前田鎌利 (書家/プレゼンテーションクリエイター)
目次
あなたは伝えたいことが伝わっていますか?
- 皆さま、はじめまして。書家/プレゼンテーションクリエイターの前田鎌利です。私は、2013年12月までソフトバンクに在籍しており、ソフトバンクアカデミア(孫正義氏の後継者育成機関)に第一期生として入塾し、初年度第一位を獲得したことを機に、ソフトバンク社内のプレゼンテーションプログラムの構築、孫正義氏のプレゼンテーションの企画・作成に参画した経験を踏まえて、ダイヤモンド社より、「社内プレゼンの資料作成術」「社外プレゼンの資料作成術」「プレゼン資料のデザイン図鑑」「パワーポイント最速仕事術」などを上梓させていただきました。
- また、17年間のビジネス経験より「最高品質の会議術」(ダイヤモンド社)「最高のリーダーは2分で決める」(SBクリエイティブ)を出版し、のべ600社、2万人の方々に、プレゼンテーション、会議術、リーダーシップなどの極意を講演や研修を通してお伝えしています。
- そして、5歳より書をたしなみ、書家として国内外でパフォーマンスを行いながら全国にてリアル+オンライン書道教室で700名の生徒が通う事業を展開。JAXA、Jリーグ、TOYOTA、Softbankを初め多くの企業や羽田空港、国宝彦根城など多くの書を手掛けています。
- さて、冒頭の質問。どうでしょう。すぐに答えが出ましたか?
- 一番伝えたい人なんて絞り込むのが難しいのではないでしょうか?
- 私たちは、日々、多くの出会いの中に存在しています。
- 営業であれば、社外の取引先や飛び込み営業をした際の出会い。 主婦の方であれば、お子さまが新しい友だちと仲よくなったら、その親御さんたちとの出会い。 学生であれば、新入学、クラス替え、転校した際の新しい友だちとの出会い。 もちろん、新しい方々だけでなく、同僚、家族、同級生のように毎日顔を合わせる人、たまにお会いする人、など多岐にわたります。
- そんな出会いの瞬間に、あなたは相手からどう思われたいですか?
- ・優秀な人だと思われたい
・信頼できる人だと思われたい
・楽しい人だと思われたい
・優しい人だと思われたい
・格好いい人だと思われたい
・元気な人だと思われたい - もちろん、そもそも他人の目や世間体を気にしないという方もいるかもしれません。ですが、大半の方は対人コミュニケーションを取る上で、相手にどう思われたいのかを意識するものです。
- では、あなたの「こう思われたい」を実現させるために、どのようなことをされていますか?
- 身だしなみに気をつける。服装をTPOに合わせる。笑顔を意識する。…などさまざまなアプローチがあると思います。
- たとえばビジネスマンであれば、初めてお会いする方への第一印象は重要です。
- 第一印象については、その重要性が研究されており、1946年にポーランドの心理学者ソロモン・アッシュの印象形成実験によって提唱された「初頭効果」というものがあります。これは最初に示された特性が印象に残りやすく、後の評価に大きな影響を与えるというものです。
- 具体的な所作で考えると、日本では「名刺交換」が一般的です。自分がどの会社に 所属していて、どういった部署にいるのかが端的に伝わる「名刺」を提示します。続いて名刺に書かれた企業名と自身の名前(しかも苗字だけ)を名乗ります。それによって名刺を受け取った相手は、あなたの一面を情報として認知することになります。その名刺から得られる情報は、会社名・役職名・部署名・名前が主だったものです。
- 残念ながら、あなたが相手にどう思われたいかは、名刺を渡すだけでは十分には伝わっていないのです。さらに相手が重要視するのは、その名刺から得られる「会社名」と「役職名」です。
- なぜなら、
- ・この企業は有名だからビジネスチャンスがあれば大きな仕事になるかもしれない。
・この方は役職者だから決裁権限を持っているはず。仲よくしよう。 - といった短絡的かつ打算的なことに重きを置かれがちだからです。 結果として、あなたが相手に対して印象づけたいことは、名刺を渡す行為だけでは到底伝わらないのです。
- 「そんなことは言われなくてもわかっている」と頭では理解していると思いますが、私が過去600社を超える企業で講演や研修を通して多くの方々とお会いして実感したのは、自分の情報を伝えることは意識しても、「相手にどう思われたいか」を意識する人は1割にも満たないということでした。
- 初めて会った相手から「ああ、この人と仕事がしたい」「この人なら信頼できる」と思ってもらいたいと多くの方々が願うところです。
- しかし、昨今の「働き方改革」によって、アポイントや会議の時間が30分以内になるなど、限られた時間で用件やあなた自身のことを伝えなければなりません。
- 限られた時間の中で、初めて出会った相手からあなた自身に一瞬で興味を持たせるような自己紹介や、その後に続くコミュニケーション、さらには企業内外におけるプレゼンテーションの場で、最小にして有効な表現。これこそが、いままさに求められるスキルなのです。
- 現在、企業において「働き方改革」を掲げて、限られた時間で結果を出す必要があり、いかに短い時間で効率的に業務を行うかが求められています。
- ビジネスで結果を出すためには意思決定が重要です。限られた時間で仕事を行うためには、意思決定のスピードを上げなければなりません。
- そこで求められるスキルが〝プレゼンテーション〞です。
- これまで私はパワーポイントやキーノートを使った、主にビジネスシーンにおけるプレゼンテーションの資料作成スキルを、延べ600社以上にお伝えしてきました。
- 限られた時間でわかりやすく伝えるテクニックをお伝えしてきましたが、プレゼンテーションの作成テクニック以上に、最も大切なことがあります。
- それは「そもそも何を言いたいのか」が明確でなければならないということです。ところが、ビジネスシーンで見るプレゼンテーションの大半は、結局何が言いたいのかよくわからないものがほとんどです。つまり、「伝わっていない。」のです。
- 今回、この連載でより多くの方にご自身が伝えたいことを見つめていただき、それが伝わる方法をお届けして参ります。連載を通してあなた自身が相手にしっかりと伝わるスキルがあなたの武器になりますように。
- ※当コラムは著書『ミニマム・プレゼンテーション』を基に補筆したものです。
- 前田鎌利(まえだ かまり)
- 書家/プレゼンテーションクリエイター、株式会社固(https://katamari.co.jp/)代表取締役。一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事。東京学芸大学卒業後、17年にわたりIT業界に従事。2010年にソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、初年度第1位を獲得。2013年にソフトバンクを退社、独立。2016年、株式会社固を設立。ソフトバンク、ヤフー、ベネッセ、 SONY、JR、松竹、Jリーグ、JTなど年間200社を超える企業にて講演・研修を行う。著書に『ミニマム・プレゼンテーション』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』ほか多数。