニケーション35の魔法──リアルのコミュ力も上がる! 』(自由国民社より12月24日発売予定)