会議にまつわる、あるあるを川柳にする「会議のオキテ」。
とある企業の、社長がファシリテーターを務めるマネージャー会議。参加しているマネージャーたちからは、社長に評価されたい一心で、自分を持ち上げ、他人をおとしめる意見が横行していたそうです。会議は社長が満足するまで続きます。そんな会議の進め方に嫌気が差し、勇気を出して「こんな会議はやめにしましょう!」と提言したら、社長の顔色が…。
いったい誰のため、何のための会議なのでしょうか?
社長のご機嫌取りに終始
皆さんは、1回の会議にどれくらいの時間をかけますか?報告、意思決定、課題解決、アイディア出しなどなど…、会議の目的によって、時間もまちまちかもしれません。
以前、部長以上が集まるマネージャー会議を、毎週2時間以上やる会社がありました。8人くらいが集まって、朝10時にスタートするのですが、2時間というのはあくまでも目安で、3~4時間かかる日も珍しくありませんでした。
社長がファシリテーターを務め、マネージャーが順番に報告をしていくという流れです。自分の部署に関する報告に限らず、今、会社で起きている課題について提言するという、暗黙のルールがありました。
そこで、「特にありません」と言うと、「それでは参加している意味がない!」という空気が流れるので、毎週、無理にでも課題を探して提言します。一人あたりの持ち時間も特に決まっていないので、一人の提言で1時間かかることもあれば、社長が興味を持たなければ、5分で終わることもあります。
社長がファシリテーターなので、マネージャーは自画自賛の報告をしがちになります。あるいは、他部署を批判することで、自分の部署がいかにうまくいっているかをアピールする人も出てきます。「課題の洗い出し」と称して、人の揚げ足取りが増え、いつもピリピリしたムードになるのです。
とはいえ、社長や組織全体の問題点を指摘し、改善を求めると、社長の気分を害し、会議全体の空気がさらに悪化します。だから、みんな社長の耳に心地良いことしか言わなくなります。
異論・反論が許されない会議の存在意義
会議が早く終わると、「何だか物足りなかったね」となり、長くなると「今日はいろいろ話し合えたね」となるのです。会議の良し悪しは、すべて社長の満足度と長さに委ねられているのです。
あるとき、一人のマネージャーが、このような会議の進め方に疑問を抱き、異議を唱えて代替案を提示しました。すると、そのマネージャーは社長の機嫌を損ね、それに追随するように他のマネージャーからも非難を浴びることになりました。
以来、彼は異論を唱えても空気を悪くするだけなので、発言を控えるようになりました。すると今度は「発言がない。やる気がない」と日に日に社長からの評価が低くなります。最後には、マネージャー職を解任されました。
会議は「1対n」であってはいけない
会社ではダイバーシティ(多様性)を標榜しながら、異論・反論を受け付けない。社長を喜ばすことだけが目的の「御前会議」は、その後も続きます。
これほど極端な「専制君主制」会議をしている方は、少ないかもしれません。
しかし、報告、意思決定、課題解決、アイディア出しなど、どんな会議をするにしろ、共通していえるのは、会議は「1対n」であってはいけないということです。
1はファシリテーター、nは参加者です。ファシリテーターは独裁者であってはいけません。ファシリテーターは、n同士の議論を活性化させるのが目的です。そしてnは、ファシリテーターの顔色をうかがうのではなく、n同士で対話しなければなりません。
その前提がないと、会議はだらだらとエンドレスに続き、労働生産性とモチベーションが下がり続けることになるのです。
文・会議HACK!編集部
イラスト・タナカケンイチ